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CRON:     暗殺者と冒険者、;観測者のDiscovery

――穏やかに、笑っていて。

 数年ぶりに、

黒霧に染まり霞む現象が起きたというある街に、

突発的な調査のための出張、

という形で探索に来ていた私は、

街の探索を大方終えて、

今夜泊まる宿へ挨拶に向かう為に歩みを進めていた。


路の途中、ぬめり気のある泥路を、

ゆっくりと進んでいる最中に、

唐突に前後から銃撃が派手な音を響かせながら私に向かって訪れた……が。私が怯むことは無く。

対するモノへの対処を開始するために行動を起こした。



先ず濃い霧による視界の悪さでは相手の動向も読みにくい。

ので、私は【片方だけ色の違う緑色の眼】の力を解放する。

そして間を置くことなく、足元を妨げる泥を素早く手いっぱいに掴み取り【観測】を開始した。

【第六複製干渉深層度】、私の有するこの層度に達する力を、

自らの肉体を通して簡易的に繋げる場合、

淀みのあるモノや停滞したモノを媒体にして尚も力を下げる必要がある。

その後で――。

この眼が観るのはどの真実か、いつの可能性か。

そして、その物を過去へ返す。


そう認識した瞬間、今まさに飛んできているであろう銃弾は全てが、

金属の粉や灰となり速度を落として砂と化した。

「なあ、教えてくれないか。キミたちは何のためにこんな行為をしたのか。 」

私がそう問いかけたところで彼らが問いに答える素振りは観えない。

その代わり、三人の内の二人が動揺しているのが観える。

「ああ、そんなに怖がることは無いよ、私はキミたちに危害を加えようとは思っていない。

例え先日捕まった窃盗団の仲間だったとしてもね。

むしろ、この私をクロン・ルヴァインと知って発砲してきたので有れば、大したもんだ。

例え、紛い物だったとしてもその心意気、最高じゃないか、!! 」

黒い霧の濃さが一向に変わらないので、

彼らの表情を気遣う事も出来ないが。

私の名前を聞いた瞬間に先ほど動揺して居なかった一人がざわついている。

ははん、一人は私が貰っていくとしよう。

「まあ、いいや。さよならとでも言っておこうか 」

冷めた低い声で少しだけ素っ気無くした後。


銀で編み込まれた短剣を、

鞘付きのまま引き抜いて。

間合いを詰めた後、

柄の部分で臆病な二人を思い切り突き抜いた。

結構痛い部分に当たったんじゃないかと思いながら、後の一人へと近づいていく。


もう一人の首元だと思われる部分に鞘付きの剣の切っ先を這わせる。


剣を持つ手の少し後ろが少しだけ揺れ、震える。

ビンゴ!こうなったら、腕に取り付けてある【蓄電型摩擦式ビリビリマシン】その中でも手軽な、

【ショック44号】が使えそうだなと思ってすぐさまもう一方の手で、

相手の背中らしき場所にチップを取り付けて擦る。

――びりっと来始めた。これでいける。

自らも感電しない様にその場から少しだけ離れて様子をみ――あだあああああああああ、!!

そう言えば、泥に触れた時の水気が腕や靴に付着したままだったああああああああああ、!!


…………、…………。

――はっ!! いつの間にか心地よい眠りに落ちていたようだ。 んなわけない。

辺りを見回すと、先ほど相手にした二人は、未だ地に顔をつけているようで、

倒れて気を失っているようだった。


さて、先ほどビビっときたもう一人は何処――に。


先ほど相手にした二人の人間の丁度反対側に倒れている一人の姿があった。

その者は倒れていたであろう二人とは似ても似つかないような姿をしていて、

というより全然身分の違うような顔つきや服装をしていて、

金と純銀が綺麗に混ざったような髪をしていて柔らかそうな白い肌に、

綺麗な淡い撫子色の唇をしたあの子はもしや、え?これはあのもしや――。

いやいや、他人の空似、ドッペルゲンガー、? いやいやいや其れなら眼を酷使しすぎた結果かな。

はあ――。わざと観ないふりをしたら間違いなく【オレ達】が殺されるんだろうなあ。

仕方ない、ちゃんと観―――― 。

本当に、カルミア嬢じゃないか……。何故彼女が此処にいるんだ。

先日体調を崩してから今朝まで寝床に籠りっきりの筈だと、お付きの人間に言われたが、

こんな遠い場所に彼女がいるとは……。

移動方法はなんだ、いやその前にあの二人組に連れ去られたのか、?

なんにせよこんな場所で置き去りにすることはもっての他だろうし、

ビリビリを浴びせたこともしっかり謝っておかねば――。


っとその前に彼女の住まいと、念のため先にアーティンに連絡しておこう。

なんせ、アイツは昔から彼女の事を妹のように可愛がりながら心配している節があったからな。

【ヒップの後ろ側のポケットに入れてある携帯端末を取り出してパカっと開く】

随分と前に登録してあるアーティンの番号を押して発信する。



ピピピピピと音が鳴り響く、自分の端末ながらになんとも味気ない音だな、

と感じるがそんなこと今はどうでもいい。


チラチラとカルミア嬢の様子を観ながら、耳を端末に集中させるが、

一向にこの味気ない音が終わる気配がしない。


ん?アイツまだ、リアルタイムで大衆チャンネルにでも出てるのか?

いや、其れは先日私も観ただろう。



というかそもそも根本的な事を考えていなかったが、

此処って旧型の端末でも通信できる筈だよな――?

と考えを巡らせている最中、痺れを切らした端末が、

タイムアウトという事で接続が切れた。


仕方ないか、このところアイツも忙しそうだったからな。

端末を閉じて、ヒップの後ろ側のポケットに戻す。


ふう――――。

どれくらい時が経っても、あの場所に連絡を入れるのだけは緊張する。

彼女、カルミア嬢が眼を覚まさない内に連絡をしてしまった方が、彼女にとっても気楽だろう。


意を決して彼女の住まいに連絡を入れるために、

人差し指に付けている指輪を強く撫でた。

指輪を強く撫でて直ぐ、【空間展開型可視電子パネル】が待機中の文字と共に浮かぶ。

パネルには映像が出ることは無く、待機中の文字が消えると、

張り詰めるくらいの凛とした声で「所属を」と一言だけあったので、

震えそうになる声を抑え込んで「こちら、疑似世界複製選択班第二長、

クロン・ルヴァインです。 取り急ぎお伝えしたいことが有りましてご連絡を致しました。 」


一呼吸置いた後、パネルに人の姿が映る。

白い宝石を糸にしたかのような綺麗な髪に、

紫の服に身を包み白いカチューシャを身に着けている人物。

この人物こそが――。

「あらっ!!ルヴァイン様じゃ在りませんか。

今日はどうなされたのです? 貴方が城に連絡を入れるなど珍しいのに――。 」

ニコニコしているというのに何故だか焦りが生じてしまうが、

声のトーンが高いこの人物こそ、カルミア嬢の世話をするメイドの長、リコリスさんだ。

カルミア嬢が生まれる前からとある城に居るメイドで、

カルミア嬢が生まれてからはカルミア嬢の世話をものすごく力を入れてしている方だ。


「リコリスさんでしたか、城主様で無くて助かりました。

あの方なら何を為さるかわかりませんから。

要件をさらっと言いますと、黒霧が久しぶりに発生した街で、

カルミアお嬢様を発見致しましたので、ご報告をと思いまして。 」


…………。

……。

無言が続く。

無言が続――「ルヴァイン様。 」

「はいッ!」

背筋が一気に凍るようだ。

「今直ぐに城から迎えをと言っても、霧の街までは迎えを寄こすのも時間がかかりますし、

かといって、無暗に、帰路に着くために移動すると先の窃盗団の件や、

最近の悪しき事件が増えている事も気にかかります。

ですので、迎えが到着するまでは、どうかルヴァイン様がご宿泊されるであろう場所に、

お嬢様もご同行させて頂きたいのです。身体的疲労も残っている筈ですから――。 

是非とも、お願い致します――。 」


そんなことを言われてしまっては。

幾度と無く助けられた貴方に頭を下げられてしまっては、断れる訳が無い。

「はい。責任を持って私がカルミアお嬢様をお守りさせていただきます。 」

そう言葉にした途端、彼女のメイド長である女性は「申し訳ありません宜しくお願い致します。 」

なんて口にした後、手を振って一方的に通信を切った。



ふう~~~~。

柄にも無く深いため息を吐く。

一先ずは心配いらない事になったので、物凄く一安心だ。

そう言えばカルミア嬢はどうしてるかなと思って眼をやると、

「――! 」

こちらをジッと観ているカルミア嬢の姿があった。

「おはよう。怪我は無いか、? 

身体痺れたリしてないか、? 」

「――。」

返事は無いが、首をこくこくと振るので、大丈夫そうではあるのかね。

「さて、色々話は訊きたいところだが、

一先ず今日はオレと一緒に泊まる事になったから、宜しくなちゃんと承諾も取ってある。 」

オレの言葉を聞いた彼女は顔を真っ赤にしながら、ゆっくりめに頷いた。

さて、お姫様の了解も頂けた事だし、宿に向かうとしますかね。


柔らかい、彼女を抱き上げてゆっくりと宿へと向かう。

眼は常に繋げたままにしておく。


「ん。 」

彼女がオレの頬に手を伸ばして、小さく撫でる。

くすぐったくもあるが、優しい手だ。疲れがゆっくりと落ちそうだが、

気を緩めたリ落とすことは無い。

彼女の左手にある指輪がその意識を強くする。


ただただ、ゆっくりと路を歩く。

いい加減、お腹も空いて来た。


沈んで行く陽の光に微笑みを返す様に、

二人の持つ指輪が、きらめきを増していく。













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