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CRON:     Kiss∞Love;Observer

――安らかに、愛が満ちますように。

よく晴れた昼下がり、日々暑くなっていくせいか、

家の窓や小さな扉を少しだけ開けて風通しをよくしているリビング、室内の中で、

比較的広めの場所においてあるモニターから何やら映像と音が出ている。


モニターには赤いスーツを着た男とグレーのスーツを着てマイクを持っている女性が一人。

二人は対面し、グレーのスーツを着ている女性の方が、

最近あったであろう骨董品窃盗団の中の数人が捕まったことについて、

赤いスーツを着ている男に少しずつ質問や疑問を問いかけていた。


赤いスーツを着ている女性は少しだけ窃盗団の話にムッとしながらも彼に問う。

「今回の骨董品窃盗団の件について、

氏はどう思われますか ?

宝石で作られた剣や書物、

後は女性用のし、下着などを、

盗もうとしていた三人が捕縛されたようですが……。」


問いをかけられた赤いスーツの男は、ニヤリとした表情のままゆっくりと、

グレーのスーツを着ている女性の近くへと歩いてきて、口を開いて小さな声で言葉を紡ぐ。


「おやおや、お嬢さんカワイイねえ。照れてるところ悪いんだけど、話に入る前に指摘しておこう。

お嬢さん、汗を掻きやすいのかな ? さっきからメモに眼を通す度、身体が少し前かがみになるけど、

その時に開いているボタンの隙間から水玉のキュートな下着が透けて見えるよ、気を付けた方が良い。」


グレーのスーツを着た女性は赤いスーツの男を少しだけ睨みながら直ぐに、

内部につけてある小型マイクがずれたと言って少しの間後ろを向いて、

何事もなかったかのように振り向いた。

その時には、いくつか開けてあったボタンがきっちりと留められていて。


その様子を確認した赤いスーツの男は、さて、では話そうかなと軽く呟いた後、

女性の向けるマイクに向かって言葉を飛ばしていく。

「まず、私の気になるところは、窃盗団が何を盗んだが以前に、

窃盗団は何を考えてその品々を窃盗したのかという部分だ。


先日の窃盗団の話は私も耳に入れているし記事も読んだ。

だがね、あんなのどかな場所にある骨董品店で何故盗みに入る必要があったのか。

あの骨董品店は店主の厚意によって骨董品の無料展示や、

興味のある人間への全品物の貸し出しを行っている。

大胆な窃盗という目的を取る前に貸し出した上で、

持ち帰り返さない方法を取る方が楽ではないのかと、

考える人間は私以外に多々いると思うんだけどね ?」


そう話した後に少し息をついて、また口を開いた赤いスーツの男は、

先ほどよりも幾分眼光を鋭くして語り問う。

「今回の窃盗団の件について、私はもっと深いところが絡んでいるんじゃないかと思っているんだよ。

例えば、窃盗と言う事実を表に印象付けて裏で別の行動するとか、

窃盗品が目的ではなく、他に大事な事を隠してある。 とかね ? 」

そう話した後、赤いスーツの男はグレーのスーツの女性の胸元を観て、

ほほ笑みながら、「例えば、宝石や刀剣なんかはカモフラージュで、

セクシーな書物や下着が本命だったのかもしれない。 みたいなね。 」


その言葉にグレーのスーツを着た女性は怪訝な顔をして、

「目的や個人の感情はともかく、犯罪は犯罪です。

悪いことに変わりはないのでは…… ?」

うんうんと頷きながらグレーのスーツの女性を観る赤いスーツの男の眼は、

笑っているようで鋭く光っていて、だが、と小さく零した後に、少しだけ声を張り語る。

「お嬢さんの抱く気持ちももっともだ!HAHA~。

けれどね、私から言わせてもらうと正義や善悪など、

進んだ路の先に名前が付いただけに過ぎないのさ。 」


そこまでさらりと言葉にしたところで、

グレーのスーツの女性が時計を気にして、

談義の終了を告げて、赤いスーツの男も、頭にピースを添えて終わりの挨拶を口にした。

以上、今回のゲストはアーティン氏でしたと追加で告げられて。

モニターの映像が切り替わる。白い雲と青空、大海原と船の映像が映し出されている。


どうやら次のモニターのスケジュールは各地の気候紹介のようだ。

ピピピと音が小さく響いてモニターの電源が落ちていく。

電源が落ちる前、モニターの上部に記録完了の文字が映っていた。



 リビングを抜け、いくつも有る部屋から、さらに遠く離れた黒い扉の部屋の中で。

ベッドに倒れ込み触れあう男女二人の姿があった。

お互いに衣服は身に着けておらず、何度もくちびるを混じらせながら柔らかいキスを繰り返す。

くちびるとくちびるの重なり弾むような音が沈んで行くよりも早く、

金色の髪をした男は片方の指を絡ませている女を抱きしめながらもう一つの手で頭を撫でて、

優しく笑う。あまり力の入っていない腕で男の背中に手を回した女の身体には汗が滲んでいて、

小さく呼吸しながらも男の首筋にくちびるを這わす。

そして同じように汗をかいている男の首筋を愛おしそうに舌で撫でながら、

頭を撫でられている今の状態に恍惚の表情を浮かべている。


彼らの寝具の少し後ろにある服掛けには、

赤いスーツとグレーのスーツが一着ずつかけられていて、

寝具の直ぐ下には、黒のボクサーに本のシルエットが書いてあるモノと、

水色に統一された水玉の下着が綺麗に畳まれて置かれていた。

その横には男の使用している連絡にも使える電子端末と、

女の持ち物である電子端末が揃って置かれていて。


彼らの交ざり合いは獣というには優しく、情のこもったモノであるようで。

幾度と無く揺れ流れ弾む身体の後、

女が男の肌の温かさを噛みしめる様にはーっと息を吐き眼を閉じて、

より一層自らの、熱を相手に伝える様に身体を押し付けるような仕草を取りながら、

ゆっくりと深くなるかもしれない微睡みの底へと落ちていった。

そんな女の様子を男は愛おしそうに感じているようで、

抱いている背中に回している手のひらでゆっくりと女の背中を優しくトントンと叩きながら、

もう片方空いている手で女の頭を優しく撫でながら、男自身もゆっくりと微睡みの底へと落ちていく。


彼らがゆるやかな眠りの中を漂っている時、

静かに振動を鳴らす電子端末が一つ。


映し出された空間展開型可視電子パネルには、

【観測者:C・ルヴァイン】の文字が絶えず表示されていた。





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