魔剣を求めて
かれこれ学園に入学して3か月が過ぎたころ、俺たちは学期末試験に臨んでいた。
この学園には学年末に進級試験があるが、それとは別に学期末に各クラスごとに試験が行われる。
魔法を使う試験や戦闘技術を測る試験がある中で、俺たちEクラスは魔法基礎知識を問われる筆記問題をやっている。
問題の内容は例えば、魔法の種類について。
この世界の魔法は基本的に火、水、風、地、雷、体の6つの属性で構成されている。
体の魔法とは、身体能力向上系の魔法や、治癒魔法などが含まれ、他の5種とは違い人類が長年かけて発明してきたものだ。
また、基本属性以外にも光と闇の属性があり、闇属性は魔獣が持つ魔力のこと、光属性は人類が魔獣に対抗するために作り上げた対魔獣用属性のことである。
これ以外にも、魔力についてや戦闘における心構えなど退屈な問題ばかりだった。
普段の授業で魔法を使うことはなかったため、大体のテストの内容について予想はしていたが、今後いつ魔法を行使しなければいけない試験が来るかわからないため俺は対策を考えることにした。
そして学期末テストも終わり、俺たちは夏季休暇に入った。
俺はこの夏休みの間に魔法が使えないことをごまかす手はずを整えることにした。
そのことで、俺は今日グリトと会う約束をしていた。
「わざわざ俺のわがままに付き合ってくれてありがとう」
「構わないぜ、それに俺の親父も歓迎だって言ってたし」
「でも、リューヤが武器作りに興味があったなんて」
「まぁな、俺は苦手な魔法を補うために武器を使うから」
「よし、じゃぁさっそく工房をみせてやるよ」
俺はグリトに頼んで実家の鍛冶屋を見学させてもらうことになっていた。
彼の家のはこの都市でも古参の鍛冶屋で有名なのだ。
ただ、彼には言ってないが俺はここに魔法を使えるようになる可能性を見出したのだ。
「ここが、うちの工房だぜ」
「すげー広いな」
「まぁな、ここらじゃ最高の鍛冶屋だからな」
そうこうしていると奥の部屋からひげの生えた大男が一人出てきた
「よく来たな」
「お前がリューヤだな、俺はグリトの父のゲントだ。よろしくな」
「はじめまして、リューヤです。今日はよろしくおねがいします。」
「まぁ君は息子を助けてくれた命の恩人だからね、大歓迎だよ」
「それで、今日はどんなものが見たいんだね」
そう言ってゲントは工房の椅子に腰を掛けた。
「魔剣について知りたいんです」
「ほう、魔剣に興味があるのか」
「はい、魔剣の製法や性質などについて教えていただけませんか」
「魔剣か、君は剣を使うのか?」
「はい」
「それで、魔剣について知って君はどうしたいんだい?」
「俺は・・・自分用の魔剣が欲しいんです」
この機会を逃せば今後魔剣を手に入れるチャンスがないかもしれないと思い一か八かで頼んでみた
ゲントは少し考えて口を開いた
「わかった、ただし一つだけ条件がある」
「条件ですか?」
「俺に君の剣の腕を見せてほしい」
「構いませんが、どうしてですか?」
「魔剣を扱うには最低限の実力が必要だからだ。」
「そもそも魔剣は剣に魔法を織り込んで作るもので、使用者が魔力を送り込むことで効力を発揮する魔道具だ」
「魔剣に限らず魔道具の大きなメリットは自分の発動できないレベルの魔法も発動することができるということ。」
「しかし、魔力さえ送り込めば誰でも発動できるため、使い方次第では制御できず大事故につながることがある。」
「以前、遠くの町で5歳の子供が偶然魔剣を拾ってしまったのだ。子供は魔剣とは知らず剣を握ったが魔力の制御が不慣れな子供は無意識に魔力を送ってしまい、結果魔剣を制御できず無秩序に魔法が放たれてしまった、子供は魔力を吸われ続け魔力欠乏症により意識不明の重体、またその町は魔剣から放たれた魔法により壊滅的なダメージを受けたのだ。」
「それゆえ、魔剣を扱うにはそれ相応の剣技や胆力が必要なのだ。」
「だから、君をテストしたい」
「わかりました」
「よし、なら準備をしたいから明日改めてうちに来てくれ」
そう言ってゲントは奥の部屋へ戻っていった。
「リューヤお前マジで魔剣が欲しいのか?」
「話を聞く限りじゃ相当危険なものだぜ」
グリトは不安そうに俺を見つめた
「剣を使う者として、魔剣は必ず必要だ」
「だからこそ明日絶対俺の実力を証明する」
俺はそう言い残してグリトの家を出た
今日は魔剣をもらえる可能性ができただけで十分の収穫だった。
ただ明日魔剣を使えるだけの技量を見せなければいけないためまだ安心はできない。
俺はコンディションを万全にするため早めに寝ることにした