第四話「初めてのサブクエスト」
「あー、あー本日も快晴なり快晴なり」
10年間ブラック企業で、昼夜を問わず働いてきた。そのせいで、俺の平均睡眠時間は、たったの3時間だ。もはや、崇高な職業に身を捧げてきた気分だ。久しぶりに、太陽がてっぺんに上るまで、熟睡してしまった。
「今日は、弟子入りするぞ!!」
本日の『天邪鬼』での目標は、NPC薬師に弟子入りする事だ。公式によると、このゲームではサブクエストを発生させ、クリアするとNPCと仲良くなれる。その過程で、弟子入りすることも出来るそうだ。
「Play World」
俺は電脳世界で目覚めると、前回ログアウトした王城側の{ブレンド通り}からスタートした。ここは、個人経営の商店が立ち並んでいて、駆け出しの俺にはぴったりの通りだった。
「リリース間もないからか、初々しいプレーヤーが多いねぇ。とは言っても、一番格好がダサいのは俺だけどな。」
俺の今の装備は、上下の白いボロで勇者召喚時に着ている服だった。しかも、ゲーム内の俺の糞尿のシミも付いているし、異臭ステータスまで付いてやがる。
「まずは、水場で服を洗うか〜。生活魔法か、金があれば手洗いしなくて良いんだけどな。異臭ステータスつけたままだと、NPCの好感度が著しく下がるし仕方ない。」
マップで、共用施設を確認すると少し下った西門側に、川があるみたいだった。そこに洗濯マークが出ているから、服が洗えるだろう。とりあえず、この辺りの薬草店をチェックしながら、俺は川へ向かった。
川まで来ると、NPCのおばちゃん達が桶に大量の衣服を乗せて、洗濯板でゴリゴリと服を洗っている。
「おぉ、こんなところまでリアルなんだな。プレイヤーは、っと・・居ないよな。」
洗濯板なんてものは無いから、素手で俺は下着とズボンをバシャ、バシャと洗い始めた。すると、少し離れた側で洗濯をしていた、NPCのおばさんに声を掛けられた。
「何やってんのよ!そんなじゃ、落ちる汚れも落ちないよ。」
「良いんです!洗濯板持ってないんで!」
「もう仕方ないね!こっちに持ってきなさい!洗ったげるよ!」
「そんな悪いですよ!」
「ほら、良いから!ズボンの一つや二つ増えたって変わんないよ。」
だめだ、こう言うタイプのお節介おばさんは、逆らえば逆らうほど絡まれる。素直に従おう。俺は、おばさんにズボンを渡した。
「おばさん。」
「なんだい?」
「俺、金持ってないよ。」
「いらないよ、そんなもん。」
「なら代わりに、帰り道俺が洗濯物持ったげるよ。」
「あら、あんた気が利くんだね。それじゃ、お願いしようかね・・。お兄ちゃん。」
「ん?」
「洗濯物なんか持たなくたって良いから、あの子を助けてやっちゃくれないかい?」
「え?」
おばさんが、俺の後方に指を指した。振り返ると、橋の下でNPCの悪ガキ三人と小さな女の子がいた。よく見てみると、少女がいじめられてるみたいだった。
===サブクエスト発生===
<王都の少女を救え(*F)>
王都の少女を、悪童たちから解放しよう。
クリア報酬:少女からの感謝。*少女の好感度Max
==============
うわぁー、旨味のカケラもねぇ。だけど、*付きのクエストは条件さえ満たしていれば、他のクエストとの連携クエストが発生する可能性がある。しかも、その条件が秘匿されているって事は、レアなクエストって事だな。ただ・・
「今の俺で、子供とはいえ三人も相手出来るだろうか。」
そう呟いた俺の背中を、おばさんが思いっきり叩いた。
「おぉ?!」
「何言ってんだい!男だろ!パッと行ってきな!」
ならあんたが行けよ・・。いくらALLステータス0の俺でも勇者なんだ、悪ガキくらいなんとかなるよな。それにサブクエストを、選り好みできる立場じゃないし、よし決めた!
「ビシッと!言ってくるぜ!いじめはやめなってな!」
「頼んだよ〜」
俺は、彼らに近づいて言い放った!いじめはやめなさいと!すると、彼らはこちらを振り返り、俺の足元から顔を見遣り、虫けらを見る様な目を向けてきた。
「なんだぁ、このおっさん。パンイチじゃねぇか!」
「見せ物じゃねぇんだ。失せな。カーッペッ!」
「おい、見ろよこのおっさん。大人のくせして、震えてるぜ。」
===スキル獲得===
<直感Lv.1>
あなたは、その鋭いセンスで感性が鋭くなります。
スキル効果:物事の良し悪しがわかります。
===========
ははは、膝が、膝が笑っちまってる。一回り以上年下のクソガキに、睨まれただけで震えが止まらねぇ。やっぱり、Allステータス0は伊達じゃないな。
「き、き、君達こそ、男三人でぇ!ひ、ひぃ一人の女の子を虐めるなんて、そ、そそ、それでも男の子か!」
俺は普通に喋っているつもりでも、胆力:0のせいで歯の付け根が合わない。勝手に死ぬほどビビりながら、喋っているみたいになっちまう。
「あ”ぁ?!」
「ウゼェなぁ、このおっさん。」
「先にもう、やっちまおうぜ。」
===<直感>スキル発動===
クソっ!才能ステータスはレベルマックスだから、直感ばかり冴えやがる!ガキどもが、戦闘態勢に入りそうだ。そして戦闘になれば俺は死ぬ!俺の直感が、警鐘を鳴らしてるぜ!!それと、どうすればこの状況を、切り抜けられるかなんとなくわかった。
「きゃ、か、かかってコーイ!」
ビビりすぎて、声が裏返っちまった。
「死ねやー!」
悪童たちが、拳を振り上げて殴りかかってくる。身長差は倍以上あるのに、大人の俺が、下はパンツ一枚でビビりまくっている構図。なんて情けないんだ。
===【失禁勇者】の称号===
戦闘時、ALLステータス−1
===============
「うわぁぁぁあああ!!!」
ただでさえ、びびっていた俺が称号の効果が発動したおかげで、状態異常<恐慌>に陥ってしまった。そしてこれが俺の<直感>に基づいた狙いである。俺の見事な狂いっぷりに、クソガキどもも戸惑った。そして気づいたのである。
「おい見ろよ。このおっさん、俺たちにビビりすぎて漏らしてんぞ!」
「ほんとだ。大の大人が漏らしやがった!」
「やーい、やーい、大人のくせにもーらした!」
あぁ知ってたさ。こうなれば、俺は恐怖のあまり失禁して、泡を吹きながら失神することを。そして俺は、その場で気絶した。
目を覚ました時俺はずぶ濡れだった。
「やーっと目を覚ましたよ。全く情けないね。子供相手に大の大人が気絶なんて。」
目の前には、からの桶を抱えたお節介おばさんが立っていた。この光景見覚えがあるな。ははっ。
「そんなことより、女の子は?」
「それなら、悪ガキどもはあんたの無様さに満足してどっか行ったよ。それと、あんたが助けた女の子にも笑われてたよ。」
===王都の少女を救いました。王都での名声が5ダウンしました。少女の好感度がMAXになりました。===
なんで、クエストは成功したのに名声が下がるんだよ!!まぁでも、よく分からないうちに、*条件を満たして少女の好感度を手に入れたからよしとするか。
「おばさん。」
「ん?」
「パンツも洗ってくれる?」
お節介おばさんは、俺に洗ってくれたズボンを投げつけ、馬鹿言ってんじゃないと言って帰っていった。
「はぁ。こんなんでこの先やって行けるのか、不安になってきた。」
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