第一話「脱サラプロゲーマー」
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V R M M O R P G(Virtual Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)
『天邪鬼<Amanojaku>』。
俺の自慢のゲーム・コレクション部屋で、ビニール袋から取り出された新作ゲームの保護フィルムを剥がした。新作パッケージから香る、独特の無機質な匂いが俺の機嫌をぶち上げた。
こいつをプレイするのが待ちきれなかっっっっったんだ!!こいつはそんじょそこらのVRゲームとは訳が違う。今までのVRMMORPGといえば、やれ魔法だ、剣だ、魔獣使いだと派手な職業ばかりに焦点が当てられてきた。
だけど、ゲーム制作会社”エリート”が今冬発表した『天邪鬼』、こいつはなんと!派手な職業にプラスして、生産職を追加したファンタジーゲームなのだ!!!まぁこれまでのタイトルでも、生産職がなかったわけではないが、特筆すべきはそのリアリティである。
俺は早速、株式会社マニーが開発したPW(Play World)に、『天邪鬼』のディスクを挿入した。ダウンロード版もあるのだが、コレクター気質の俺にはどうにもデータでゲームを買うことに抵抗がある。
PWは、昔の映画になるが『メトリックス』というSF映画に出てくるような、電脳世界にフルダイブできる家庭用ゲーム機だ。俺は今年で32になるけど、初めて電脳世界にフルダイブできるようになったのは、70年前の第三次世界大戦で使用が確認された。
それから70年の時を経て、さまざまな電脳世界における法整備がなされて、ようやく一般人が誰でも電脳世界に旅立てるようになった。
この時代に生まれることが出来て、本当によかった。父さん母さん感謝します。もちろん爺ちゃん達にも。
「Play World」
俺がそう呼びかけると、ゲーム機の電源が入り起動音がする。そして俺の意識がPWに吸い込まれていった。
目を開けると、PWのホームの中にいた。ホームは色々選べるのだが俺は初期画面のままにしている。
あたりは一面青色で、PWで出来る機能がシステマチックに並んでいるだけ。
そして俺は迷わずに『天邪鬼』を選択する。
”天邪鬼のインストール終了、それではいってらっしゃいませ”
システム音がすると同時に、パッケージイラストが目の前に現れて、オープニングパレードが始まる。俺の目の前、そして周りで実際にキャラが動く。ほんとにこのゾクゾクがたまらない、毎回鳥肌が立つ。
ナレーションが始まった。
【 太古の昔、世界は一切の暗闇に包まれていた。
その暗闇に訪れた神々は、エデンの園を築き神事を行なった。
次々と暗闇には光が当たり、世界が色鮮やかに形を持ち始め
神々の創造物で満ちていった。
世界を創り終えた神々は、創造主として
エデンの園から下界を睥睨しその様子を楽しんだ。
いつの間にか、神々同士で争いが起きた。誰の創造物が最も凄いのか、と。
いつしか、何も創っていなかった一人の神を馬鹿にするようになった。
馬鹿にされた一人の神は形を持たない、それも男なのか、女なのか。
相手の心を読める神は、音と合わせて余計に傷ついた。
エデンには自分の居場所はないと悟り、下界へと降臨した。
そして遂に、玩具を見つけたのだ。
彼らと遊ぶために、神は鬼となり悪魔を創り出した。
人々はそれをモンスターと呼び戦った。
人々は疲弊し、度重なる艱難辛苦にとうとう倒れようとしていた。
人々は最後の望みをかけて、勇者を召喚しようとしている。
いつしか魔王と呼ばれるようになった天邪鬼を、倒してほしいと
人々は神々に祈りを捧げている。 】
「・・・おぉ。かっこいい導入だったなぁ。見た感じ、いろんな種族もいたしみんなで協力して魔王天邪鬼を倒そうって感じか。まぁありきたりだけど、フルダイブしてるから世界観さえあれば楽しめそうだな。それに俺はボス攻略とかどうでもいい!コツコツアイテム集めて、お金貯めて、NPC彼女作りたい!」
そんなことを考えていると、俺はどこかのお城の謁見の間に立っていた。そして俺の足元には光り輝く魔法陣が展開されていた。すると目の前にウィンドウが現れた。
==ここでは、キャラクター作成をして頂きます。==
あぁ、キャラ創成フェイズか。
ここでは、自分がこのゲームで使うキャラクターの外見を決めることができる。例えば、自分で外見を決めるのが面倒だったら、ランダム選択でPWに搭載されているAIが勝手に決めてくれる。あとは、現実世界での自分自身の姿も完全再現することも可能だ。まぁあまり自分自身を投影する奴はいないが・・。
もちろん俺もその口で、頭のてっぺんから爪先、肌の質感、髪の毛、眉毛、まつ毛、毛という毛に至る一本まで、キャラデザを怠ることはありえない。
キャラデザを始める事・・・10時間が経とうとしていた。後で変更出来ない分、これくらいが平均的な創作時間だ。とはいえ・・疲れた。
今回のコンセプトは、”マッチョな金髪ロング翠眼冷血貴公子”である。
・・・言いたいことはわかる。ゲームでネタに走らないとは何事だと言いたいのであろう?
だが言わせてくれ、俺は全ての道を既に経験済みなのだ。
しかし、このタイトルだけはガチでやると心に決めていた。『天邪鬼』は、生産職に光を当ててくれたこともそうだが、NPC(non play character)と自由恋愛が可能なのだ!!!!
つまり俺は人生で一番浮かれている。そんな大事なタイトルで、できるだけ外見的な要素で、相手の恋愛対象外になることだけは避けたい。と言うのが本音である。なぜこれほど必死なのか・・それは、彼女いたことない=年齢の俺にとって、千載一遇の好奇だからである。
その名も・・”電脳彼女大作戦”である。
俺の野望については以上だ。
===キャラクターは、これでよろしかったですか?===
YES!!
===決定後二度と変更出来ませんが、本当にこのキャラクターでよろしかったですか?===
HELL YES!!!
===それではキャラクター名を入力してください。===
くっ・・・。ここまで俺は恥ずかしげも無く、ガチの理想像から導き出したイケメンキャラを作った。そしてそのキャラクター名は、もちろん・・・
===キャラクター名は、『ミナト』でよろしかったですか?===
・・・YES。
===現実世界の名前との重複は、電脳モラルの観点からおすすめはしていません。それでも名前は変更しませんか?===
グフッ・・・!!システムから攻撃を受けただと?心から吐血を感じる。
ゲームで本名を使えば現実世界で特定されて、犯罪事件に巻き込まれることもある・・。
だから、オンラインゲームで本名はご法度・・知っているよ!!それでも、彼女に俺の本名を呼んでもらうにはこうするほかない・・故に我、退かず!!
本名でBIG YES!!!
===キャラクター作成お疲れ様でした。続いて、職業の選択をしてください。===
ふぅ、遂にきたか。『天邪鬼』には100の職業が存在する。また、一つの職業を上限まで成長させると、上級転職といってハイランクの職業に進化できる。もちろん他の職業をレベル1からやり直すことも可能だ。
そして俺の選択する職業は・・・薬師である。薬師は、主に回復アイテムを生成出来る。なぜ俺がこのジョブを選ぶかというと、コレクターとしてより多くの素材を扱うことができるからである。例えば、回復アイテムの素材で扱う種類は、植物、モンスター、鉱物と全域に及んでいるのだ。
すべての素材を薬に変えることだって可能だ。つまり、すべての素材収集が可能になることを意味している。
===職業:薬師でよろしかったですか?一度選択すると、転職上限レベルまで、他職業への転職は認められません。===
ゲームに注ぐ時間こそ、我が人生、一片の後悔なし。YES。
===それではステータスポイントを割り振ってください。===
おっし、これが本命よ。ここをミスると、他プレーヤーに大きく水をあけられることになるんだ。ジョブごとにスキルの能力値が存在するし、能力値同士が提携してることもある。
つまり何が肝要か・・これはコンセプトの戦いである。
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ステータスポイント:100
【ミナト】
体力 :0
筋力 :0
知力 :0
胆力 :0
洞察力:0
素早さ:0
器用さ:0
風格 :0
才能 :0
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これが現状の俺か。まぁ、生産職なら普通はこんな感じに割り振るだろうな・・。
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ステータスポイント:0
【ミナト】
体力 :5
筋力 :5
知力 :20
胆力 :10
洞察力:5
素早さ:5
器用さ:30
風格 :10
才能 :10
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生産職に求められるのは、アイテムを作る技の習得、そして実際に作る職人芸、最後にそれを売る商才だ。この三つが主に求められる。アイテムを作る技は大体が”技術書”を読めば会得できる。スキルブックを読む為には、知力が必要になる。高度な技術書になればなるほど、知力が高くないと読むことができない。
二つ目は、アイテムを実際に作ることだが当然、器用さが求められる。ハイティア・アイテムほど繊細で高度な作業が求められ、器用さなしではアイテムは生産できない。
三つ目は、自分で作ったアイテムを人に売る商才だ。人に物を売るときに商品に付加価値をつけたほうが、商談はスムーズに話がまとまり契約ができる。そこで大事なのは、相手の威圧に屈しない胆力と風格である。付加価値は主に名声Pの多さに比例する。名声ポイントは、数多くのクエストをクリアするか。生産したアイテムを大量に売り、市場のシェアを独占したりすると得られる。
まぁ生産職のステータスでは、これらを気にしてバランスよく割り振ることが望ましい。だがあくまでこれは一般論、ライトユーザー向けの話。つまりプレイヤーの70%にはって話、Do you understand?
それじゃ俺のステータス割り振り、行っくぜぇぇぇええええ!!!
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ステータスポイント:0
【ミナト】
体力 :1
筋力 :0
知力 :0
胆力 :0
洞察力:0
素早さ:0
器用さ:0
風格 :0
才能 :99
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はい、どーーーーーん!!才能に極振りでござる。体力だけは1以上ないとシステムが認めてくれないから仕方ない。俺がなぜ、才能にステータスポイントを極振りしたかだが・・主な理由は才能ステータスだけは、後に加算できない為だ。
つまり、今後俺がレベルアップで手にするステータスPは才能に割り振ることができない。つまり才能Pの上限は、99なのである!
メリットはただ一つ・・
それは、才能にステータスを割り振っていないプレーヤーと、圧倒的能力値格差が後々出てくるからだ。
もちろんデメリットもあるし、正直結構ハイリスクである事も事実だ。まず第一にメインクエスト進行度が圧倒的に遅れること。当たり前の話だが、バランスよく割り振っていれば始まりの街で起こるクエストを消化して、スムーズにレベルアップを図れる。
それに対して俺は、しばらく何もできない。ステータスが足りなくて、技術書を読むことはおろかアイテムも生産できない。そんな生産職にこなせるメインクエストどころか、サブクエストすら存在しない。実質永遠にレベルアップできないのである。
なら如何するのか・・ゲーム内で訓練する他ないのである。
ステータスを上げるには、レベルアップで配布されるステータスPを割り振るか。ゲーム内で、現実世界と同じように訓練をして地道にコツコツあげる方法のふた通りである。
要は、訓練でのステータス上げは理不尽なほどに非効率的なのだ。
しかし、俺は例外だ。
なぜなら・・・・・。
”最高の生産職として、高額アイテムの収集、生産を生業にする為に!本日付で、会社を退職してきたのである!!”
「・・・ふふふ、我ながら見上げた覚悟よ。我がリアルは此処にあらず・・この世界に骨を埋める所存。」
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