コラボ外伝『夜の端にて、二匹の猫は語る』
【ばあちゃん時々灰色の町、猫は本の隙間で鳴く。】
https://note.com/roa_anakowa/n/n90a9a4ec011c?magazine_key=me06143565516&s=09
Roaさんとのコラボです!
夜の静けさが、縁側の障子を薄く染めていた。
雨上がりの庭には、紫陽花がわずかに濡れ、その葉を伝って雫がぽとりと落ちる。
蝉の声も止んだ夏の夜、世界はまるで、時間すら眠ったかのように沈黙していた。
縁側に、小さな身体がふたつ並んでいる。
一匹は、灰色の毛並みと碧い瞳を持つ猫。
もう一匹は、漆黒の毛並みに金の瞳を持つ猫だった。
「にゃあ(あんた、変わった波動をしてるね)」
「にゃあ(そっちこそ、普通じゃない霊圧してんじゃん)」
二匹の猫は、見つめ合い、しばしの沈黙の後、同時にふっと尻尾を揺らした。
初対面にもかかわらず、まるで旧知のような空気がそこにあった。
縁側の隅に置かれた小さな湯呑みからは、仄かに湯気が上がっている。
黒猫――ノクスが顔を近づけ、ふんと鼻を鳴らした。
「にゃあ(コーヒーか……珍しい趣味だ)」
「にゃあ(いい香りだろう? 私の孫はまだ子供の味しか知らなくてねぇ)」
「にゃあ(……あんた、死んでるよな)」
「にゃあ(そうだよ。不思議なもんだね。気づいたら猫の身体で、またこの家に戻ってきてた)」
ノクスは小さく目を細める。
「にゃあ(この世に残った想いってやつか……ま、俺は詳しくねえけど)」
「にゃあ(けれど、後悔ばかりじゃないんだ。私には、見守りたい子がいるからね)」
「にゃあ(ふぅん……)」
ふたりの間に、ひとしきり風が通る。
風鈴が、夜の中で柔らかく鳴った。
「にゃあ(お前、誰かを守る為にここにいるのか?)」
「にゃあ(そうとも言えるし、そうじゃないとも言えるねぇ。あんたは?)」
「にゃあ(……守るもんがいねえ時は、適当に生きてただけだったさ)」
「にゃあ(けど、今は?)」
「にゃあ(……今は……ちょっとばかし、めんどくせえ奴らの面倒見てる)」
灰色の猫が、喉を鳴らして笑うように目を細めた。
「にゃあ(めんどくさいほど、愛おしいもんだよ。私の孫もそうさ)」
「にゃあ(あんた、俺と似てるな)」
「にゃあ(じゃあ、また来ると良いよ。夜の端っこ、ここでなら話せる)」
ノクスはふっと笑うように、長い尻尾をくゆらせた。
「にゃあ(……気が向いたらな)」
そして――
猫は一匹、夜の闇へと音もなく消えていった。
灰色の猫は、それを静かに見送ると、小さく呟いた。
「にゃあ……(変わった猫だねぇ……でも、いい子だ)」
縁側の明かりが消える。
また、静かな夜が戻った。
けれどその夜は、どこかほんの少しだけあたたかくて、
まるでコーヒーの香りが夜空を漂っているようだった。
夜の端っこ、それは、二つの夜、二つの物語が交差する不思議な刻。
コラボでした!
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