主のために、乙女ゲームに介入しました
主人公が攻略対象のために手料理を振舞うことになるが、攻略対象を亡きものにしたい悪役側が料理に毒を入れるのだ。
それに気付かずに料理を攻略対象に出してしまう。
主の推しの彼は、主人公の兄的な存在ではあるが、主人公を密かに好いていた。
攻略対象が料理を食べる前に、毒を指摘すると、主人公が毒を盛ったとされてしまうと思ったのだ。
だから、自分の分の料理がないとごねる推しの彼。
攻略対象が、料理を半分くれると言っても、食べさせるわけにはいかないと、機嫌が悪い振りをしてその場をめちゃくちゃにするのだ。
そうして、事なきをえたかに見えたが、折角の計画を台無しにされた悪役側が、今度は推しの彼を邪魔に思い、彼を毒殺。
という、感じだ。
今回、私が介入するのは、機嫌が悪い振りをして、その場をめちゃくちゃにするシーンだ。
主のお力をお借りして、推しの彼として介入する。
主、見ていてください。
※※※
「ラン君。この前は助けてくれてありがとう。お礼と言うにはアレなんだけど、前に食べたいって言ってたミートパイを作ったんだ」
「これ、俺が食べても、いいのか?」
「うん。君に食べてもらうために作ったんだから、冷めないうちに召し上がれ」
そう言って、私がラン君にミートパイを勧めたところにアルベールがやってきた。
「あぁ、腹減った~。俺にも食わせろ―」
「ごめんね。材料がそろわなくて、アルベールの分はないの」
「ランだけずるいぞ」
「だって、これは、ラン君へのお礼をのミートパイなんだもん」
私たちのやり取りに、困り顔をしたラン君が助け船を出してくれた。
「おいおい、そんなに怒るなよ。彼女の手料理をいつも食べている君が、俺は羨ましいよ」
「ラン……」
「そうだ、少なくなるけど半分ずつ食べようぜ。いいよな?」
そう提案してきたラン君に私は頷いた。
私が頷いたのを見て、ラン君はミートパイを半分にして、アルベールに差し出した。
その時、私には聞こえなかったが、アルベールはラン君に何か言っていたようだ。
何を話していたのか気になって聞いてみることにした。
「何よ、こそこそして」
「ランは、お前の料理初めてだって言うから、腹の具合が悪くなったらカワイソウだからな」
そう言って、アルベールは薬のようなものを振って見せたのだった。
※※※
と、言う訳で攻略対象に解毒薬を渡すことに成功し、その場をやり過ごすことにしたのだ。
さぁ、推しの彼はこれで生き残ることができるのか、様子を見てみましょうか。
「推しが!!尊い!!」
主の雄たけびが響きわたった。
何事か尋ねると、
「お前のおかげで、推しの生存ルートが出来上がった!!」
それは良かったですね。主。
「その上、推しとちょっとだけいい雰囲気になった!!」
そうですか。
「尊い!!」
主、それなら私を褒めて下さい。
できれば、私だけを見ていただきたい。
主、言いましたよね、『なんでも』って。
2018/11/02 一部修正しました。