†加速する罪†
ー 墓地 鬼百合家 墓 ー
「確か遺言ではココア缶でしたか」
「ああ、チョコケーキは虫がたかるって嫌がってたな」
ハボタンの体はクローゼット下のラボに保管されてるものの
メイド服の一部は墓に埋葬した。
あくまで機械ではなく、人としての生涯を終えたからな。
「今回私と姉様が入れ替わって一番喜ぶのは誰だと思いますか?」
「それってシアさんじゃないか?」
「動画のネタになるとシア様を誑かしたのは私なんです」
「ハボタンが?」
「ええ。姉様は不死ですから。ケイル様も先代ハボタン様も、
未来ではリリ様も姉様と同じ時間は歩めません。
もし姉様が天国に行く方法があるとするなら?」
「機械の体の今なら殺し切れるってことか」
「その通りです。ナイトメアシステムで見たものは
リリ様も黒雪様も犠牲にしてレンジ姉様が英雄となった未来でしょう。
これ以上姉様をいえ、
レンジ様に汚れた世界に留めておくことは私にはできません」
銃を俺に突きつけたハボタンだが手が震えてるじゃないか。
覚悟は出来ていてもいざって時に迷いが生まれてるじゃん。
「っま、正論だな。確かに今ならケイル達の所へ行けるかもな。
けれどまだこの世界にはリリーやシアさん。そしてハボタンがいる。
俺が死んで悲しむのは墓で眠ってる先代ハボタンもそうだが、
今生きているハボタンもだ。
俺を殺した世界で何がしたいんだ?
世界にでも報復する気か?
それなら俺は死ねない。
メイドさんを悪役にする気はないからな」
「どこまでもメイド馬鹿っすね」ドン引き
銃を下ろしてくれたはいいが好感度が下がったような感覚が襲ってくる。
慣れてるけどさ。
「それでも姉様は納得できますか?
遺伝子組み換え人間として生まれ、NーVRの下位種扱いされ、
友を失って、愛する人も、そして永遠にこの世界に縛り付けられる苦痛を」
耐えられるわけないじゃないか。けど!!
「俺はリリーと過ごした過去も、
ケイルや先代ハボタンが託した今、
そして不確定な未来も。全部無駄じゃないと信じたい。
ナイトメアシステムも何かの目的があって未来を見せたはずだ。
それに今のところ機械に振り回されていないからな」
「根拠は何ですか?」
「システムが動かない以上今回のことはイレギュラー。
恐らく計算中だろうな。そしてそんなことを考えるのは」ちらり
(あははシステムの演算結果を変えるなら計算式に不純物を加えればいいだけ)
(私が仕えるのはご主人様であってシステムではありません)
「両者の性格を完璧に再現した結果、反逆されてますね。
ナイトメアシステム」ドン引き
模倣元完全に間違えてることは認めざるを得ないな。
「最後に確認をしておきます。レンジ姉様、そして疑似人格の私とシア様。
皆さまは未来の予測をどう思っていますか?」
(ご主人様の理想である不労所得とハーレムが成立した以上、
下手に改変するのは悪手ですね。
けれどリリ様も悪い人ではなかった、だから救いたいとは思います)
脳内ハボタンもリリーを認めている。
俺はシユさんの事を分かろともしなかったのに。
(修羅に堕ちたレンジ君はカッコよかったがどこか寂しそうだったな。
そして野良ハボタン君問題が起きた時
世界へ宣戦布告しなかったのが不思議なぐらいだ。
どうやら予測もレンジ君という破天荒な存在を理解しきれないらしい。
それは今回のシユ君襲来も同じ。
このまま喧嘩別れするのか別の道を探るのか私自身気になるしな。あははは)
それは分かってるんだ。脳内シアさんも和解してほしいと思ってるんだろうな。
「レンジ様はどうなんですか?」
ハボタンが目を見て俺に問いかける。やめてくれ。
今の俺はそんな純粋な瞳で見れる代物じゃない。
「突然親が出てきて気持ちの整理が追い付いてないんだ。
正直今更かよって思う面もある。俺の不死が家庭間の問題で発現したのもだ。
言いたいことは山ほどあるし、受け入れなければならないことも。
すぐには結果が出せないかもしれない、けれどいつか和解したい。
シユさんが嫌がるならそれでいい。無理には話さない。
ごめん、これ以上は本当にいい言葉が出ない。
俺はハボタンやシアさんほど頭が回る訳じゃないからさ、
質問に質問で返すのは悪手だってことは知ってる。
けど答えが欲しい!!ヒントでもいい!!!頼む!!!」
ハボタンに頭を下げ懇願する。
超再生能力持ちで不死だってメンタル攻撃は効くんだ。
この2人もとい3人からどんな罵倒が飛んでくるか分からないが
今はアドバイスが欲しいんだ。
(こほん。少なくとも育児に関しては長男長女ならば誰だって初心者だ。
言ったろ?喧嘩したりするって。今がその過程。
親も子も手探りで模索していくしかない)
(血の繋がりこそあれど所詮は他人です。
相手の感情全てを把握できません。
けれどご主人様は私を家族と認めてくれました。
それをシユ様にすればいいだけです。
そういった意味でもご主人様からアプローチをするのが最速ですよ?)
脳内シアさんも脳内ハボタンも答えが曖昧だ。
「レンジ様、質問を変えましょう。
実現可能か不可能かは置いておいてどうしたいですか?
喧嘩別れか?寄り添うか?」
「そんなの仲良くなりたいさ!!けど!!」
「私達では徹底抗戦して屈服させるのが最適と思っています。
先ほどのように無抵抗な人間に対黒百合用の武器で。
それでは町で暴れている敵と何ら変わりありません」
そうだよな。暴力振るった時点で相手からの印象悪くなるな。
「先代ハボタン様を捨てて新しいメイドさんを迎えようとしたレンジ様。
敵にも味方にも武器を売りつける財布の暴虐者様・・・シア様。
自己顕示欲で暴走したカレン様。
友達を押し付け監禁した黒雪様。
会社役員という地位でレンジ様を拘束したリリ様。
自分を犠牲にして全てを託したケイル様。
そしてレンジ様を残してこの世を去った先代ハボタン様と
今こうして話している鬼百合ハボタンであろうとする私。
果たして誰が一番悪いのでしょうね?」
「全部俺のせいだな。俺がもっとしっかりしていれば」
「逆に言えばどうしようもないくらい不器用だからこそ
レンジ様を放っておけないんです」
「ソレ褒めてんのか?」
「ケイル様を撃ったことで銃がトラウマでしょう。
血も涙もなければ火力不足を補うためその後も使い続けるはずですから」
「ハボタンは銃使うんだな?」
「勿論、効率化の為です。
掃除機とスプレー缶で戦うメイドさんのフォローの為に」
今考えると武装が貧弱だな。
「少なくとも今のレンジ様は1人ではありません。
今まで培ってきた人材があるはずです。
黒雪様やリリ様にも聞いてみたらどうでしょう?」
「ダメだ!!黒雪はともかくリリーの家族仲は!!!」
彼女にとって過ぎたことを蒸し返すのはよくない。
「それが答えですよ?家族間問題に他人がでしゃばるべきではありません。
これはレンジ様とシユ様の問題。頑張ってください」
そういうとお墓に備えたココア缶を開けて飲み干すハボタン。
随分と罰当たりだな。
「長々と話して結論が頑張って和解しろって。
時間の無駄じゃないのか?」
「それで頭も冷えたでしょう?
シユ様はシア様とも話し合う時間が必要。
私が悪役を買って出たのもそのため。
結局話さないと何も解決しないんです。
鬼百合家みたいな自分で全部抱え込むタイプの一族は」
「分かったよ。話したいことは全部伝える予定だ。
先にに帰ってくれ。俺はもうちょっとここで近況報告して帰るから」
「そうですか。決して無茶はなさらないように。
先代ハボタン様を亡き者にした敵が現れても1人敵討ちなど許しません。
今は機械の体で不死ではないのですから」銃突き付け
「うげ、バレてた」マジかよ!!
「バレバレっすよ。メイドに隠し事なんて無理っすから」うんざり
いつもの口調に戻ったハボタン。しっかしそんな分かりやすいかな~、俺。




