お風呂は親子で入るものだが?レンジサイド
「前回のあらすじは!!年頃の子供のお風呂に乱入する不審者が出たっす」
「不審者ではありません!!鬼百合シユ!あなた達の母!!」
ー 鬼百合家 お風呂 夜 ー
俺の母を名乗るシユさんの襲来、正直納得できないところもある。
でも俺が諦めたらすべてが終わる、彼女はまだ俺達に危害を加えていない。
黒雪ともリリーとも真正面からぶつかって和解で来たし。
相変わらず機械の体で湯船に浸かるのは禁止。
シャワーで体の汚れを落としていく。
これがハボタンの日常・・・・
そうお風呂のフタがペラリと捲れて腕が生えてくる・・・っておかしいだろ!
「ぎゃああああああ!悪霊退散!!悪霊退散!!」
お祓いでよく使う紙の付いた棒を想像で振り回す!大幣だったか?
相手が幽霊ならこっちもイメージのアレで十分なはずだ!!
「いいいい!足も生えてきた!!しかも体柔らかっ!!」
足をピンと伸ばしたかと思えばバッっと広げる動作もしている。
最近の幽霊も歌って踊れないとやっていけないのか?
「レンジちゃんって意外と怖がりだな?」
「何だ、シユさんか。
てっきりお風呂でシンクロナイズドスイミングするお化けかと」ホッ
「随分と限定的な妖怪ね」引き気味
「それよりお風呂入ってるならフタ開けておけばいいのに。
てっきり1人と思ってシャワー浴びてたし」
「お風呂は家族と入る物だが?」
「あー、すまない。俺今機械の体だからさ、一緒に入れないんだ。
けど決して嫌ってるわけじゃない。
むしろこうして面と向かって話せる機会に感謝したいぐらいだ」
これは俺の本音。
「なら背中ぐらいは流してやろう。光栄に思うがいいぞ?」
「マジか!!ちょうど手が届かなくってさ!!じゃなくて助かります」
シユさんは体にタオルを巻きつけて機械の背中を洗っていく。
そうか、これが俺との肉体的ファーストコンタクトか。
「助かったよシユさん。じゃあおれも背中を洗うからさ」
「我の体は学生であるレンジちゃん達と違ってボロボロだぞ?」
「そんなの関係がない。多分これが初めての親孝行だから。
時間がかかるかもしれないけれど、俺は仲直りがしたいんだ」
「ではお願いするか」
体の向きを入れ替えて俺がシユさんの背中を洗う。
「レンジちゃんは毎回こんな修羅の道を?いいっ!もっと優しく!」
「!!すまない」強くやりすぎたか
人の背中洗うのって加減がむずいな。
「ん-、シユさんは俺に危害を加えたわけじゃないだろ?
育ての親のアレらと和解するのは無理だけどな。
仕事で忙しい合間見て来たんだろ?次いつになるか分からないしな」
「次?仕事なぞオンラインだからずっとここにいるぞ?」
「ふぇ?」
「優秀な社員の条件は与えられた給料に”妥協”して働いてくれるもの。
そして最高の経営者とは社員を逃がさないようアプローチする事」
「なんか考え方が世間と違ってないか?
こう安い給料で社員こき使うのが経営者ってイメージだが」
「その安い給料で働かせるために知恵を出す。
例えばオンライン職場。通勤退勤なんて手間で非効率。
もっと言ってしまえば夏場で通勤して
職場のシャワーを浴びずに仕事するエチケット皆無なやつもいた。
極論を言えば仕事を辞める理由はそういった細かい人間関係」
「けどオンラインだとサボるんじゃ?」
「そんなの百も承知、裏でFXでも株でもやってても黙殺するのが吉。
うるさくいうのは心の狭い上司の個人的嫉妬」
「結果さえだせばいいのか?そんなんじゃ社員逃げちゃうぜ?」
「当然だ。例えば通常のノルマに加え300万の利益を上げたとしよう。
だが会社という物はその社員に還元はしない。
いやボーナスという形で雀の涙ほどは返すか。
会社の言い分としては企業のネームバリューや設備を”貸し出している”と主張。
これに対し外国資本会社、
例えば百合チューブなら個人3割、視聴者3割、残りは運営だったか」
「完全実力主義の世界だからな」
「まったく、ムツキもとんでもないシステムを構築したもんだ。
ニンジャ国の株式会社の場合は個人、役員と株主、会社経営と本質的には同じ。
だが会社は株主のものだ。
社員に還元するよりも自社株買いをしたほうが総合的な株価、
つまり会社の価値が上がる、個人の給与を犠牲に。
有能は外国資本の百合チューブに流れるのは当然の摂理だ。
先ほどの300万の話なら約100万のボーナス、
どっちが稼げるかは比べるまでもないな」
「つまり与えられた給料で仕事している社員を逃さないのが経営ってことか」
「流石はレンジちゃん。職場はキャリアアップや箔をつけるための手段。
転職上等。新規立ち上げ上等。いまだに百合戦国時代を引きずってる」
「じゃあシユさんも百合チューブ側に行けばいいのに?」
その質問にシユさんは沈黙した。やばいな地雷踏んだか?
「大人は馬鹿な生き物。それが最適解というのも分かってる。
散々突っ張ってきた我がムツキに頭を下げ、許してもらえなかった時が怖い。
そう、今のレンジちゃんと我の関係と同じ」
「なら俺が協力するまでだ。といっても微力だけどな。
俺には人望はないが人脈があるし。
ハボタンにチョコケーキ渡して
リリーの家事を手伝って
最終手段で黒雪に政治的圧力かけてもらってな」
「随分と他力本願だ」ドン引き
「まあ、人に頼ることも強さっていうし。
シユさんも自分で解決できないからこそ俺に打ち明けたんだろ?
相手がシアさんだから時間はかかるだろうけど」
「・・・・子供も馬鹿な生き物。
自分の評価が下がろうと他人の為にここまで頑張るんだから」
「あんたも子供だった時あっただろ。”母さん”
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」あっ
「
「
「
「
「
「・・・・・今母さんって」
「ああああああああああああああああああ言ってない!言ってない!
ほらシユサンとカアサンって似てるだろ?ただの間違えだ!!!」あたふた
「そういうことにしておこう」ふふん
なんか上機嫌だな!!!!シユさん!!!!!!!!
「こほん。ところで何故ムツキをシアと呼ぶのだ?
彼女の本名はランダムな英数字のはずだが?」
「あー流石にそれじゃかわいそうと思って。
イキシアから取ってシアってことで。団結を意味する花言葉だ」
「団結。随分と絵空事な名前だ」
「まあ彼女何度も俺ら裏切ってるし」ドン引き
「そういう生き物だ。だからこそ惹かれる」
「なんか暴力振るわれて優しくされたら依存するDV彼女みたいな性格っすね」
「いうな。レンジちゃんもムツキと縁切りしてないだろうに」
「だな。流石に湯冷めしちまうからもう風呂出るか」
「ああ。レンジちゃんが許す限り我も時間を取るつもりだ」
流石に更衣室は狭いため1人づつ着替えてお風呂場を去る。
ー 鬼百合家 居間 夜 ー
「ふぃ~。シアさんごめん。ちょっと長風呂になった」
「レンジちゃんとお風呂で話してたら会話が弾んでな」
「「「・・・・・・・・」」」マジかー
なんで俺達以外全員ドン引きしてるんだ?ハボタンに至っては頭抱えてやがる
「「お風呂は家族と入るものだろ?」」
俺とシユさんの発言がハモッたけれどこの空気感は消せなかった。




