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CRON:     Cloudy sky;アーティン


――――急がないでいいから。

 気持ちの良い眠りから眼を覚ますと、横には未だ裸の彼女が、すっと寝息を立てながら、

俺の腰辺りに腕を軽く回した状態で、口元を緩くしていた。

どんな夢をみているのやら。

いくら気持ち良さそうに寝ていても、眼につくものは眼に付くのさ。

丁度斜め下を見るとそこには彼女の双丘(むね)がある。

スーツの上からもチラリと見えた下着の上からも見ても、

予想よりふっくらとして柔らかそうなその丘の正体は何度見ても甘美観葉虹のよう、だ。

かろうじて腕を伸ばせば触れるという状況にあるのだからもちろん、手に感触を覚えさせてもらおう。

どうしてこうなんとも言えない柔らかさと少しの弾力が心に安らぎを与えてくれるのだろうか。

まるですべてを許さんとする祖のイヴのような印象を持つ。

大きすぎず、小さすぎない輪の指を滑らせたり頂にアタックをしかけたくなるけれど、

それ実行に移してしまっては愛らしい彼女の寝顔も柔らかさも堪能できなくなるのは必至だ。

けれども――その前に一口だけ。



俺が起きてからどれくらいの時間が経ったのか、

時間を刻むものがこの部屋にはおいてないがために把握できないが、

暑い。

ジッとこのままの体勢でいるのが、熱い。

それもそのはず。

いくら室内の温度を調整していると言っても、機器やその他の部屋に過度な負荷をかけないように、

こちら側の部屋の温度はあまり低くならないようになっている。

となれば当然、汗くらいかく。

柔らかな線を描く首筋から、胸元に至るまで例外なくうっすらと汗をかいている。

それは洋菓子に艶を与えるためのコーティングのように、

寝息をたてている彼女の裸体により一層の魅力を追加する。

さて――次は何処をお手に取りましょうかね。

そう思いながら品定めをしている時、

普段はお守りと称して腕に付けてある特殊任務用の連絡結び糸が二度、赤色に光った。

赤、ということは……。


カルミアの身体に何かダメージが与えられたのか。

もしくは、ルヴァインに向かって来る人間が居たのか。

どちらにせよ、俺が出張る必要が出てくるかもしれないな。


とは考えたものの彼女に触れずにベッドからすり抜けるのは至難の業だ。

なので、彼女を軽く起こしてからいく事にする。

「おはよう、起こしてしまってすまないね。

別件の仕事が入ったから先に出るけれど、鍵は一本置いていくし、

出た後に閉めておくから君はまだゆっくり寝ててくれていい。

chu――薄らと眼を開けた彼女の頬にそう小さくキスをして、

絡んでいた身体を解いて、立ち上がった。


すると眼に入って来たのは、

整列された二つの端末の内、規則的な点滅を繰り返す自らの端末で。


しまった……夢中になっていて端末の確認すらしていなかった。

これは連絡が溜まっているだろうなと思って、

黒のボクサーに本のシルエットが書いてあるモノ履いた後、

端末を見る事無く、赤いスーツのズボンのポケットに押し込んだ後、

上着を羽織りながら、急いで彼女の居る部屋を後にした。

部屋を出た後、焦る気持ちに少しだけ早歩きのような状態になって、

外へ出た後すぐさま鍵をかけて、褐色の運転手の待機していた車へと乗り込んだ。


運転手は俺の顔を見た後、「お疲れ様でした。 」なんて声をかけたが、

冗談を言っている暇なんてない。

走り出した車に少しだけの安堵感を覚えて端末を開くと、

案の定クロンの人間からの連絡やら通知が来ていて、

ドキりとしながらも確認していくと、

空調の効いている車内であるにもかかわらず、

冷や汗がドッと出て来るような文面がいくつか眼に入って思わず唾液を飲み込んでしまった。

【アリスガワ家、上陸される前に海上にて行方不明、知りうる事有れば至急連絡を】

【カルミア様行方不明】

【ルヴァイン様行方不明、二人目となるか】


何が起こっているんだ……。

遠方の関係者からアイツらまで、行方不明とは。

これは、【中央研究所】に立ち寄る前に【情報局】に寄った方が良いな。

「なあ、BK、行先変更だ。 情報局に寄ってくれ!! 」

そう言葉を飛ばすと、BKは真剣な表情で、

「何番に向かいますか。 」という。

俺は間髪入れずに一番だと告げた後、

ルヴァインの端末に連絡を試みる。


が、端末の応答に繋がる事も切れる事も無く、

コール音だけが響き続けた。


何か嫌な予感がしたが、

下手に他の場所に連絡をすると厄介な事になりかねない。

そんなことを考えると、思わず手に力をいれてしまう。

無事でいてくれ、ルヴァイン、カルミア。

そう思う俺を笑うかのように空はどんどんと深く暗くなっていった。



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