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蛇足 あさましきをのこ


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 駅ビルにある書店で何冊かの漫画を買い、エスカレーターで出口のある階まで降りながら、何故か僕は友達の惚気話を聞かされていた。

「──しかも髪も切って、なんか凄く明るい感じになってたんだよなぁ」

 こいつの好きな女の子が突然イメチェンをして可愛くなったという話だ。僕は彼ともその女の子ともクラスが違うのでよく知らないが、とにかく「可愛くなった」と連呼している。ちなみに彼はその子と付き合ったりしているわけではない。

「わかったから。そんなに可愛いんなら告白してみれば? 仲は良いんでしょ?」

 延々とこの話を聞かされている僕は、面倒に思いながらも適当に受け答えする。

「……いや、もうちょっと先かな」

「やーい意気地無し」

 知らない人について長々と語られた仕返しに、ここぞとばかりに罵ってみた。

「なんだよ、志貴だって彼女いないくせに」

「君だっていないだろ」

 独り者同士、不毛な争いである。

「それに僕は中3の頃、とある女の子から好かれていたしね」

「……嘘だ!」

「失礼な反応だな」

 下の階まで降りきって、僕らは改札前の広い空間まで来た。この駅は利用者が多く、ちょくちょく知り合いを見かける。

「いや、正直そんな物好きな女子がいるとは思えない。どうせコクられたわけでもないんだろ?」

「うぐ」

 痛いところをつかれた。それでも僕は反論する。

「いやでもね、中3の頃はよく喋ったんだよ。その子はあんまり男子と仲良くする子じゃなかったのに。僕が友達と遊びに行った話とか、興味深そうに聞いてくれたな」

「信じらんねぇ。その友達の方に興味あったんじゃねえの?」

「それにしては、その友達と話してるところは殆ど見たことないなぁ」

 今日は誰か知ってる人がいるかなと、周囲を見回しながら雑談に応じていると──

「おっ」

「どうした」

 意外と近くに、丁度彼女がいた。

「ほら、あそこにいる女の子が今話してた、佐藤日和さん──」

 僕が指差した時、人陰になっていて見えなかった、学校指定のものらしいジャージ姿の青年が、佐藤さんの方に振り返ったのが見えた。あれは、広樹……?

「おい、なんか男と話してるけど」

「……」

 久し振りに遭遇する二人に話しかけようと佐藤さんの方に歩み寄っていた僕には、彼女が発した言葉が聞き取れてしまった。

「私、ずっと、広樹のことが好きだったの。小学生の頃から、今までずっと」

 その後、二人がどんなやり取りをしたのか、呆然としていた僕の耳には入らなかった。

「……ドンマイ」

 僕の肩に手を置いた彼の声が実に優しげに聞こえた。

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