第二話「始まりの街で、始まらない生活。」
VRMMORPG『天邪鬼』の世界で、一生涯を過ごすために32歳で仕事を辞めてきた。
待望のタイトルをプレイし始めて既に12時間が経過しているのだが・・
未だに、ゲームはスタートしていない。
===ステータスポイントは、以上でよろしかったですか?===
ステータス表
ID:【ミナト】
体力 :1
筋力 :0
知力 :0
胆力 :0
洞察力:0
素早さ:0
器用さ:0
風格 :0
才能 :99
=============
大満足です!よろしくお願いします!
===キャラクター作成は、以上で全てとなります。修正はよろしかったですか?===
俺は一応自分で作ったキャラクターを見返した。
キャラクターの外見は、どこか気になり出したらキリが無い・・このままでいいや。
ステータスも大丈夫!・・おぉ!興奮してきた!!始まる!!始まるるるるる!!
俺の電脳生活が!!!
===お疲れ様でした。それでは勇者を召喚致します。===
全ての、メッセージウィンドウが消えた。そして・・足元の魔法陣が起動し始めた。
「お?おぉ!!俺と俺が作ったミナトが一つになる!!!」
先程作成したキャラクターと、電脳世界の俺が重なり一つとなった。魔法陣の眩い光が治ると、俺は魔法陣があったハズの場所で跪いていた。
まずは、自分の体を確認すると、服装の素材はおそらく綿で、色は白の質素な長袖長ズボンだった。両手で拳を作ったり、広げてみたりして体の機能を確かめる。肌の色は、透き通るように真っ白で心臓の音が跳ねた。綺麗な爪と大きな手、長く関節が節だった指・・理想的な手だ。
俺がそんなことに耽っていると、声をかけられた。
「ゆ、勇者殿で在らせられるか?」
顔を上げて、声がした方を向いてみると立派な椅子に座った。二人の着飾った男女が座っていた。男女ともに、王冠みたいなのを被っている。国王と妃か。
あぁ、キャラ創成フェイズで周りの風景に影が掛かってた時の人影・・ここはやっぱり謁見の間か。
周りには、貴族ぽっいのと近衛兵が勢揃いだな。
「はい。」
俺がそう返答して、すぐに周りからは大歓声が湧き起こった。
「「「おぉおおおおおおお!勇者召喚が成功したぞぉおおお!!!」」」
「これで人類は救われる」
「主よ、感謝いたします」
「も、もう、だめかと思った・・」
安堵した叫びが聞いてとれる。
「勇者殿、まずは我らの呼びかけに応じてくれた事、ヴァルド王国、国王として礼を言う。」
国王が頭を下げると、周りの貴族、近衛も一斉に跪いて頭を垂れた。
その壮観な威圧に俺は・・・
や、やばい。精神異常が起きている。視界が、揺れる。め、めまいか・・。そうか、覚悟はしていたがステータス胆力:0の俺は、この程度で卒倒してしまうほどの雑魚・・・。
意識が遠のき、赤いシルクの絨毯にキスをしながら、なんとか国王を睨みつけていたが、目の前にクエストウィンドウが現れた。
===メインクエスト===
『勇者召喚の儀(F)』
魔王:天邪鬼の侵攻により、人類の滅亡が目前にまで迫った中、人類は最後の望みを託して勇者召喚を行なった。
クリア条件:国王からの頼みを引き受ける。
クリア報酬:10金貨
失敗:勇者の称号剥奪、ー10金貨
============
くっ、くそ・・初クエスト失敗かよ。
俺はそのまま気絶した。
「うっ・・うぅ。」
目が覚めた、つ、冷た!!気づいたら俺は、門番にバケツの水をぶっかけられていた。
「やぁっと、目覚ましやがったか。いつまでも、裏門前で寝てんじゃねぇよ。さっさと失せな。さもなきゃ死刑だとよ。ったく、何が勇者だ。臭ぇんだよ糞尿やろう!!」
一介の門番からの恫喝で、精神異常が起きるとは・・はは、情けない。
===称号取得===
【失禁勇者】
大勢の権力者の前で、糞尿を漏らし気絶したものに与えられる称号。
臆病さ能力値 開放
戦闘時:全ステータスー1
==========
なんて、恥ずかしい称号なんだ!!!?ってか俺・・気絶だけしゃなくて、大勢の前で漏らしたのか?・・これが現実だったら、死にたくなるな。しかも戦闘時に、全ステータスー1だとぉ?!・・・、ははは、ははははっ・・まぁでも、きっとレア称号なことは間違いない。
おっと。門番がすごい睨んでる。
「ご、ご迷惑をおかけしました。」
とにかく、この場を離れなくては・・さてと。とりあえず、ステータスと、スキル、持ち物を確認しなくては。
俺は、王城の裏門を背に歩き始めた。
===ステータス===
ID:ミナト
レベル1(0/100)
職業:薬師
称号:糞尿の勇者
生命力:10/10
マナ:1/1
能力値:0
重量:10/10
体力:1 筋力:0 知力:0
胆力:0 洞察力:0 素早さ:0
器用さ:0 風格:0 臆病さ:1
===========
わかってはいたが・・なんて貧弱なレベル1なんだ。HP10て、スライムにも殺されかねんではないか。これはしばらく、、王都から出ることは控えるしかないな。
・・ん?才能のステータスが消えてる?そうか、才能は一度設定したら調節不可能だから消えるのか。まぁそのほうが鑑定スキルで、看破される事もないから都合いいか。
===スキル===
パッシブ:<薬学への理解 Lv1>
薬品作りの効率が5%上昇
=========
お、職業ごとに設定されている初期常駐スキル。よかった・・。
普通だったら、難易度Fのクエストを失敗する事はあり得ない。本来なら、プレイヤーは王様から支援金として10金貨をもらって、初期装備を買い揃えることができる。しかも、始まりの街である此処では、勇者の称号持ちは待遇が良く、クエスト報酬も通常の1.2倍になる。もちろん、クエスト難度はE〜Fなものしか無いけど。
===インベントリ===
・城下町の地図
============
うわぁ、地図だけかよ。まぁ仕方なしか。おそらく・・勇者召喚の儀に失敗したから王宮から貰えるはずの、支援品が貰えなかったんだな。
俺は空を見上げた。雲ひとつない青い空、赤煉瓦の王城、赤煉瓦の城下町、全てが美しいのに・・。
「あぁ、まじで無一文スタートかよ・・。」
【作者からのお願い】
この下にある【☆☆☆☆☆】から、ポイント評価することが出来ます!
☆1つにつき2ptで1人10ptまで応援することができます!
評価してもらえないと、全く続きを書く気が起きないので、
続きがいち早く読みたいと少しでも、思ってくれた方は評価とブックマークをよろしくお願いします!!
更新速度や文量に大きく作用しますので、何卒よろしくお願いいたします!!!