親愛なる裏切り者へ
拝啓 花の色が綺麗な季節になりました。
君がこの手紙を読んでいる頃には私はこの世にはいないことでしょう。きっと今朝担任の先生からもお話があったのではないでしょうか?
私が何故この世を去ったのか、それは後でお話しすることとしましょう。
君と初めて出会ったのは、2年前の今と同じ季節でしたね。
窓側の席で1人絵を描いていた君に私は好奇心で声をかけました。初めこそ君は心を開いてくれなかったものの、何回も声をかけてるうちに君は自分の事を次第に話してくれるようになりました。
アニメを見ることや絵を描くことが好きで、将来の夢は漫画家さんだという事、私はアニメとかはそれ程に興味が無かったけれど、君と仲良くなれたことが嬉しかった。
そして次第に私達はお昼ご飯を一緒に食べたり、登下校も一緒にするようになりましたね。一緒に映画を観に行ったこともあったっけ。君はかけがえのない親友、私はそう思っていました。
1年後、私達は同じ中学校に進学しましたね。同じクラスで良かったとお互い喜びあったのは一生忘れません。
でも入学後1週間も経たない内に事件は起きました。
後ろの席のA子が突然舌打ちをして私の椅子を蹴ったのです。彼女曰く、A子が話しかけてきた時私が無視したからとのこと。私には全く身に覚えがありませんでした。
それから彼女の行動は次第にエスカレート。通りすがる度に悪口を大声で言われたり、筆箱に虫を入れられたり、教科書を破り捨てられたり、床に落とされた弁当を無理矢理食べさせられたこともありました。
でも君はそんな私と一緒に居てくれた。嬉しかった。でも、心の中ではどうしてA子に虐めをやめてと言ってくれないんだろう、ずっとそう思っていました。
そしてある日の昼休み、A子は取り巻きと共に君の所へやって来た。トイレから帰ってきた私は君達をこっそり陰から見ていました。
A子は君に聞きましたね、
『あいつと仲良くするのを辞めるならお前のことは虐めない』と。
私は逸る心臓を抑えながら聞いていました、果たして君が何て言うのか。
すると暫くして、君は答えました。
『そもそも私達は友達じゃない。同情で一緒にいるだけ』
私は絶望で心が震えました。
私達が今まで過ごしてきた日々は君の同情によるものだったの? 可哀想だから一緒にいてくれただけだったの?
虐められてきた事より君の言葉の方が何倍もショックでした。
よく考えたら君は自分が虐められるのが怖くてそう言ったのかもしれない。でも君は何があっても私を裏切らない、そう信じていたよ。
私が自ら死を選んだ理由、もう分かりましたか?
恨んでも仕方ない。
楽になる道を私は選びます。
疑心暗鬼になるのはもう嫌だ。
理解してくれるなんて思わない。
もう、苦しむ必要は無いんだ。だから、
乗っていくよ、あの世の列車へ。
はて、君はこれからどう生きるだろう。
死んだ私にはそれを知ることが出来ない。
ねえ、君は今何を考えている?
親愛なる君に最後にメッセージを送ります。
敬具
彼女が送りたかったメッセージ分かりましたか?
虐めを見て見ぬ振りをする人、
いると思います。
そんな人達に見てほしくて作りました。
もし貴方の周りに虐められている人がいるならば、
助けて欲しいです。
手紙の主人公と違ってまだ間に合うのだから。