ざこざこレン兄更生事件簿
ー 金剛石リリ宅 ー
俺は、いえ僕は鬼百合レンジ。
ハボタンを信じられなくなったわけじゃない。
けど彼女を守るにはこれしかなくて。
リリーの求める”レン兄”を演じ続けること。
リリ 「すごぉい!料理忘れたと思ってたけど、
案外上達してるわね!頭撫でてあげる」
レン 「恥ずかしいよぉ」
リリ 「昔はあたしがいないと何もできなかった
ざこざこレン兄が立派に成長して嬉しいわ」
レン 「むー。一言余計!」ほっぺたプクー
リリ 「そういうとこ変わらないわね」引き気味
レン 「僕は敵倒したり動画投稿してたけど、
リリーは何してたの?」
リリ 「夏休みが終わってレン兄と離れ離れになって
10年がたったわね。あたしは・・・」
ー 過去回想 10年前 金剛石の寺 夏 昼 ー
突然やってきたオレンジ髪のちっちゃい少年。鬼百合レンジ。
あたしより年上なのにびくびくしていて小動物のよう。
両親のオーダーは軟弱な精神を修行で鍛えてほしいとか。
あーあれね。育児放棄されたパターン。
本来なら夏休みこそ家族と過ごせる機会なのに、
他人に丸投げして楽しようっていうク〇親の典型例。
”お金をもらった依頼だから無下にするな”とあたしの両親も語っていた。
己らも子供をダシにして稼ぐクズ親じゃん!
こんなところ大人になったら出ていくわ!守銭奴ども!!
リリー 「あたしは金剛石リリ!ざこ精神を鍛えるわ!
あんた名前は!」腕組みー
レン 「(小声)レン・・・」
リリー 「声が小さい!!名前全部言いなさい!」
レン 「お、鬼百合レンジ」
リリー 「じゃあレン!働かざる者食うべからず!
まず雑巾がけ!」
レン 「え、夏休みだよ?なんで仕事するの?」
リリー 「あんた捨てられたのよ?軟弱な精神に愛想つかされてね。
親なんてみんな自分勝手よ!だから強くなるの!」
レン 「う、うう、うえーーーーーーーん」
リリー 「メンタルが弱すぎるわね。このザコ」ドン引き
レン 「帰る!帰らせて!!」
リリー 「あんた、友達いないでしょ?
だからあたしがなってあげる!今すぐ泣き止みなさい」
レン 「うええええええんありがとおおお」
リリー 「うわ、マジかー。感謝されるってことは
マジのボッチじゃん。この性格じゃ無理もないか」
これ本腰入れないとまずいヤツだ。
喧嘩早い子は実力で分からせればいいけど、
この子の場合カウンセリングから入らないと駄目なパターン。
しかもたった6週間で立ち直らせるのはムリ!
あたし至上最大の敵が出現。
今まで戦ったザコとは桁違いで手ごわい。キングオブザコ助
まずは信頼関係の構築からね。
リリー 「じゃ、まず握手から、よろしくレン」
レン 「手握った後ぎゅーってするんでしょ?」
リリー 「そこからか!ざこざこメンタル過ぎるわ!
ほら、何もしないから」
レン 「うう、よ、よろしく」ぎゅ
リリー 「それでよし!」ぎゅ
握手すらろくにできないなんてね。
でも心は開くことができたわ。
リリー 「で?質問なんだけど私の名前覚えてる?」
レン 「リリーちゃん?」
リリー 「リリでいいわ。あんた年上なんだから」
レン 「り、リリー?」
リリー 「なんか後ろ伸びた発音だけどいいかな」
ー 雑巾がけ ー
リリー 「ほいじゃ雑巾がけから。レン、絞ってみて」
レン 「ぎゅうううううう」
リリー 「床に置いてみて、水が残っていてびちゃびちゃ。
やり直し♡」
レン 「これで精一杯だよぉ」
リリー 「じゃあ逆方向に絞りなさいな。
それで少しは水が切れるから」
レン 「リリーって賢いんだね」
リリー 「最近の学校ってこんなことも教えてないの!!
ていうか親が教えなさいよ!!
スマホ与えて育児が成立すれば、
あたしはこんなに苦労しないっての!」
レン 「ごめんなさい」
リリー 「あんたのせいじゃないわよ。
ただ経験がないだけでしょ。次失敗しなけりゃいいのよ」
レン 「うん!」にっこり
リリー 「うわあああああ、笑顔に邪気がない!!
溶ける!!燃えるううううううううううううう!」
今まで救いのないやつら倒してきたけど、この子は邪な感情を持って無い。
善意100%のまっさら人間。私とは真逆なホモサピエンス。
いけない!私まで浄化されてしまう。私のすべてが否定される!
ー 草むしり ー
リリー 「じゃ次は草むしり。はい軍手。
ちゃんと根っこまで抜きなさいよ?」
レン 「塩まかないの?」
リリー 「甘えない!ほかの植物まで育たなくなるじゃない!」
レン 「うう、非効率」
ー 滝修行 ー
ザァアアアアア
レン 「これってなんの意味あるのおおおおおお」
リリー 「精神修行よ。心を無にするの」
レン 「・・・・ハンバーグ食べたい」
リリー 「あんたホントは余裕あるでしょ?」引き気味
ー ハンバーグ ー
リリー 「んじゃ、あんたが食べたいって言ったハンバーグ。
作ってみなさいな」
レン 「スーパーに売ってるよ?なんで作るの?」
リリー 「それ家庭科の先生の前では絶対言っちゃだめだから!
材料入れて手で混ぜるの。
包丁持たせるの危ないからあたしが材料全部切るわ!」
レン 「うわ、なんかねちゃねちゃする!」
リリー 「いや、ハンバーグって焼かないと固くならないし」
レン 「へぇー」
リリー 「あんた、魚が切り身で泳いでると思ってそうね」
レン 「もしかして違うの?」
リリー 「異教徒だけど今なら神にでも縋りたい気分よ」げんなり
ー 巫女服 ー
リリー 「じゃーん、大人用だけど借りてきたの!似合うでしょ?」
レン 「奇麗!リリー!」
リリー 「あんたも着てみなさいよ?」
レン 「僕男だから着ないよ?」
リリー 「着なさいって!!」
レン 「うう」
~ 着替え後 ~
レン 「これでいいんでしょ」赤面
リリー 「あははははははははははははははははははwwww
ホントに着たwwwというかあたしより似合ってるww
レン姉wwwwめっちゃ奇麗www」
レン 「むぅー。男だもん!!」ほっぺたプクー
リリー 「自分の意志で反論できたじゃない。
この前よりずっとカッコいいわ。レン、いえレン兄。
あなたはあなたのままで生きなさい。
他人に踊らされず、自分で考えて進みなさいな」
レン 「よくわかんないけど、これ脱ぐね」
リリー 「まあいいか☆そのほうがレン兄らしくて♪」
こんなことを続けていて夏休みはあっという間に過ぎ去った。
今にして思えばあの子は天使だったわ。
あたしを含めた金の亡者の家庭で育ったから、いい刺激になった。
ダメ人間を更生させることってビジネスにもなるし何より、
あたし自身が楽しかった。
徐々にできることが増えていって自分自身の事のように喜べた。
でもあたしはレン兄じゃない。偽善でしか生きられない。
あたしは机上の空論を特許申請し行動に移した。
百合ウドファンディングよ。
資金を募って見返りに報酬を渡すシステム。
今回の場合は引きこもりやニートの更生が報酬。
幸か不幸か大口のスポンサーが付き、経営を開始したの。
”汝スコップが妊娠するまで愛せ。
それが教義。
そして矜持である”




