ガラの森
「只今より、ガラの森サバイバル訓練を行う」
「持ち物は学園が支給する、テント、人数分のナイフ、ガラの森の地図、以上だ」
担任のロイス先生の話が終わりガラの森での7日間のサバイバルが始まった
「とりあえず、テントを立てるか」
グリトはそういうと支給されたテントを組み立て始めた
さすが鍛冶屋の息子だけあって器用で、あっという間にテントを組み立てた。
そのあとは事前に決めておいた役割分担に従って行動を開始することにした
グリトは森の植物を使った釣り竿の作成。
リンは、食べられる木の実の採集。エリネは焚き火用の枝集め
俺は周辺の探索。
2時間後に集合することにして、それぞれ仕事にとりかかった
―――― 2時間後 ――――
「お疲れ、みんな成果はどうだった?」
「釣り竿は無事完成したぜ、まぁ実際に釣れるかはやってみないとわからねぇけどな」
「焚き火用の薪も十分集まったよ」
「私もいろいろ食べれる木の実や果物とってきました」
「リューヤ、お前はどうだった?」
「かなり遠くでだけど魔獣のようなものを見かけた。黒色で猫っぽい感じの。」
「もしかしたら、ガラ猫かも…」
「ガラ猫?そいつを知っているのかリン?」
「うん、ガラの森の生物については調べてきたけど、見た目の特徴的には多分ガラ猫だとおもう。」
「ガラ猫について教えてくれないか」
「ガラ猫は名前通りガラの森にすむ猫型の魔獣で、猫ってついているけど草食の魔獣だよ。基本的に人を襲ったりしないけど縄張り意識が強いから縄張りに入ったら襲われる危険がある」
「なるほど、とりあえず俺が見かけたのはかなり遠くだったから、とわいえもし見かけたら近づかないよう気をつけよう」
とりあえずは問題ないと思い、俺らは昼食をとることにした
昼食はリンが採ってきた木の実や果物を食べた
「初めて食べたけどこの果物ちょー甘くて美味しい!!」
「それはリシの実だよ。生産するのが難しくて街ではあまり出回ってないからね」
「俺も初めて食べるものばかりだけど、どれもとてもおいしいな」
「たしかにおいしーけどさ、俺はやっぱガッツリしたもんたべてーよ」
「ならこれを食べ終わったら釣りをしに行くか」
「おうよ!たくさん釣るぞー」
こうして俺らは昼食を済ませると近くの川に釣りをしに行くことにした
それから数時間、日が暮れ始めるまで釣りをしていた。
「たった4匹…」
グリトは残念そうな顔で言った
「まぁ人数分釣れただけよかっただろう」
俺はそういって釣れた魚を串にさした
こうして俺らのガラの森サバイバルの1日目が終了した
それからというもの、とくに事件が起きることもなく楽しくサバイバルを満喫していた。
サバイバル開始から5日目の夜のことだった
晩飯を食べ終え就寝準備をしていた時遠くから爆発音が聞こえた。
俺たちはテントを出て音のした方へ向かった。
その道中で爆発音の方から一人の男が走ってきた。
「助けてくれー、助けてくれー」
男は泣き叫びながらこちらに向かってきた。
「なにがあったのですか」
俺はその男に尋ねた
「魔獣に、魔獣に襲われたんだ」
「とにかくまずはここから逃げましょう」
そういって俺たちは男をテントまで連れてきた。
そこで俺たちは男に詳しく事情を聴いた
男によると自分は森に貴重な果物を採りに来たという。
そこで夢中になりすぎてガラ猫の縄張りに入ってしまったらしい。
そこで、ガラ猫に遭遇してしまい男はとっさに攻撃魔法を放ってしまい、反撃されてしまったということらしい。
「とにかく夜は危険だから、明日の朝までここにいましょう」
俺はそう提案した
「悪いな、迷惑かけてしまって…」
男は申し訳なさそうに言った
「いや…今すぐ逃げたほうがいいです。」
リサがおびえた表情で言った
「どうしてだい、夜は視界も悪くどこで魔獣と出くわすかわからない。朝まで待った方がいいんじゃないか?」
「ガラ猫はとても鼻が利くんです。私たちのにおいを追ってここまでくるかもしれません」
それを聞いてエリネがテントの外を確認しに行った
「どうやら少し遅かったみたい」
そういわれテントの外に出るとすでに周囲はガラ猫の群れに囲まれていた。
「ど、どうしましょう」
「もう戦うしかなさそう」
俺はそう言ってナイフを構えた
「私たちで勝てますか」
「わからない、ただこのままいても一方的にやられるだけだ」
「君たち魔法学園の生徒さんだろ、ならこのくらい魔法で…」
「俺たちあんまり魔法が得意じゃないんですよ、たぶんあなたの使う攻撃魔法がこの中じゃ最強です」
「そ、そうだったのか」
男の顔色は徐々に悪くなっていく
どうやらこの男は魔法学園の生徒に保護されて完全に安心しきっていたのだろう
「リューヤどうすんだよ、まじでこいつらと戦うのか、少なくとも15体はいるぞ」
「俺が目の前のやつを取り押さえるからその瞬間にそこから全員で逃げるんだ」
「それって、私たちの身代わりになるってこと?」
「大丈夫体力には自信があるから、お前らが護衛の人たちを呼んでくるまで逃げ続けるさ」
「・・・・」
「時間がない、走る準備はできてるな」
そう言って俺は目の前のガラ猫にとびかかった
「行け!!」
「すぐに助け呼んでくるからな!」
そう言い残し全員走っていった
俺は全員が見えなくなったころ合いを見計らってガラ猫の首を掻っ切った
それからほんの数十秒ほどでその場にいたガラ猫の首をすべて掻っ切った
後は森の中を少し進みまるで逃げ切ったかのように助けを来るのを待った
それから15分ほどで護衛の人たちが助けに来た。
「君がリューヤ君だね」
「そうです」
「無事でよかった」
そういわれその人たちと森を出た
「リューヤ!!」
班のみんなが泣きながら寄ってきた
「無事でよかったぜ」
「生きててくれてよかった」
「ごめん、私たち逃げて、助けに行かなくて、本当にごめん」
「まぁ、俺が逃げろって言ったんだし、今こうして生きてるんだから」
「そうかもしれないけどさ、でもあんまり無茶しないでくれよな。せっかく友達になったんだから」
「そ、そうだな」
これまで友達なんていなかった俺に友達ができていたことに新鮮さや少し恥ずかしさを感じていいた
「それで、あのガラ猫の群れはどうなったんだ」
「それは、護衛の人たちがあっという間に倒していたよ」
「そうか!やっぱすげーな王国軍は」
こうして俺たちのガラの森サバイバル訓練は終了した。
―――― 王国魔法軍 第2大隊 バルツ隊長室 ――――
「先日起きたガラの森での事件の報告書です」
「学園の生徒と同伴していた男に事情聴取をした結果、同伴していた男がリシの実の密売人だと判明しました。どうやら当日はリシの実を採りに行った際にガラ猫の縄張りを荒らしてしまったようです。学園の生徒たちは彼に巻き込まれただけとのことでした。」
「つづけて」
「はい、男を逮捕した後に改めて尋問した結果密売相手や依頼主についても吐きました、その情報を基に近日中にはその連中を逮捕できるとのことです」
「了解した」
「それと、一つ不可解な点がありまして…」
「なんだね」
「彼らを襲ったと思われるガラ猫の死骸を調査した結果、全個体とも首を刃物で切られていたのですが…」
「それがどうかしたのかね」
「刃物といっても刃渡り10cm程度のサバイバルナイフのようなもので殺されていまして」
「かなり腕の立つ者がいたんだな」
「ただ、誰がやったのか判明していないものでして、護衛をしていたものに聞いても誰もやっていないと答えていまして、学園の生徒には到底不可能だと思いますし…」
「なるほど、そのことは上層部にも伝えておこう、ご苦労だった」
「失礼します」
「正体不明の凄腕魔獣殺しか…」