真っ白い、ねこ君。
町の外れに、一匹のねこ君が住んでいました
ねこ君は全身が真っ白な毛で覆われた、どこにでもいるような猫でした
「真っ白なんてつまんないや、誰か色をくれないかなあ」
「ボクはねこ君はそのままでいいと思うけど…‥」
その隣で、友達の黒猫くんは言いました
「いや!ぼくは自分の色を探しに行くんだい!」
ねこ君は、じぶんの体にあった色を探すために公園に出かけていきました―
「ねえ、君の色をおくれよ」
真っ白いねこ君は手を合わせて、草村の中にいるバッタくんに向かって頭を下げました
「ええ?なんでだい?」
バッタは驚いてぴょんぴょんぴょんぴょん跳ね上がりました
「君の緑色は、草村みたいな色で目に優しいから――ぼくにその緑色をくれないかい?」
「いやだよ、僕からこの色をとったら、僕が他の動物に食べられちゃうじゃないか」
バッタはねこに背を向けて、ぴょんぴょんと逃げてしまいました
「ちぇーっ」
ねこはぷんすか怒りながら、公園から飛び出しました―
―――
お日様がまぶしい昼下がりに、ねこ君は畑の近くへ行きました―
「ねえ、君の色をぼくにくれないかい?」
ねこ君は、畑で眠っていた真っ赤なトマトちゃんに頭を下げました
「ええ、なんでなのよ?」
トマトちゃんは真っ赤な顔を更に真っ赤にさせて困ってしまいました
「君の真っ赤な色は、お日様みたいで明るいから、その色をぼくにくれないかい?」
「イヤよ、私が赤くないとお客さんに食べてもらえなくなっちゃうじゃない、帰った帰った!」
トマトちゃんに言われた、ねこ君は頬を膨らませて畑から飛び出しました――
―
おやつの時間になる頃、ねこ君は青く見える川くんに向かって頭を下げていました――
「ねえ、君の色をくれないかい?」
「ええーっ?!なっなっなっ!なんでーっ?」
川くんは驚きながら、水しぶきをちゃぷちゃぷ
「君の青い色を見ているとなんだか落ち着くから、ねえ……君の色をくれないかなあ?」
「ええ?まあ……いいけど」
川くんの言葉に、ねこ君は喜んで飛び上がりました
「やったあーっ!」
ねこ君は川くんの色をもらうと、鼻歌まじりに町の外れへと戻っていきました
――
夕日が沈んでいく町の外れに戻ってきたねこ君は、早速自分の姿を黒猫くんに見せてあげました
「ねえ黒猫くん、見てみて」
「ねこ君、川の透明な色をもらっても……ねこ君が見えなくなっちゃっただけだよ」
黒猫くんは眠たげに、どこにいるかわからないねこ君に言いました
「えっ!」
ねこ君は驚いて自分の手を見つめました…確かに、ねこ君の体はねこ君にも見えません
「やっぱり…ぼく、自分の色がいいやぁ…‥」
ねこ君は泣きそうな声で、黒猫くんにすがりました
「…‥川くんに謝って、白い色を返してもらえばいいんじゃない?」
呆れたような声で、黒猫くんはそっぽを向いてしまいました
「はあい……‥」
ねこ君は結局、自分の白い色を返してもらうために川くんの所までとぼとぼと歩いていきましたとさ
おしまい
作者「実際にある絵本てか話で似たようなのが出てないか心配だなあ……‥」
黒猫くん「自分の作品の色は、自分の色だと思いたいよね」
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