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一番最初の記憶は恐らく3歳の頃。
両親がリビングで食器を投げ合いながら大声で喧嘩をしている姿を第三者の目線で見つめる自分。
そんな私に父親は菓子を差し出しながら宥めるような言葉を掛けてくれたのを覚えている。
その言葉をはっきりとは思い出せないが、差し出されたものと同様にそれには確かに愛情が在ったのだと思う。
愛は幽霊と似て存在が不確かで透明だ。
その理解出来なかった愛を希求していたのだと、私は28歳になる直前に知ることになる。
愛情に飢えていた私が無限にも感じる愛情を注いでくれる人に出会ったことで、少しずつではあるが変わり始めている。
今はその通過点に過ぎない。
自分というものを認知する為に、私はスマートフォンのキーボードを打とうと思う。
――ここまで綴っただけでも、私の心は不思議とこのタイプ音と同じ様に軽快になっている。