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レンとアイ

作者: 映像制作UMASHIKA

■外


愛:あなたは何


レン:えっ、

  自分は佐々木って言って、、、


愛:いや、そうじゃなくて、

  

  何? 何か用?


レン:連絡先、教えてほしいなと思って


愛:何で?


レン:えっ、 仲良くなりたいから。


愛:何で?


レン:君のことが好きだから、


愛:それは恋? 愛?



僕は新鮮な感情を抱いた。

好きという言葉にイエス・ノーで答えるのではなく、

恋なのか?愛なのか?

そう聞かれたことになのか?

それとも彼女の雰囲気になのか?

僕は彼女に圧倒されていた。


愛:ごめんなさい。

  連絡先、いいよ。


■部室


愛:この前はごめんなさい。


レン:いや、自分こそ急に声かけてごめん。


愛:ゼミのレポートのことを考えていて、

   私、集中すると周りが見えなくなっちゃうから。


レン:そう? 大変?


愛:、、、


レン:どんなやつ?


愛:レポート?

 「愛」について


レン:カンタンそうじゃん?


愛:学問としてきちんと説明しようとすると難しいのよ。


愛:例えば「自分」っていうのをどう説明するか?

  あなたならどう説明する?


レン:今、21歳の男で、身長が、、、


愛:それはあなたの要素、アイデンティティであって、

   「自分」という説明になっていないでしょ。


レン:なるほど。


愛:完璧な答えがあるわけではないから、

愛:それぞれが自分なりの答えを考えればいい、

  って教授にも言われているんだけどね。

  そうは言っても、簡単にイメージできないんだよね。




レン:どう?レポートは?


愛:(駄目だと首を振る)


愛:自分のために行動するのが恋、

  好きな人のために行動するのが愛、

  ってな感じは何となく思うけど、

  何か自信が持てなくて、迷ってる。



レン:自分も何か役立てないかと思って、

   少し、考えてみた。


愛:どんなこと?


レン:ミームという言葉を知ってる?


愛:???


愛:聞いたことない。


レン:知らないよね。説明、難しいんだよな。

   遺伝子にまつわる話。


レン:人間の成長って環境も大事とよく言われるよね。

   今、僕らも学生で勉強している。

   それで生物としての能力を上げている。


愛:そう、、、かもね。


レン:遺伝子というのは情報。子孫が生き延びるために、

   どう生きるか?という情報がある。


愛:面白そうだけど、愛と、恋と、どう関係してくるの?


レン:もう少し、説明聞いてて。

   遺伝子が情報だとすれば、学問というのも情報であり、

   生きていくための情報がある。

   学問だけじゃなく、芸術、文化などが情報としてヒトの成長に影響している。

   ミームというのはそういう存在で、

ミームと遺伝子は互いに影響しあっていると考えられているんだ。

愛:少し難しい話だね。


レンが無邪気に微笑する。


レン:この考えはドーキンス博士が蜂の行動を見ていて思いついたものなんだ。

蜂は蟻と同じように女王蜂と働き蜂がいて、働き蜂は生殖行為をしない。

なぜしないのか?それを解明しようとして思いついた。


愛:よーく、考えてみるとアリや蜂って不思議だね。

  自分の遺伝子を残すわけでもないのに女王蜂のために行動するのって。


れん:ここからが本題かな。

キリスト教における最高の愛は?


愛:アガペー。

  無償の愛。


レン:アリや蜂がこういう社会を持つのはそちらのほうが効率よく子孫を残せるからと言われてる。

でも、自分の子でもないのに、

時には命を賭けても行動するのは無償の愛情のような感じがした。

血の繋がりが完全ではなくても、誰かのために行動ができる、

そういうことって、感覚的にだけど、あるんじゃないかって思う。


愛:難しいね。

  でも自分も感覚的になんとなくわかる部分がある。

  時代劇の話だったか?お奉行様が親権争いで性格の悪い生みの親ではなく、愛情のある育ての親に親権を与えてた。

  


レン:血の繋がり、遺伝子の繋がりじゃなく、

愛情の繋がり、ミームの繋がりが同様のものになり得ることがあるように感じる。

自分は理系で感情を言葉にするのは苦手で、

でも何かヒントになるんじゃないかって思って。



愛:凄いね、もっときちんと研究して論文書きなよ。

  自分もまだ整理できてなくて、でも、

  ありがとう。




■自分の部屋掃除

雑巾で拭いている


吹いた雑巾を見つめる愛。


レンに電話


愛:会いたい


レン:どうしたの、急に?レポート、完成したの?


愛:私、雑巾って凄いなって思ったの。

  自分が汚れることで、相手を輝かせる。


レン:こないだの話みたいだね。


愛:うん。

  そんなことを思ったのが初めてだった。


レンが優しくうなずく


愛:雑巾が汚れることは当たり前だと思ってた。

  でも汚れることが尊いなって思えた。


愛:私、知ってるよ。

  レンが私のためにいろんなことをやってくれてること。


レン:自分も愛や恋なんてきちんと考えることはなかった。


レン:愛を育む、という言葉。

   自分も改めて、愛という言葉を考えた時に、

   愛はもらうものでも、与えるものでもなく、

   作っていく、育んでいくものじゃないかって。


愛がレンに抱きつく。


愛:ありがとう。


レン:レポートは書けそう?


愛:・・・、わかんない。

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