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外道の道  作者: 我田引水
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 町の東口から出るとちょっとした森があり俺が向かうダンジョンはその森の中央部分に位置している。徒歩でダンジョンに向かっている最中に俺はダンジョンについて冒険者学校で習ったことを思い出していた。


 ダンジョンとはなにか、それは一言で言ってしまうと不思議な洞窟のことである、と俺は先生に教わった。ダンジョンは世界に生物という存在がまだ誕生していないときから存在しているといわれている。


 最初ダンジョンは危険な生物がすんでいるだけの洞窟という認識だったらしい。モンスターはなぜかダンジョンから出てこないのでこっちから近づかなければ何も問題はなかったのだ。しかし、時代が進みあらゆる現象の謎が解き明かされていく中、ダンジョンだけがどういものなのかわからないということに対して不満を持つ者たちが出てきたのだ。


 何故モンスターたちはダンジョンから出てこないのか、何故ダンジョンというものが存在しているのか、そういったことが気になったらしい。俺ならそういうものだろって感じで納得するけどな。彼らはダンジョンというものを知るためにダンジョンへ向かった。


 そこでモンスターを倒し魔石というものを発見したのだ。これがまさに世紀の大発見というものだった。彼らがその魔石について色々調べた結果、魔石は様々なもの例えば列車、飛行船、船などの新たな動力になるが判明した。


 そして彼らは魔石で金儲けをすることに夢中になってダンジョンの謎を解き明かすことは忘れてしまったんだとさ、めでたし、めでたし、てな感じで学校では教わったんだよな。結局謎は謎のままというわけだ。


 ダンジョンのこと以外にも冒険者学校ではたくさんのことを教わった。1年のころは主にモンスターの種類やその倒し方、魔力による身体強化、様々な職業のメリットデメリット。2年になってからは本格的に自分の職業を決め、ひたすら鍛錬の日々。


 ちなみに俺は剣士を選んだ。ほんとは魔導士になりたかったんだけどな。俺は生まれつき魔力を持たない体質だったからなれなかったんだ。魔力を持たない俺は魔力による身体強化も使えないため剣士としても3流だ。身体強化を使えない差を技術や経験で補おうともしたがそれもできなかった。


 そんなことで埋められる差ではなかったんだ。そして最高学年の3年になったころには落ちこぼれ剣士の出来上がりというわけだ。3年になるといよいよダンジョンに潜り始める。学校が現役の冒険者たちに依頼してその人たちと一緒にダンジョンへ行くのだがそれも最初のほうだけだ。


 慣れて来たら自分たちでパーティーを組んでひたすらダンジョン攻略の経験をつんでいくようになる。俺は1人で行ってたけどな。俺みたいなのをパーティーメンバーにいれるやつなんていなかったし。その結果、俺の冒険者学校での卒業成績は堂々の最下位だ。


 もちろん実力があるやつが1人でダンジョンに潜ったならばそれなりの成果を得られるだろうけど俺にそんな実力ない。当然の結果だ。


 そんな消し去りたい過去を思い出し今日何度目かもわからない深いため息をついているとダンジョンゲートに到着していた。


 ダンジョンゲートとはダンジョンの入り口の前に建てられた建物のことだ。昔はだれでも入れたダンジョンだが今は違う。基本的には冒険者以外立ち入り禁止になっている。これは興味半分でダンジョンに入ろうとする人を止めるための制度だ。


 何の準備もなしにダンジョンに入ろうとするのは自殺志願以外の何物でもないからな。しかし制度だけ作ってもあまり意味はない。そうしてできたのがダンジョンゲートというものだ。まぁダンジョンゲートなんてたいそうな名前で呼んじゃいるが見た目はただのドア無しの小屋だ。


 都会の近くにあるダンジョンゲートはもっと立派な建物なんだが田舎のダンジョンゲートなんてこんなもんだ。俺はダンジョンゲートに入りと右側にある小さなカウンターに向かう。そこには髪ボサ髭ボーの中年オヤジが新聞を読みながら座っていた。


 このおっさんはいわゆる門番というやつだ。この門番というのはだいたい冒険者を引退したやつがやっている。いちおうそれなりの戦闘力を持ったやつがやらないと意味がないからな。

 

 おっさんは俺に気づくと読んでいた新聞から目をそらし、手を差し出してくる。ギルドカードを見せろということだろう。俺はギルドカードを取り出しおっさんに渡す。おっさんは少し見ただけで何も言わずにすぐ俺に返しくる。俺はこのおっさんが言葉を発しているところをみたことがない。まぁ、別に会話をするような仲でもないから当たり前か。


 俺はおっさんに軽く会釈をしてからダンジョンゲートの奥へと進む。奥には入り口と同様にドアなしの出口がありそこを通るとダンジョンの入り口が見えてくる。ゲートの出口からダンジョンの入り口まで左右にはそこそこの厚さの壁がありダンジョンゲートを通らないとダンジョンには入れないようになっている。


 そこを歩いている途中で俺は気合いを入れる。いつになってもダンジョンに入るときは緊張するんだよな。


*********


 ダンジョンに入ると空気が変わるような感じがする。これは俺だけでなく冒険者全員が思うことだろう。ダンジョンの入り口は人が3人くらい同時に通れる程度の穴が開いている大きい岩というものだ。


 中に入って行くと最初は下り坂になっていて奥に進んでいくうちにだんだん平らになっている。道幅もかなり広くなっていて、上下左右のいたるところに光る苔、通称グリーンライトが生えていてダンジョン内を明るく照らしている。これのおかげ明りを持ってくる手間が省けるんだよな。ありがたいよ。


 不思議なことにこのグリーンライトはダンジョン外へ持ち出すとたちまちその輝きを失う。ダンジョン以外の気候に適さないらしい。グリーンライトの明りをたよりにダンジョンの奥へと進んでいく。


 ダンジョンってのは基本的に下に向かって階層構造になっている。世の中には塔みたいに上へ上がっていくダンジョンもあるみたいだが俺は行ったことがない。俺が今いるのは1階層だ。この階層はちょっと進むだけで道が色々な方向に枝分かれしている。


 まるで天然の迷路だ。最初は地図を見ながら進んでいくものだが、3年も通ってれば大体の道は感覚でわかるようになる。・・・というのは半分嘘だ。俺は3年間ずっと1階層だけでモンスター狩りをしているから道を覚えているだけだ。


 俺が1階層より下に行かない理由は簡単だ。下に行けば行くほど強力なモンスターがうじゃうじゃしているからだ。俺なんかがそんなところ言ったら瞬殺される。実際何回か2階層に行ったことがあるのだが殺されかけたよ。たった一つ階層が下がっただけのにな。


 しばらく適当にダンジョン内を歩いているといたよ、モンスターが。どのダンジョンでもだいたい1階層にいるゴブリンが。モンスターには討伐クラスという目安がある。ゴブリンの討伐クラスは最低のクラス1。けど俺にとっては最高のクラスだ。気を抜くことはできない。


ゴブリンってのは基本的に複数で行動するものだが、今俺の目の前にいるのは一体だけだ。ついてるな。どうやら向こうも俺に気がついたらしく、手に持っているこん棒らしき岩を振り上げて襲ってきた。俺は腰に下げている剣を抜き、迎撃の態勢をとる。


 ゴブリンってのは獲物を確認すると速攻で突撃してくる。攻撃も単調だから読みやすい。こん棒を振り回すくらいしかしてこないからな。俺はゴブリンが俺に向かって振り下ろしてくるこん棒を体を少し横にそらすことでかわす。


 俺がかわしたことでこん棒は空を切り、ゴブリンにわずかな隙が生じる。俺はその隙を見逃さずに一気にゴブリンの首をはねる。致命傷となる攻撃を受けたゴブリンはすぐさま灰色の塵となり煙のように消えてゆく。胴体から離れた首も塵となって消えていた。


 これもダンジョンの謎の一つだ。ダンジョン内で生物が死ぬと塵となって跡形もなく消えていく。これはモンスターに限ったことではなくダンジョンに入った生物も同様だ。つまり俺もダンジョン内で死ねば塵になるってわけだ。怖いねぇ。


 ゴブリンが消えた場所には小石程度の黒い結晶石が落ちていた。これが魔石だ。これを冒険者ギルドで換金して生活費を稼いでいるわけだが、ゴブリン程度がドロップする魔石の価値なんて高が知れてる。これ1個じゃ安いパン一つ買えやしない。俺が1日の食事代や宿代を稼ぐには最低でもこれが50個はないときつい。


 俺は剣をしまい、魔石を拾う。拾った魔石は剣とは反対に下げている袋に入れる。さてと、後49個集めますか。


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