第一話:運命の日
葉芽吹くのどかな春の日。
窮屈な受験戦争の日々から解放され、晴れて高校一年生になった俺――神斜大地は、教室の隅の席から穏やかな窓の外を眺めていた。
「……ふぁああ」
この千城ヶ崎高等学校に来て、はや一ヶ月が過ぎた。
特に目立った長所のない俺は、普通に友達を何人か作り、勉強もそこそこに、これといった問題も起こさずにそれなりにやってこれている。
何事もないのはいいことだ。中には、眩暈がするような驚天動地の出来事を心から望んでいる無責任な友人もいるが、アレは単にバカなだけなので気にしない。なんだかんだ言っても平和が一番に決まってる。
きーんこーんかーんこーん。
これと言って特別な出来事もなく、放課後になった。
この学校は部活動に力を入れているらしく、生徒たちが授業を受ける教室が含まれた普通教室棟と向かい合う形で、部活棟なるものが存在するのだが、これが前者より大きいのだからなんとも違和感がある。しかも噂では地下まであるとか。
「……部活かぁ」
前述したように、普通人代表的な俺は得意なスポーツなんて持ち合わせちゃいないし、第一疲れるのは嫌いなので運動部は真っ向からパスである。そんなわけで入るとすれば文化部なんだが、配られた部活一覧表に目を通してもピンとくるものがなかったので未だに帰宅部なのだ。
「別に帰宅部でもいいんだけどな……」
しかし、折角の高校生活を勉強だけで過ごすのも味気ないと言えば味気ない。俺も一応高校生男子の端くれなわけで、素敵な出会いが欲しくないかと聞かれれば、……そりゃあ、欲しいさ、うん。
「…ちょっと、のぞいて見るか」
その、見るだけならタダだし。
そう考えて、俺はやや年季の入った厳かな建物へ足を踏み入れた。
――あぁ。思えばこのちょっとした気まぐれが、つつましくも平穏な日々が悲劇……いや悪夢へと急転直下する第一歩だったのだ。できることなら、いくら犠牲を払ってでも時間の針を戻したい、と最初の内は心から願っていた。もちろんそんなことは不可能で、自分の携帯の時刻表示を一時間戻してみても、なんの意味もなさないことは充分承知してるが、そう願わずにはいられなかった。
それ程までに――彼女との出会いは、衝撃的だった。
部活棟の中は、基本的に普通教室棟と同じ構造になっている。ただ、1Aとか1Bとか書かれている表札が、文芸部とか将棋部とかに変わっていた。
「へえ……思ったより」
そう。想像していたよりも、かなり部活の種類が豊富なのだ。しかも、どの部室にも人のいる気配がする。上の方から響いてくるトランペットやホルンの音は、吹奏楽部のものだろう。……ただ、演奏の合間合間に聞こえてくる、ウォオオン、という獣の遠吠えじみた怒声が混じるのが凄く気になる。
それから、一通り部活棟を周ってみたものの、やはりこれと言ってピンとくるものは見つからなかった。まぁ、元々そこまで積極的じゃなかったし、別にいいか。そもそも、自分のやりたいことがわかっていない俺が、部活に入るなんていうのもおこがましかったのかも知れない。
「…帰る、か」
もう日も暮れたし、さすがに疲れた。
と。一階に降りたところで、さらに下へと続く階段を発見した。
「あれ…地下なんてあったんだ、ここ」
普通教室棟にはそんなものなかったから、気づかなかった。倉庫でもあるのだろうか。
「………」
……なんだか、無性に気になる。家の物置から宝物の地図めいた物を発見した時のような、不思議な高揚感。
そう思った時、既に俺の足は持ち主の意思とは関係なく階段を降り始めていた。
地下は、構造上は地上とほとんど変わらなかった。だが、日の光が差し込まないというだけでこれだけ違うのか、と感心してしまうくらい不気味極まりない。どこからか吹いてくる風は妙に生暖かくて気持ち悪い。明かりは、等間隔に設置されたむき出しの頼りない豆電球だけ。
だが、様変わりしたのは外気や雰囲気だけではなかった。
「何々……倹約部、測量部、それに……堕落部?」
……コメントのしようがない部活が、さも当然のように整然と並んでいる。こんな怪しげな部活、配布された部活紹介のプリントには載っていなかったはずだ。いや、載ってたら載ってたで問題あるような気もするが。
「さて……どうしたもんか…?」
地下の方が色々な意味で興味をそそられる人もいるだろう。が、俺はあくまで平和主義者なんで、数秒考えてから、さっさと立ち去ろう、と決断した。なんていうか、一度入ってしまったら帰れなくなりそうな予感がする。
そんな訳で一秒でも早く脱出しようと、くるりと踵を返し、
コツ、コツ、コツ、コツ。
階段から、重々しい足音が一つ響いてきた。この地下に部室を構える酔狂な部活の一員さんなんだろうか。だとするといろいろと面倒だ。頭はそう理解しているのに――その足音だけに、全ての意識を集中している自分がいた。
果たして、降りてきたのは真っ黒な服に身を包んだ一人の男子。体格からして恐らく上級生だろう。できれば俺のことなんて無視して歩き去って欲しかったんだが、
「―――ふむ」
黒服の男子は、そ知らぬ顔を装う俺の前でピタリと停止した。
薄暗いので判然としないが、どうやら睨まれているらしい。中途半端な明かりのせいで、男子の彫りの深い顔の明と暗とがハッキリと区切られ、端的に言ってしまえば非常にコワい。
「……な、なんすか?」
一応敬語めいたものを使っておく。男子は答えず、代わりに何か深いところを覗くような鋭利な視線で俺を上から下までじっくりと凝視した後、
「立ち話も無粋だからな。入るがいい」
有無を言わせぬ威圧感のある太い声で、唐突にそう告げた。
「――はい?」
男子は、俺の疑問符をあっさり無視して横を通り抜け、俺の背にあった木製のドアを当然のように開いた。
……不安が的中してしまった。このまま言われるがままに従っていてはなし崩し的に入部させられてしまうようなヤな予感がする。現に、危険度を示す本能シグナルは最大音量でウーウー唸っている。が、
「どうした?」
「あ……いえ」
まさに俺が逃げようとする絶妙なタイミングで呼び掛けられ、思わず返事をしてしまった。……まぁ、少し話を聞くくらいなら大丈夫だろう。ヤバそうになったら用事があるとか適当に言い含めて退散すればいいし。
――と、そういえばここは一体何部なんだろうか。顔を上げ、表札を確認する。
「――……へ?」
書かれていたのは、『黙祷部』という無骨な三文字。とてもじゃないが俺なんかの発想力じゃ活動内容が想像できない謎めいたネーミングである。
中からは鼻歌らしきものが聞こえる。でたらめのようで、何かしらの統一性を思わせる不思議な旋律。
「……お、おじゃましまーす」
……それらの謎要素に、不覚にも少しだけ興味を惹かれてしまった。
具体的な理由なんて説明できない。ただ――そう、ただ、こんなネガティブそうな部活の名付け親を見たくなった。それだけだ。俺の思い出したくない過去その他諸々とは一切関係ない。
と、男子は一度くるりと振り返って、
「ああ。自己紹介が遅れたな。俺は玲人。朽木玲人だ。よろしくな」
芝居がかった口調で勝手に名乗って、うやうやしく一礼してから俺を部室に招き入れた。
―――コレは、人間じゃない。
初めに浮かんだ感想は、そんな正解だった。
「待たせたな、還界。そちらの首尾はどうだ?」
「全然ダメ。どれもこれもミミズから生まれたみたいな貧弱野郎ばっかりだわ」
部屋の中には、長方形のテーブルが一つ。長い方の辺には、三人くらいが並べそうな大きさだ。
そして、彼女は、短い方の辺に――つまり机に直接腰掛け、こちらに背を向けたまま答えた。
当然、顔が見えない。だが、前を向いていた所で顔なんて目に入らなかっただろう。
彼女のややウェーブのかかった肩を少し過ぎるぐらいの長さの繊細な長髪。部屋の中心にある蛍光灯の光を幻想的に反射しながら、彼女が首を動かす度に、意思を持っているように踊っている。粉々に砕いたガラスを散りばめているような錯覚を抱かせる彼女の髪は――限りなく銀色に近い、白髪だった。
それに、言葉を失った。
浮かんだ感情は、驚愕でも呆然でもなく、――純粋な、感動。思わず、そのまま
「―――おっと」
……少し、危ない所だった。よし、まずは落ち着こう、俺。来客を無視して話を続ける、彼女の話に耳を傾ける。
「そっちはどうなの? 口達者な貴方の事だから、五人や十人は軽く捕まえてこれたんでしょうね?」
あからさまに人を上から見下ろしている口調。しかし、朽木は別に気分を害した様子もなく、
「無論だ。だが一度に大勢で詰め掛けるにはここは少々手狭なのでな。一番見込みがありそうな男を連れてきた」
自信たっぷりに淡々と告げた。
ふーん、でも朽木以外に俺は人影を見なかったんだが。
見込みがありそうな男とは、一体誰のことなんだろうか?
「……へぇ。貴方がそこまで言うなら本物なんでしょうね。ちょっと興味あるわ」
ふわり。白髪の女子が、髪をなびかせながら振り向いた。俺と向き合う。長髪とは対照的に、いや髪の黒さを全て吸い込んだような深い闇色の両眼が、真っ直ぐに俺の瞳を射抜く。
「あ、えっと……ども」
きゅっと引き締まった小さな唇、攻撃的な印象を与えるやや尖った瞳、凛とした眉。端整な顔立ちは、西洋人形を思わせた。……要するに、めっさカワイイ。いや、これは綺麗の領域か。
「…ふぅん。肝は座ってるみたいね。だけど、緩み切った顔が減点対象ね」
どうやら、俺は試されていたらしい。女子の睨みから目を逸らさなかった(実際には見とれていただけなんだが)のはよかったが、鼻の下を伸ばしていたのはダメだった、ってことか。……いや、不意打ちだったしなぁ。
「まぁそう言うな。なんにせよ、部員が増える分には損はあるまい?」
得意満面に朽木がなだめる。……や、ちょっとタンマ。誰が入るんだ? と念のため聞いておきたい。
「あのー……それって、もしかして俺のコト?」
恐る恐る聞くと、朽木は一瞬表情を変えずに硬直して、
「――無論だ。第一、この部室に足を踏み入れた時点でお前は既に立派に黙祷部の一員だ」
確定事項のように答えた。んなアホな。
「それじゃ、まずは採寸からかしら?」
俺を無視して、話は勝手に進んで行く。
「なぁ、いやだから俺まだ入ると決めた訳じゃ」
「うむ。――原則として、黙祷部として行動している間は規定の服を着る決まりだ」
聞いてもないのに説明してくれる親切な朽木。お前、ちょっと後で体育館裏来いやコラ。
「小さいことでガタガタ騒ぐんじゃありません。それでも『棒付き』なの?」
「はぁ? ……って、おい!」
サラッと臆面もなく下ネタに走りやがったぞ、こいつ。
「……仕方ないわね。ほら、これ貸してあげるから納得しなさい」
殺気立つ俺に哀れみのため息を投げかけた白髪の女子は、読んでいた分厚い本を手渡してきた。表紙からすると、これは……聖書のようだ―――
“「あ、姉貴……?」
気丈を装ったシオリの声は、しかし僅かに震えている。
「ふふふ、シオリったらそんなに怯えちゃって。かわいいなぁ」
カナは後ろからおぶさるような形でシオリを抱き締め、首筋にふぅっ、と息を吹きかける。
「ふわぁ……?」
途端、酔ったようにシオリの目の焦点がぼやけ、体の力が抜ける。
「シオリ…私が、優しくしてあげるね?」
カナはふわりと微笑むと、そのまま妹であるシオリのパジャマを―――“
―――見なかった、ことにしよう。
無言で聖書だと思っていた禁断の本を返した。
「あら、お気に召さなかった? なら、こっちの更にハードな海外モノを――」
「いや、謹んで遠慮しときます」
というか、初対面の人間にこんなのを薦めるあなたは一体何者ですか?
「そう。面白いのに」
……それから十分ほど、クーラーの室外機の音のように平坦な口調の朽木先輩の説明を聞いたところによると、どうやらこの部活の主目的は、部活間で生じるトラブルの仲裁を図ることにあるらしかった。……それはいいんだが、彼の解説の中に黙祷のもの字も出てこなかったのは何故だろうか。
「じゃあ、ボランティアみたいなモンですか」
なるほど、だから修道服モドキを着ているのか。うん、そうに違いない。そこ、ムリヤリ納得しようと試みてるだけだから突っ込まないよーに。なにせ、ここには意味のわからないものが多すぎるから、少しでも理解したフリをしておかないと現実感を喪失しかねない気がするのだ。
「違うわ」
と、朽木先輩が語っている間、終始淡々と鼻歌を歌いながら偽聖書を読み耽っていたカエラさんがやけに強く否定した。俺が聞き返すと、
「生徒会及び校長に部活としての存在を承認された部活動には、例外なく『序列』が設定される。『序列』とは即ち各部活動が形骸化するのを阻止する為の制度であり、『序列』が高ければ高いほど優遇される傾向にある。『序列』の高さは活動の頻度・成績によって定められる」
再び朽木先輩のわざとやってるとしか思えない分かり難い解説が答えてくれた。ふむふむ、サッパリわからん。そもそも序列とやらが具体的になんなのかを最初に言うべきじゃないのか? もっと聞き手の都合も考えてほしい。
「……要するに、活動すればする程『序列』――つまりランキングが上がって、予算や部室や備品のグレードも上がる、ってこと。わかった?」
「ええ、まぁ」
この女子、意外と説明が上手かった。というか、最初からそう言ってくれると助かるんだが。
「それじゃあ、あの、えーっと…」
む。そういえば、まだ名前聞いてなかったな。
「還界或華」
「は?」
えっと、文脈からすると、名乗られたんだよな?
「……か・え・ら・あ・る・かよ。還界或華。一年C組よ」
「カエラアルカ……ねぇ」
というか、同級生だったのか。落ち着いた雰囲気からして、絶対先輩だと思っていた。
「ちなみに玲人は三年……G組だったかしら?」
「うむ」
小さく首肯する朽木先輩。まぁ、この人はむしろ教師と名乗られても疑わないくらいの威風堂々とした顔だから驚かない。むしろカエラさんが彼を名前で呼んでいることの方がインパクトある。……えーっと、なんの話してたんだっけ。
「それでカエラ…だっけ? 聞いた感じじゃ黙祷部はボランティアっぽいけど、そうじゃないのか?」
「勿論よ」
いや、何か誇らしげなのが気になるんだが。そこは威張るとこじゃないだろ。
「私の目的は『序列』の頂点。そこに辿り着いた部活の部長は、生徒会長とほぼ同等、あるいはそれ以上の権限を与えられるのよ。だから、表面上見栄えのいい慈善事業なんて偽善をやってるのよ」
「………」
身もフタもない台詞に、目を逸らす朽木先輩、絶句する俺。……なんとまぁ、自分を偽らないヤツだな、コイツ。
「それと、貴方」
「ん?」
「カエラ、ではなく還界『さん』、と呼びなさい。格上の人間を敬うのは人としての礼儀でしょう?」
は? いや、俺とお前同級生だし。そもそも、偽聖書に目を落としたままこっちを見もしないで話すお前の方がよっぽど礼儀知らずだろ。人の目を見て話せ。
「年上ではありません。格が上だ、と言ってるのよ」
「……なぁ、殴っていいか?」
いくら温和な俺でも、ここまで露骨にケンカ売られちゃあさすがに腹が立つってもんだ。が、
「やってみれば? 出来るならね」
さらりと受け流される。……こいつ、女だから殴られないだろう、って腹括ってる訳じゃない。実際に戦って俺に勝つ自信が本当にあるようだ。
「どうしたの? 口だけ?」
背中から満ち溢れる自信と威圧感。俺だって、伊達に十六年間男をやってたわけじゃないから、少しはわかる。確かにこいつは強い。
―――が、その方が壊しがいがあるってもんだ。
「――いや、やめとく。悪かったな、還界さん」
……深呼吸を一つ。それだけで、なんとか動悸は治まってくれた。
――全く。俺は、何度同じ過ちを繰り返しそうとしてるんだ。
「……そう。まぁいいわ」
どこか残念そうに呟いた還界さんは、ぱたん、と本を閉じた。
「それじゃ、貴方の最初の仕事よ。来客の対応をなさい」
「はい?」
還界さんの不可解な台詞と同時に、
「あのー……どなたかいらっしゃいませんかー?」
こんこん、と控えめなノックと、いかにも申し訳なさそうな間延びした声が聞こえてきた。
「……えーっと」
つまり、俺が出ろってことか? というか還界さんはノック音がする前に来客に気づいていたらしい。……単純に耳がいいから、って訳でもなさそうだ。
「……」
とはいえ、俺はまだ正式な部員じゃない。どうしたもんか、と朽木先輩に視線を送ると、満足げに頷かれた。……まぁ、いいか。
「うーい」
ドアを開けると、その向こうの人影がビクッと揺れた。
「あ、あの……も、黙祷部の方ですよね?」
扉の向こうにいたのは、体操着姿の女子だった。ショートカットの下にある、くりくりっとした大きな瞳が不安の色に濡れている。肩は小刻みに震えていて、恐縮しているのがこっちが心配してあげたくなるくらいよくわかる。そりゃそうだろう。誰だってこんな地下にある怪しげな部活を訪ねるとなれば用心する。
「違います」
だが、残念ながら俺は正式にはまだ部員じゃないので、正直に答えておく。
「えっ、えぇっ!?」
予想外の回答に驚く女子。……あわてふためく仕草が、小動物みたいでちょっと面白い。
「あ、あの、じゃ……も、黙祷部の方、いらっしゃいますか?」
「いますけど……」
振り返るが、二人とも無反応。
「……引きこもってます」
「え?」
「……んじゃ、そゆことで」
場の流れに沿って、ゆっくりと扉を閉めていく。果たして、
「あ……ちょ、ちょっと待って下さいっ!!」
ずがだんっ! ドアの隙間に足が挟まれ、同時に俺の脳天に強烈な空手チョップが放たれた。……なんで?
「……成る程。つまり、校庭にバトミントン部が練習の出来るスペースが欲しい、と」
「そ、そうなんです……」
やや熱を持った額を押さえながら、約五分ほど謝りに謝ってくれた女子生徒(意外にも二年生らしい)の話を総合するとこうなる。彼女が話している間中、朽木先輩は興味深い観察対象を見るような目つきで来客を凝視し、還界さんに至っては一度も偽聖書から目を離すことがなかった。
「今の校庭は、サッカー部と野球部に占領されちゃってて……私たちみたいな少数人数の部活が活動できる場所がないんです……」
なんでも、体育館の方は『序列』ランキング上位(つまり成績がいいってことだろう)の部活で占められていてどうしようもないとか。朽木先輩曰く、
「サッカー部はともかく、野球部は三年前に新設された部活だからな。将来有望ではあるが、まだ具体的な結果は一つしか残していない」
具体的な結果? 地方大会に優勝して県大会ベスト16とかか?
「県大会準優勝だ」
「え」
それは……かなり凄いんじゃないか?
だが、還界さんはおもむろに本を閉じると、
「その程度なら問題ないわ。早速『対部戦』と行きましょう」
朝飯前よ、と言わんばかりに不敵に笑うと、バトミントン部の女子と目を合わせることなく部室を出てしまった。
「ここは俺が引き受けた。早々に還界を追え」
「はぁ……」
とりあえず、何かとんでもないことが起きるような気がするので、俺がストッパーとしてついてやることにしよう。……俺なんかじゃ、津波に砂の城壁で対抗するぐらいの抵抗しかできないだろうけど。
初めての投稿で、心臓バックバクです。(笑)
えーっと、とりあえず……よろしくお願いします、まる。




