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#01: プロログ



周りには護衛兵に見える、チェインメールの人が何人か倒れていたが、いずれに形も見つけることが出来ないほど酷く損なわれていた。御者に見える人の死体と、この馬車の主人だろうか、かなり高そうな服と装身具で飾った死体もあったが、さっきの悲鳴の主人公は、見つかるのが出来なかった。馬車は双頭馬車らしいけど、馬はもう逃げてしまったようだ。


「誰かいませんか?」


ユーが既にボロボロになってしまった馬車の中を確認する。


「ううっ......」


居た!!!


心の中で静かに喜びの歓声を叫んだユーは馬車の中にぐったりと伸びている少女の状態を確かめる。水色のドレスを着ている中学生くらいに見える金髪碧眼の少女は腹を手に握ったまま小さく呻き声を吐き出していた。幸いなことに、まだ死んではないようだ。しかし、このままだと、いつ死んでもおかしくない。腹部を覆っている少女の手を退けるとドレスが真っ赤な血でじっとり濡れている。


傷口を確認するために、ドレス少し切り取る。少女の柔らかな肌が現れると何故か少し恥ずかしくなる。とにかく、完全に破られた馬車の木の破片が飛んできて打ち込まれたそうだ。


とりあえず、戦車に戻って応急処置キットを持って来る。その次は、この木片を抜かなきゃならない。そうじゃないと止血とかドレッシングとかの治療行為が出来ない。だが、残念ながら緊急キットに麻酔剤は含まれていなかった。鎮痛剤はあるが、意識もない子にそれを与えることは出来ないし、薬の効果がつくまで待つ余裕もなかった。だから今、精神ももうろうなうちに一気に抜いてしまうことが最善であろう。


「すまん。ちょっとだけ我慢してよ。」


「グウウウック!!」


太い木片がすうっと少女の体から抜かれると、少女の体がその反動として跳ね上がる。幸いなことに、傷を見るとそう深くはないようだ。先ほど血が湧き上がることもなかったから、動脈まで破られたわけでもない。それでも、かなりの出血があるのは事実。縫う必要があった。しかし、載荷にそんな高いレベルの奇術はできなった。医療用のステープラーどころか糸と針すらない状況でどうやって縫合手術が出来るわけがない。


もちろん、死んでしまったマイケルはCLS(Combat Life Safer)の訓練を受けたので、静脈注射からエピネフリンまで完備したCLSキットが戦車のどこかに有るはずだが、それを探す時間も、使う知識も彼にはなかったので昼の行灯に過ぎなかった。


結局、ユーは手術を諦めて消毒綿で少女の真っ白な腹を綺麗に消毒した後、銀色の袋に包装されたトラウマパッドを傷口に貼り付けてくれる。これなら、ある程度は止血ができるだろ。ただ、後で炎症が起こして、膿が出てくる確率が高い。それでもすぐに死ぬことよりはいいだろう。


ユーは少女を背負って再び寂寞に包まれた戦車まで帰ってくる。数時間前までは、自分の仲間であった三人はまだ冷ややかだ。そのせいで余り気持ちい場所ではないが、いつモンスターたちに襲われるか分からない外よりは劣化ウラン装甲に囲まれたこの空間が百万倍は良い。


戦車の後ろ側に少女を寝かせたユーは自分の友人を埋めてあげると思う。おまけにさっきの馬車の横にあった悲惨な光景も収拾してあげよう。それが同じ人間としての最低限の礼儀だ。


8人分のくぼみを浅く掘っだ後、逐一に埋めてくれる。三の墓の上には木の枝を拾って、つまらないがだけれど、十字架を作って挿してくれる。ユーは特に神を信じることではなかったが、彼らは信じていたみたいだから。


「たとえ1年半くらいの短い間だったけど、決して忘れないよ。」


あまり良い追悼辞ではないが、いま思い出すのはこれしかなかった。


肉体労働をいぱいしたせいか、お腹が空いてしまった。中空に浮かんでいた太陽は、いつの間にか西空に掛かったまま金色の光を誇っていた。多分森の中だから日が早く過ぎ去った可能性もある。そもそも、こっちの世界も一日が24時間という保証もない。日が沈む方向が西ではないかもしれない。もしかしたら月が二つだとしてもおかしくはない。


「魔術とか、あるのかな?」


映画やゲームで登場するそうなモンスターがいるんだから、それに対応する魔術もあるんだろう。そうじゃないとバランスが崩れるから。少なくとももそんな部分では神が公平だと信じている。


「ご飯でも食べようか.....」


特に食欲はなかったが、今日一日ずっと力を使ったせいで腹は減っていた。


収納庫から淡褐色のプラスチックバグ袋を一つ取り出す。これが米軍の標準戦闘食料、MREだ。味はどの国の戦闘食料がそうであるように、良いとは言えないが、そこそこ食べられるものであった。


まず、ヒーティングパックを取り出して袋の中に書いた二行の線まで水を注ぐことだ。これで温かい水を確保することができる。これを使って主食を製造すれば完成だ。


「03番。やった!チキンヌードル、ゲット!」


最も美味しいと評価されるチキンヌードルがかかった。調理ができてる間、副食パックを開けてみると、M&M、チョコバー、クラッカー、チーズスプレッドなどが出てくる。夕飯として悪くないメニューだ。


キューポラにまたがってチキンヌードルをフォークで食べてみる。空腹くにまずいものなし、とも言うし、記憶より美味しい。


「ううん......」


ほのかに広がる鶏肉の香りで目を覚めたのかな?車内を見下ろすと青い目の少女が半目でユーを見上げていた。


「ああ、起きたのか。」


少女は答える代わりに何も言わなくユーのそばに座った。


「食うか?」


ユーは少女にチキンヌードルが入った袋を差し出した。少女は何も言わず、封筒とフォークを受けて袋を見て見たらフォークで麺を少し口に持っていく。しばらくの間、可愛くもぐもぐ噛んでいた彼女は突然あたふた麺を級入し始める。少しは貴族としての体面とか、守ってもらいたかったのに。


それを見ながら、ユーはスポンソンボックスからMREをもう一つ取り出して調理を始める。 22番、アジアンスタイルビーフ。これも悪くないメニューだ。


「Wer bist du?」


食事をしようとするたびに少女が話をかけてくる。残念だが、彼が全く知らない言語だ。


「はあ? Do you speak English?」


「Danke dir für meine Rettung.」


何を言ってるのかさっぱり分から。けど心当たりはある。


「Am I in Deutchland?

(俺は今ドイツにいるのか?)


一度ドイツ語で当てずっぽうに聞いてみた。特有の破擦音や硬い言い方から何かドイツ語の感じが来た。まあ、オランダ語とかデンマーク語かも知らないが、一応は一番最初に思い出したドイツ語から始めてみよう。


「No, you're not in Deutchland. This is the Grafschaft of Adalbert located in the edge of the Great Carolus Reich.

(いえ。ここはドイツ(?)ではありません。ここはアダルベルト伯爵領、カロルス帝国の端です。)


少女がいきなりペラペラと英語を喋り始めた。これでここがドイツではないことは理解した。どうやらカロルース帝国の辺境にあるアデルベルトと言う奴のグラフシャフトだそうだ。グラフシャフトがどう言う意味なのかはよく分からないが、推定してみると貴族の領地の種類であるようだ。


「So you do speak English, huh.

(なんだ、やっぱり英語出来るじゃん)


なら最初から英語で喋れよ.... でも英語が通じるなんて、本当に良かった。アメリカで過ごした11年6ヶ月のおかげで英語は誰よりも自信があった。


「I'm not explicit at it, but I did learn the basics at the Imperial academy. So, who are you? You don't look like you're from around here.」

(あんまり上手ではないが、基本的なものはインペリアルアカデミーで覚えました。ところで、貴方様は誰ですか?ご近所の人には見えませんが。)


彼女の声は可愛さを含んでいながら、その孤高威厳を失わない、高位の貴族令嬢に似合う声だった。


「A Thank you would have been nice, but, okay. Let's just say I'm from the east.」

(感謝の言葉くらいは言ってくれても良かったと思うけど..... とにかく、東だ。俺は東からきた。)


「In fact, I already did. So, from the east, huh. How east? East of the reich, or over the Ostberge?」

(既に言いましたので。それで、東と言うと.... どれだけ東からですか?帝国の東?それともオストベルグの向こうからですか?)


お行儀が悪いのか、それともプライドの高さのせいか。ドイツ語でありがとうございますが「ダンケ」なのは知っているが、さっきは慌てて何と言うのか正しく聞かなかった。そもそも感謝を受けるつもりでやったことでもないので、「まあー、いいじゃないか」とユーは思った。


「オストベルグ?」


「Oh, right. Deduced from the fact that you can't speak our language, you wouldn't be from the reich. So, by Ostberge, I meant Magna Montibus. You know, the great mountains of the east.」

(あ、そうですね。帝国語が出来ないから帝国の人ではないんでしょうね。オストベルグと言ったら、マーニャ・モンティブースのことです。あの、東に有るデカイ山。)


"Ah, the mountains!"

(あ、山のことか!)


一体どんな山なのかはさっぱり分からないが、一度相槌を打ってくれる。


「I heard that there's a country full of silver, and is ruled by people with black hair and black eyes.」

(噂では東の国には銀で溢れ出す鉱山がいぱい有って、黒髪で黒い目の人たちが住んでいると聞いてます。直接会うのは初めてですね。)


「I'm not so sure about the silver, but yes you're right. I am from there."」

(銀についてはよく知らないが、俺は確かにあそこにある国出身だ。)


突然、少女の目がキラキラと輝き始めた。清国の時、中国から大量の銀がヨーロッパまで流入し、新大陸からもいろんな貴金属の鉱山が開発されるる前は、ヨーロッパでは爆発的な銀の需要があった。つまり、この世界も地球の歴史とあまり変わらないそうだ。


「I don't suppose you came through the Lavarov Tsardom, cuz I've heard that they are quite unfriendly against foreigners. And since the sea route is currently being blockaded by Pagans, the only other way would be through the East Canon Empire. Am I right?」

(ラバーロープ・チャル国を通じて来たとは思わないし。ほら、そっちは外国人に対してとても不親切だと聞いたからな。でも、海路の場合は今、異教徒たちに閉ざされたから、残っている方法は、東キャノン帝国を通す道しかないんでしょう?)


とても多くの情報が一度に爆撃された。ちょっと整理してみよう。この世界は、地球と同じく東西洋に分かれておるが、その中間にはマーニャ・モンティブースと言う名前の険しい山脈があって、両方の交流を防いでいる。この山と接した国はラバーロープ・チャル国と東キヤノン帝国があり、チャル国という名称で推測してみると、地球ロシアと同じポジションではないかと思う。では、東キヤノン帝国は地球の東ローマ帝国と同様のポジションなのか?海路が異教徒たちに封じられたのは、イスラム帝国の話だろう。


「Uh... Yeah, you're right.」

(ふむ..... そうよ。)


事実通り自分がこの世界に転移して来たって言うこともできない。そうしたら、必ず宇宙人のように解剖されちゃって険しい格好を免れないであろう。


「But I heard the eastern mountains are full of unscrupulous, miscreant monsters. That's why it was reprobated by the church in the first place.」

(でも、東の山は、凶悪で暴悪なモンスターで満たされていると聞いたんです。だから教会からも見捨てられたことだと。)


教会か..... ここもキリスト教のような唯一神信仰をもとに国たちが結ばれているのだろうかな。


「Well, that's why I needed a monster myself.」

(だから俺にも化け物が必要だったのさ)


ユーはそう言いながらタンクを示した。


「Wow! Is this all metal? It's like an iron fortress! How does this thing even move?"」

(うわ!まさかこれ全部鉄ですか?まるで鉄で作られた要塞みたいです!こんなのがいったいどうやって動くのですか?)


少女が不思議な装甲板をコンコン叩いてみる。正しくは鉄ではなく、劣化ウランが混ぜた複合装甲が、まあ、いいだろう。言っても理解できないそうだし。


「Well.... Internal combustion, I guess.」

(さて、内燃機関、かな)


「Internal....Combustion..... Never heard of it.」

(内燃.....機関、聞いたことない物でね)


「Well, that's what we use to move all our automobiles.」

(そいなの?うちの自動車は全部あれで動くよ?)


「Auto....moblies? Does that mean that they move by themselves."」

(自動......車?自動って、自分で動くと言うのですか?)


「Not quite yet. We are currently working on that though. For now it just means they don't need horses to move.」

(それはまだだよ。殆ど開発は完了したけど、実用化はまだ。今のところは馬なしで動くだけさ。)


ユーは自律走行車が思い出してにっこりと微笑む。


「By the way, is your wound okay?」

(それにしても、傷は大丈夫なのか?)


彼女はユーが付けた止血帯の上に手を当てる。


「Did you do this?」

(貴方がやってくれたんですか?)


「I did what I could do. Just a simple temporary measure. You'd better go see a doctor sooner or later.」

(できる限り処置はしといた。でも、一時しのぎだから、町に戻ったら医師に行って見せるのがいいよ。)


この時代の医者と言うやつらが余り信じられない者なのは分かってる。それでも、薬草学とか、ヒーリングポーションとかがあるかもしれないか。


「No need.」

(いりません。)


彼女はそう言いながら掌から蒼い光を現せる。手を傷口に当て何かの詠唱を行う。治療魔法なのかな?しかし、傷口が覆われていて、眼で確かめることはできなかった。


「WOW! What was that?」

(さっきのはいったい....?)


「MAGIC.」

(魔術です。)


凄いな。さすが異世界だ。魔術まで存在するファンタジー世界。それに、初めて会う子が魔法使いだなんて、言うこともなく最高だ!


「Can you use it on me too? I sprained my shoulder. Trying to save you.」

(俺にもしてくれるのか?お前を救う途中に怪我したんだよ。)


ユーはさっき無理したオ肩を差し出す。わざと少女を救うために怪我をした強調する。しかし、その必要もなかったように、少女は容易く彼に治療魔法を掛けてくれる。肩にかかった負担がいっそう楽になる。


「Thankyou.」


お礼をじゃんと言っとく。俺はお行儀悪いお前とは違。ま、そう言う意味からだ。


「Okay, so, I have too tell you something. Something very important."」

(あ、そうよ。貴方に伝えなきゃならない話があるよ。)


言いたくはないが言わなきゃならないものがある。


「My father.... He's dead..... Right?」

(お父さんは..... 死んだよね.....?)


「Um.... Yes. You were the only survivor.」

(うむ、俺が辿った時はお前が唯一な生き残りだった。)


少女の方から話を出すとは思わなかった。たぶん予想していたみたいだ。意外と涙は零してないが、暗い顔だ。冷たく暗い表情。複雑な婦女関係だったのか。他人の家庭事に巻き込まれたい気は目糞ほどもない彼だけど、気になるのは仕方なかった。


「Sorry for the late introduction. My name is Evelyn von Adalbert, first daughter of Graf von Adalbert.」

(自己紹介が遅れちゃってごめんなさい。私はエヴリン・フォン・アダルベルト、アダルベルト伯爵家の長女です。)


予想どりに貴族家のお嬢様だ。これからは人生逆転だ!いや、でも、元の人生も余り悪くはなかったんじゃないのか?もう知らない。ユーはそう思いながら手を差し出す。


「James from Korea.」

(韓国から来たジェームズだよ。)


こうやって名前を交換、そして握手する。


「Come to speak of it.... Will you marry me?」

(さては、私と結婚してくれませんか?)


「ハアア???」














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