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不死な女装メイド姉様は機械メイドと結婚したっす  作者: 漢字かけぬ
スコップ狂団 ジャリグリラ編(仮称
30/62

鈍色に染色された世界

あの人が去ったあの日から、私の世界は。

 世界自体が止まっているかのようにゆっくり流れる。

 ふと時計を見て1時間はたっただろうなと思っても

 実際は5分しか経過していない感覚と表現すればいいでしょうか?


 ー 鬼百合家 ー


 あの人が起きる前に朝食を作ります。

 オーブンにパンを入れて、もう片側にはスキレットで目玉焼きを。

 いつものように洗う手間を省略した紙皿と紙コップ。

 オーブンを予熱なし250℃8分に設定し姉様を起こしに行きます。


「レンジ姉様、あさで・・・ああああああああ」


 思わず発狂してしまいました。

 そうですよね。全て夢で朝起きたらすべてリセットされてて、

 平凡な日常ができていればよかったのに。

 普段の癖って怖いですよね。無自覚で朝食2人分作ってるんですから。



 食パンにチョコを塗り食べましょうか。

 おかしいですね?味がしません。いえ普段と違って多幸感が得られない。

 こんな砂糖の塊を好き好んで食べていたのかと自分自身に問いかける程度には

 拒絶反応が出ていました。

 ”よくわからない物を食べてエネルギー補給”を終了。

 そもそも食事ってなんなのでしょうね?コンセントで百合エネルギーを

 供給すればいいのに。私はロボットですのでそちらが好ましいのに。



 特にやることもないので勉強でもしましょうか。

 そう、あの人は意外と勉強できるんです。私ほどではありませんが。

 だから負けたくなかった、全力で煽るために必死でやったんです。

 でもそれも遠くにいってしまった。

 ただデータを脳に焼き付ける作業。こんなもので張り合っていたんですか私?

 無駄な会話がない分ページをめくる速度が速くなる。

 随分と非効率なやり方してたんですね。この作業は1人でやるべきです。



 区切りがついたところでスマホでメールを確認します。

 受信0件。ええ、分かっています。あの人と財布様、黒雪様以外に

 私にメールする人なんていません。後は敵討伐の依頼でしょうか?

 ネット上の顔の見えないお友達なら沢山いますが、

 現実は興味が無くて。いけませんねこれでは。

 1人で楽しむ場所でも探しましょうか。

 カラオケやボウリング、コンビニスイーツ巡り等ですか。

 全部飽きそうですね。多分やせ我慢の類でしょう。

 このネット記事は無駄が多いですね。



 あの人の布団を干して、洗えるものは全部洗濯して乾かします。

 全部押し入れに入れるためです。帰ってくるアテなんてないけれど。

 全部捨てれば楽になるのに?万が一ということもあります。

 全部放置でいいのでは?ただの布に無駄なスペースを占有されるのはNG。

 全部大事なはずですが、今は感情が動かない。



 今はスマホの画像もコンビニでネットプリントできる時代。

 勿論公的な書類も。役所に行かなくてもいいというのは便利です。

 サラサラと書類を仕上げて捺印。

 もう帰ってくるはずのないあの人の欄は開けて。


 ”離婚届”


 多分あの人は私と別れて自堕落に生きるのが最適解ですから。




 そんなことを考えてるともう夕方で。

 布団や洗濯物を回収してひとまとめに。

 そういえば収納ボックスや布団を圧縮するヤツも買わないといけません。

 外出用の服に着替えて準備完了。


「ホームセンターって何時までやってましたっけ?」


 虚空に質問しても返事なんて来ません。

 その場で倒れこみ泣きじゃくる私。いったいどうしたんでしょうね?



 ピンポーンと玄関のチャイムが鳴る。

 カメラ越しに見るあの人もどこか寂しそうで。


「どうされましたか?」

「やっぱ他人行儀なんだな。無理もないけど」


 連絡の1つも寄こさずに、この人は何を言ってるのでしょう?

 オレンジのツンツンヘヤーの男性。

 手に持っているのはケーキの箱でしょうか?



「今鍵を開けます」


 あの人が来たにもかかわらず心が躍動しません。

 涙を見せるわけにはいきません。袖で勢いよくふき取り対応をします。      

 扉を開けてあの人を居間へ誘導します


「さぁ、お上がりください」

「メイド服じゃないってことは外出か。顔の化粧が酷いことになってるぞ?」

「ですので明かりは付けませんよ?」


 居間に来て後悔をしました。離婚届がほったらかしで見られてしまって。


「やっぱ考えることは同じか」


 服の内ポケットから封筒を取り出す。彼もまた離婚届と資料を。


 「俺なりにいろいろ考えたけどハボタンを守るにはこれしかなくて。

 これさ、リリーの経営してる会社の資料。

 どうあがいたって俺達の意見は封殺される資金力があってさ。対抗できない」


 あの人は悔しそうにこぶしを握り締めていました。


 「でしょうね。でもこれでレンジ様の夢である不労所得で生活ができます」

 「俺の夢はそれに追加でハーレムだぞ?」


 まだ非現実な夢を追いかけていましたか。

 あの人らしいと言えばらしいですが。


 「これさ、人気店のチョコケーキとショートケーキ。一緒に食べようぜ?」


 何してるかと思ったらケーキ屋の行列に並んでたのですね。

 無駄な思考を巡らせていた誰かと違って私の為に。

 紙皿を用意し2人で最後の食事をします。


 「ちゃんとご飯食べてるか?チョコケーキばかり食べんなよ?」

 「朝間違えて作ったもの以外はコンセントで補給しました」

 「そっかぁ」


 そこは無理してでも料理作ったり弁当買ったって嘘をつくのがベストなのに。

 真実をさらけ出して心配させてどうするのですか。

 味もしないケーキをただ口の中へ、口の中へ。

     

 「俺は1人でやっていけるからさ。苦手なイチゴだって。

 ううううう、んんん、ごくん。ほらな!!!!」

 「おめでとうございます。でも無理はなさらずに」


 私を心配させまいと無理をして。

 それに対して私は自分の事ばかり考えていて情けなくなります。



 ケーキを食べ終え私の離婚届を回収して帰りの準備を始めたあの人。

 出来れば引き止めたいですが言葉が見つかりません。


 「そう落ち込むなって。俺は不死でハボタンはロボット。

 リリーの寿命はたかだか100年。それぐらい待てるだろ?」

 「相変わらず意味不明な発言を。でも楽になりました。

 ありがとうございます」


 ニィと笑い冗談を言うあの人に対し、お辞儀をする私。

 ”たかだか100年”、その間に私が浮気してたらどうする気なんでしょう?


 「ホントは引き留めてほしかった。

 いつもみたいに大胆不敵な発言で

 この場を打開してくれたらよかったんだけどな」

 「申し訳ありません。今の私ではなにも・・・・」

 「湿っぽくなっちまったな。コホン。100年後にまた会おうぜ!相棒!!」

 「ええ、100年後に」




 100年後に再開って小学生の考える別れの挨拶ですね。

 鈍色の世界はまだ終わらない。それでも終焉は見えた。

 私は私の人生を歩んでいけるような気がしました。

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