カタカタ
ふと冒頭部分が浮かんできたのでそこからない想像力をフルに使って久しぶりに書きました。
友人がモデルだったりするとかしないとか。
あ、もちろん友人が高校生作家な訳じゃないですけどねww
カタカタカタカタ…
誰も居ない薄暗い部屋に響く寂しい音。
真夜中にも関わらず、電気は一切付けていなかった。
「なんで、こんなことになっちゃったんだよぉ…」
呟きながらも手は止まらない。
女の子と女性の中間、何とも言えない色気とあどけなさが残る少女がぼんやりと光を放つディスプレイを見つめながら一心不乱に文を打ち込んでいる。
休みなく動く手とは裏腹に少女ははどこか寂しげな、それでいて泣きそうな表情を浮かべていた。
「私だって…こんなつもりはなかったのに…。」
少女はまた呟くが、やはり手は止まらない。
そしてそのまま、夜が明けるまでディスプレイの前から離れることはなかった。
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「…ん…。」
けたましく鳴り響く目覚まし時計の音とともに少女はもぞもぞと動く。
目を閉じたまま目覚まし時計を止めるという偉業を成し遂げてからうめき声を上げながら伸びをする。そしてやっとつぶらな瞳を開いた。
「あー、朝か。」
寝起きのせいで回らない舌で呟く。
のそのそと重たい動きでベットから降り壁に掛けてあった制服に着替える。
少女は高校生であった。
着替えたらいつものようにリビングで朝食をとり、学校へ向かう。
愛用の自転車は今日も元気に主を乗せ、走っていく。少女は気持ちよさそうな顔をして伸ばしっぱなしの長い髪を風になびかせていた。
HR開始時間より少し余裕を持って入った教室はある話題で持ちきりだった。
「おはよー…」
「あ、皐月っ ねぇ、聞いた!?」
少女…皐月が近くのグループに挨拶するとすぐさまその話題を振られた。
なんとなく話題の内容を察していた皐月は顔が引きつりそうになるのをこらえて答える。
「え、何の事??」
スラスラと出てくる頬笑みと言葉に自分でも少々うんざりする。
「やっぱり知らないんだー!皐月ちょっと遅れてるんじゃない?」
皐月が話しかけた女の子は皐月の対応に何とも思わないらしくニヤニヤしながら話を続けてくる。
からかうような口調に少しイラッとした皐月は先を促す。
「で、何の話?」
言いながら手近な席に座る。
ぞろぞろと教室に生徒が集まりだしているものの、HRの開始まではまだ数分余裕があった。
「だからー、如月吹雪の新巻の話だってば!そろそろ新しいの出るんだって!」
満面の笑みで話す友達に皐月は内心やっぱり、と顔をしかめた。
如月吹雪とは最近メキメキと人気をあげている実力派の小説家である。
甘酸っぱい恋愛物とポンポンと会話が進むコメディを混ぜたような小説を書き、中高生を主にファンが多い。
プロフィールの詳細は後悔されてないが、現役高校生の女の子だとの噂が濃厚である。そして…
「次どんな小説かな?私は俺様系男子が出てくるの希望なんだけど!」
「どうだろうねぇ…案外ヘタレ男子と王女様系女子かもよー?」
そして、ここにいる皐月こそがまさに今話題になっている小説家、如月吹雪だったりする。
因みに新巻の内容は今皐月が言ったようにヘタレ男子×王女様系女子である。
ぽろっと言ってしまっているが。
「それはちょっと無くない?」
なんてケラケラと友達が笑いだす。と、同時にHR開始のチャイムが鳴る。
皐月も慌てて自分の席に座り、毎日変わり映えのない担任の話を聞き流す。
HRが終わり、授業が始まってからもまともに聞いてはいなかった。
と、言うのも皐月が先ほどから一生懸命書いているものを見れば一目瞭然である。
真面目にノートを取ってるかと思いきや、書きこんでいる紙はルーズリーフ。
小説をガシガシと書きなぐっているのであった。
これは皐月の癖というか、小説を書く方法であり、ルーズリーフに書いたものを修正しながらパソコンに打ちこんでいくので授業中は大事な小説タイムだった。
いつもなら授業中は小説を書くだけでなんの面白みもないのだが、今日は途中ではた…と小説を書く手が止まった。
本日最後の授業であるので、疲れもあるが手を止めるだけではなく頬杖をついてボーっとし始めた。
皐月は小説を書き始めてから、人気作家に”なってしまった”理由を思い返していた。
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少し長くなってしまったので2つに分けて投稿させていただきます。
楽しんでいただければなによりですー