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君がため。
雪が溶け始めた春の始めの頃。
まだ微かに雪が降る季節ではあるけれど…
私の中では、充分に春なのです。
愛しいあなたにさしあげるための若菜を
春の野原に出かけひとつひとつ大切に
摘んで参ります。
セリやナズナ…ゴギョウにハコベラ、スズナにスズシロ…。
この時期に若菜を食べると
邪気や病気を祓うと言われていますから
きっと
あなたも喜んでくれるかと思います。
まだほのかに肌寒さの残る季節ですし
あなたの体の事が少々心配です。
恋仲でもないのに、図々しいですかね…
けれど、私の想いを届けるにはこれくらいしか出来ませんから。
若菜を摘む私の着物の袖に、静かに白雪が舞い降りています。
君がため 春の野に出でて 若菜摘む
我が衣手に 雪は降りつつ
百人一首をモチーフに