魔法競技大会準備 1
「来月は魔法競技大会が行われる」
「君たち一年生は初めての参加だからこれから詳しいことを説明する」
「この大会は計10種目あり、クラスからそれぞれ代表者を選出する」
「競技の内容だが、1種目目は魔法による長遠距離射撃の精度を競い合うスナイピングだ。2種目目は・・・・・・」
それから一通りの競技の紹介をして俺たちのクラスは代表者選びが始まった。
俺は最終競技のバトルロワイアル形式の対人競技に選ばれてしまった。
クラスの人たちが言うにはこれまで何度も魔獣に襲われてなお生きて帰ってきていることから、生存力はクラス1だといわれ反論する余地もなく代表に選ばれてしまった。
「選ばれた代表者の人たちは放課後競技ごとに指定された場所に集合するように」
「よりにもよって、どうして俺が…」
「まぁ、選ばれちゃったらしかたないよね」
「リューヤの生存能力が高いのも事実だしな」
「たかが競技大会に生存能力とか関係するのか?」
「確かに競技性重視のものだけど実際他のクラスの魔法が飛んでくるからな、もしAクラスの魔法を食らったりしたらいくらリューヤでもただじゃすまないかもな」
「まったく、損な役回りだよ」
「私たちも準備とかお手伝いしますから、頑張りましょう!」
「頼むよ、じゃあ俺行かないと」
俺は指定された教室に向かった。
教室に入ると既に3人の生徒が座っていた
俺は空いていた席に座るとしばらくして最後の一人と教師が入ってきた
「全員いるな」
教師は一人一人の顔を見た
「今からお前たちの行う競技について説明する」
「お前たちには学園が用意した特別なフィールドでバトルロワイアルをしてもらう」
「ルールは単純で、全員好きな魔法や武器を使って戦ってもらう。ただし、回復が不可能なほどの傷を負わせたり、死に至らしめるようなことをした場合は王国の地下牢に入ることになるから十分承知しておくように。」
「また、競技中に部外者から支援を受けたり、指定されたフィールドから出た場合は失格となる」
「当日は多くの来賓の方がお見えになられるため魔法学園の生徒としてこれらの恥ずべき行為をするものなどいないとは思うが、失格者には後日特別な課題が出るので気をつけるように。」
「説明は以上だ」
すると一人の生徒が手を挙げた
「えっと、君は…?」
「ダリオン・バルティアです。」
「ダリオン君、何か質問かね?」
「はい、ルールによると試合にはなんでも持ち込めるとのことでしたが、魔道具の中にはかなり危険なものもあります、その中には使用者を隠ぺいするものもあると聞きます。そのようなものが持ち込まれないような対策はされているのでしょうか?」
「参加者には試合前に身体チェックを行うことになっている。」
「万が一そのようなものが見つかればその時点で失格となるため問題ないよ」
「他に質問はないかね?」
「では、以上で説明を終了する。来週再び集まってもらうので忘れずに来るように」
そう言い残し教師は出ていった。
俺は帰り道で作戦を考えた。
現状俺は1対1でやり合っても魔法を使う相手に勝てるとは思えない。
それに、俺は別に勝ちたいとも思っていない。
仮に他のクラスの人に勝ったりしたら変にに注目を集めてしまうかもしれない。
もしAやBなどの代表者に勝ったとしたら、学校に改めて俺の魔力や身体の調査をされてもおかしくない。
そんなことになれば魔力がないことがばれてしまう。
「まぁ無難にやられて、敗退するのが丸いな」
目立たずあっさり負けて終わる。
これを軸にうまくやられる方法を模索することにした。
1番の理想はDクラスの代表者に敗れることだ。
魔法も他のクラスよりかは弱いだろうしDクラスの人に注目している人も少ないだろうからだ。
なんなら負けるかわりに弱い魔法を使って、などと口裏合わせるのもいいかもしれない。
とりあえずDクラスの代表者と話す機会があったら聞いてみることにした。
それから一週間が経ち再び代表者が集められた。
この一週間で少しだけ他の代表者について知ることができた。
始めにAクラスの代表ダリオン・バルティア、彼は貴族の家出身で、幼いころから剣術を学んでいる。その実力は昨年の剣術大会15歳の部で優勝しているほどだそうだ。
Bクラスの代表はノイラ・ステイン、Bクラスの学級委員を務めていたりするがクラス内からはあまり好かれていないらしい。
Cクラス代表はミナ・ルータンス、彼女は夏休み直前に別の魔法学園からの転校生らしい。
Dクラスの代表はワーネム・ヘルスタロ、医者の息子で頭はいいらしいが、魔法が不得意らしい。
「本日は競技で使用するフィールドを紹介する。」
俺たちは校門の前に止められた馬車に乗り込んだ
しばらく進み城門を出て王都を出た。
「試合会場って王都の外なんですか?」
Aクラスのダリオンが尋ねた
「そうだ、毎年この競技のために1からフィールドを作っているんだ」
「王都の外とはいえ危険はないから安心したまえ」
俺たちは15分程馬車に揺られて目的の競技フィールドに到着した
フィールドはかなり広く幾つもの建物が並び、まるで王都の町の一部を切り抜いたような場所だった。
「市街地戦ですか…」
Bクラスのノイラがつぶやいた。
「そうだ、お前たちにはこの場所で競技してもらう」
「もちろん本物の王都とは違って無人の町だし、これらの建物を壊したりしても問題ない。」
それから俺たちは教師に連れられて、フィールドの周辺を約2時間ほどかけて一周した。
「フィールドの中には入れないのですか?」
Dクラスのワーネムが尋ねた
「悪いが本番まで入ることはできない。君たちには適応力も競い合ってもらうためこのフィールドの詳しい構造などを教えることはできない」
「では、そろそろ帰るぞ」
俺たちは再び馬車に乗り、学園に戻った。
「よし、このメンバーが次に顔を合わせるのは本番だ。それまでにしっかりと準備を整えておくように」
そう言われ俺たちは解散となった。
とりあえず俺は残りの2週間でいろいろと準備をするため、まずは以前考えた作戦を実行するためDクラスの代表者に話をしようとしたが、彼はもう帰ってしまっていた。
正直彼の協力を求めるのが一番なのにその機会を逃してしまった。
念のため俺は他にもいい作戦がないか考えながら家に帰った。
家に着くと一通の手紙が届いていた。
「例のものが完成したから明日取りに来てくれ。ゲント」
俺は待ちに待っていたものを受け取りに明日グリトの家に行く。