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その片鱗・未だ見えず

「おおおおお!! 熱血!!」


「まだだ!! お前の限界を引き出すんだよ!! もっと努力にどん欲になれ!!」


「うおおお!!」


「己の野生を開放しろ!!」


「どうなってこうなった」


●■▲


■遡る時間は三つほど■

■魔導を、習得しにいった後のこと■


「修行?」


「そうだ、今のままでは実力が足りないからな……。特にオレは」


「少年漫画的な」


 ナゴミノ地区・滞在七日目の昼。

 ベッドに寝転がってラノベを読んでいるクライスに、告げたジンの顔はシリアスに。

 修業……ジンの言いたいことは理解できるクライス。


(【守りの大剣】は、最強の盾が二人もいる儀式場)


 守護者の最高峰である最強の盾。

 それが2人というだけで、挑戦する【侵攻者】は少ない。

 守護者最強の力というものは知れ渡り、強大とされている。


(最強の守護者・ミリアムやスターク以上の強敵、か)


 敵チームの詳細はあまりないが、弱い筈はなく、十分な脅威になりうる。

 クライスの力がどこまで通用するか、未知数ではあるのだ。


「だから」


「少しでも、実力差を埋めないといかん」


「あー、まあ」


 やる気満々のジンに対して、クライス君は相変わらずの怠惰スタイル。

 ベッドから頭を垂れさせながら、本を読む姿はシュールである。


「で、お前は」


「?」


 その彼の視線が、反転した熱血漢の姿を捉える。

 ゴウトは背中に大きなリュックサック、登山しそうな雰囲気の帽子と服、要するに出かける気満々のスタイルであった。


「当然、ついていくが?」


「なにぃ」


「おかしなことをいうな!! クライス!!」


 修行に同行する様子のゴウト。

 ジンは何も反応を示さないので、了承済みなのだろうと思われる。


「なんなん、修行したいの」


「ははははは!! 高い壁を越えるには努力あるのみ!!」


「はー、だるい」


 ゴウトのノリにウンザリ気味のクライスは、ラノベを閉じ、布団被って丸くなる。

 面倒事に巻き込まれる訳には行かないと、引きこもる構えを見せるが。


「クライスもどうだ? 一緒に行かないか」


「……」


「……」


 分かり切った問いを投げるなと、クライスは無言で訴えていた。

 彼の性質的に修行展開を拒むのは、なにを見るよりも明らかである。スポ根漫画を愛読するゴウトとは相容れない。

 ぶっちゃけ面倒くさいのだ。


「おいおい!! そりゃあないだろう!! クライス!!」


「うるさー」


「これから強敵に挑む奴が!! 修行しないでどうする!!」


 やれやれ顔で自分を呆れた奴認定するゴウト君に、そこはかとないウザさを感じてしまうクライスは、眠りの体勢に入った。

 夢の世界に逃げ込もうというわけである。


「はー、まったく仕方のない奴だ……!!」


「なにをー」


「そんなんでどうする!! お前の勝利にかける熱意はそんなものか!! 立ち上がれ!! もっと燃え上がれよ!!」


 なにやら熱血教師の説教じみてきたゴウトの言葉に、クライスは無言で返す。

 この程度で俺の鉄壁スタイルを破ることは出来んと、ナマケモノは語る。


「ゴウト」


「む?」


「オレに任せろ」


 ジンは、布団をかぶって丸くなったクライスに挑む構え。

 その姿は、まるでお母さんである。


「クライス……どうやら、その場所には伝説のフットーンがあるらしい」


「!?」


「快適安眠間違いなし、悪夢なんて吹き飛ばす、伝説の魔導具――」


■布団がもぞりと動いた■


●■▲


「おー、綺麗な山だなー!!」


「はー」


「歩きにくい道だ……」


「はー」


 陽気な空の下、三人の登山スタイル男が、山肌に沿うように細い道を歩いていく。

 どう見てもただの登山家集団である。

 彼らの目的は一つ。


「落ちたら不味いな!! ハッハハ!!」


「まったくだ。高いところは怖くないが」


「……」


 ジンとゴウトはずんずんと。

 クライスはのろのろと。

 いざ、まだ見ぬ修行の地へと登っていく。


「クライス!! 遅いぞ!! 何をやっている!!」


「お前が言うな」


「なにをぅ!! ジン!」


「さっきから、ブルブルと揺らしやがってっ」

 

■ゴウトの体は異常に震えていた■

■地震を発生させるレベルで■

■ぶっちゃけ彼は高所恐怖症■


「ははは!! いかんな!! やっぱ無理!!」


「無理なら結構。俺まで巻き込むなっ」


 別に高所恐怖症と言うわけでもないクライスだが、伝わる振動は恐怖をあおる。

 このままでは、うっかり道を踏む外すやもと。

 心削られてしまって、求めるはいやしの要素。


「モフモフタイム――」


■クライスは言った■

■すると■


「御意……」


■彼の目の前にぬっとあらわれるヒナ■

■変わらずのフード&ローブ姿■

■ストーカーとか言ってはいけない■


「もっふもふ」


「はぅ……」


「もふもふもふ」


「うぅう……」


 ヒナがローブをたくし上げ、そこから飛び出た尻尾をモフモフするクライス。

 頬を赤く染めているヒナのせいで、どうにも不健全な空気。

 それを見ているジンは、怪訝そうに眉根を寄せた。


「キミたち……そういう関係なのか?」


「もっふ?」


「前々から気になってはいたが、そうでなくては色々とおかしいよな」


 恥ずかしげもなくモフモフを行うクライス達に、お前等カップル的な感じなん?と、問うジン。


「いや、違う」


「いいえ……」


 否定の言葉は同時に。

 モフモフが終了した。


「わたくしが……求める……人物である可能性……がある為」


「だそうだ。ジン」


「さっぱり分からんぞ……! なんだか不健全な気がするっ」


 ヒナとクライスの絆は、何といえば良いのか分からない類ではあるだろう。

 彼女の故郷が関係していることを、クライスは知っているが。

 そういえばヒナは、故郷で儀攻戦に関する何かをやっていたとか、いなかったとか。


(無職の勇士を崇める地……なんてな)


■どんどんと進んで行く登山隊+ヒナ■

■やがて、道が広くなっていき■


「ここか」


「ああ、地図によるとここが……」


■辿り着いたのは、殺風景な草むら■

■そこにポツンと建つ……■


「ぼろぼろじゃ」


「……」

 

■非常に古ぼけた木の小屋■

■壁や窓が板などで補強され、何の威厳も感じない■


「ここが――凄腕の戦士育成場」


■なんとも信用がなくなっていく外見である■


「まあ、とにかく……行くしかない」


「がはははは!! さーて、ワクワクだぜ!!」


■クライスたちは、ゆっくりとその小屋に歩いていく■


(ナゴミノ地区で、伝説として知られる人物。強くなるためのキー)


■ついに着いた小屋の扉をノックし■

■中で誰かが動く音■


「いらっしゃいませー。ご主人様!」


■扉を開けて出て来た女性は■

■ロングスカートの紺色メイド服■


「え」

「エ」


■のジャスミン■


「ぎゃああああああああああッ!?」


■の絶叫■


「なんでアンタたちがッ」


「こっちの台詞なんだよなー。どこに消えたかと思いきや」


「まったくだ!! がははは!! メイドの仕事でもやってたのか! 本業のファイターはどうした! ファイターは!」


●■▲


 小屋の中に招かれたクライス達は正座で、ちゃぶ台の前。

 お茶を淹れるジャスミンは恥ずかしそう。


(ぼろい内装に、メイド服)


 まじまじと、メイドになった彼女を見つめるクライス。

 その視線に、ジャスミンは頬を更に赤くした。


「なにか文句でもあるのかしらッ。似合わないとでも……」


「すごい可愛い」


「!?」


■ジャスミンの顔が、一気に赤くなり■


「ほっはああああああああッ!?」

「げ」


■しまったと思った時には■


「ごふ」


■すでに、クライスの目に青い空が見えていた■


「またですかい」


 もはや、お約束と化したジャスミンの破壊行為&吹き飛ばし。

 によく巻き込まれてしまう自分。


「外まで……弾かれた……か」


 むくりと上体を起こし、破壊された小屋の壁を見る。

 それで、なんでジャスミンがメイドになったのか薄々分かった。

 彼女の突発的な恐るべき攻撃は、儀攻戦で見ると頼もしいのにと思う。


「はー」


 立ち上がり、小屋に近付いていくクライス。

 修繕作業をしなければならない予感がして、憂鬱。


「――オイオイ、なんてことだよ」


■大きな声が聞こえた■


「っ」


 クライスは背後を振り返り、その人物を視界に収めた。

 いや、収められない。


「でかっ」


■五メートルはある体格■

■薄汚れたTシャツと・ふんどし姿のおっさん■


「……」


「ッ」


 見えるステータスは軒並み高い。

 間違いなくこの男が目的の人物。

 身に纏うは熟練した老人のごときオーラ。彼は鋭い眼光をクライスに向け、悩んでいる様な素振りの数秒後、静かに口を開いた。


「こ、こんにちは」


「え、あ、はい」


「……」


「……」


■流れる沈黙■

■会話が続かない■


(なるほど。同類か)


 変なシンパシーを感じたクライス。

 たどたどしい会話の後に、再び家へと招かれた。


■彼こそが、クライス達の会いたかった人物■

■数々のナイトやファイターを育てた、ベストコーチ■

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