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勘違い

「教官は酷いことをしてくれますね」


「ハハハハハ、まぁ君たちが勝手に勘違いしていただけなんだが」


「それもそうですけど、ならもっと早く教えてくれてもよかったじゃないですか」


「まぁおかげで基礎体力訓練は予定より早く済んだんだ」


「そうなんですか?」


「そりゃ他のクラスに比べれば1.5倍は多く走ったからな」


「それで、君はどうして気づいたんだい?」


「以前から教官が訓練場を最後に出るのに、誰よりも早く到着していたんでおかしいなと思っていたんですよ」

「まぁ今まではそれほど気にしてなかったんですけど、今回のことで改めていろいろ考えたんです。俺たちの走っているルートが最速じゃないかもしれないと思って、ほかにルートがないか調べるためにこの学園の地図を見てみたんですよ。」

「そしたら見つけたんですよ最短ルート。その時自分たちが勘違いをしていたと気づきました。」


「私は今まで何度もこの学園の生徒の訓練をしたことがあるがこんなことをしたクラスは君たちが初めてだったよ。」


「今思うと恥ずかしくなってきます」


「まぁこれもいい経験になっただろう。」

「ともかく、明日にはきっと全員が3分以内に来ることになりそうだな。」


そんな会話をしているとようやく他の人が到着し始めた。


「3分10秒、あと10秒だったな。では全員グラウンド走ってこい」



「あ、フレネ!」


「どうしたの?」


「今日の放課後居残り練習する前に一度皆集めてくれる?」


「いいけど、もしかして?」


「俺の考えた作戦で上手くいきそうだよ」


「本当に?!」


「うん、今日試してみたら上手くいったから」


「よかった~、じゃあ放課後よろしくね!」


そう言ってフレネは笑顔でグラウンドへ向かった。


その日の放課後、教室に全員が集まった。


「これから全員が3分を切ることができる作戦を発表したいと思います」


「まじで?!」


「なになに?」


「では、リューヤ君どうぞ」


そう言われ教壇に立った


「えっと、簡単に説明すると俺たちは第3訓練場を出たらそのまま目の前の校舎に入ってそのまま中を通り、第1グラウンド側の出口からでる。これだけです。」


「えっと・・・それっていいの?」


クラスメイトは皆困惑していた。


「説明すると、そもそも教官は3分以内に集合するようにと言っただけで校舎の外側をぐるりと回って走って来いなんて言ってないんだよ。」

「俺たちは基礎体力をつくる訓練だから走っていかなきゃいけないと勘違いしてただけだったんだよ。」

「バルツ教官は俺たちが外周を走ってきたのを見て急遽こんなルーティーンを思いついたそうだ。」

「だから明日は普通に校舎を通っていけば2分程度で着くと思うよ。」


「なんだよ~」

「俺たち間抜けだな~」

「でも、この3日間ちょっと楽しかったよな」


俺は長い間無駄なことをしていたと気づいたら結構落ち込むんだろうなと思っていたが、誰一人として後悔している人はいなかった。


その後は気が緩んだのか少しの間どんちゃん騒ぎをして皆帰って行った。



そして次の日、俺たちは無事に全員3分を切ることができ次の体術訓練へ進むこととなった。


その日の放課後、家に帰ろうと校門を出たあたりでフレネが息を切らして追ってきた。


「ちょっと待って、リューヤ」


「どうしたの?」


「その、お礼を言いたくて。」

「私じゃ多分友達を救えなかったから。」

「だから、本当にありがとう!」


「そんな大したことはしてないよ、それに俺も友達を救いたかったってだけだから」


「でも、私は何もできなかったから」


「そんなことないと思うけどね、フレネのおかげでクラスのみんなは仲良くなれたわけだし、きっとみんなフレネに感謝していると思うよ」

「俺も手伝ってくれる人を募ってくれたり、いろいろと仕切ってもらったり、助かっていたから」

「みんなが変に落ち込まずに済んだのもフレネのおかげだと思うよ。」


「本当に?」


「うん」


「ありがとう」

「なんか感謝を伝えに来たはずなのに慰められちゃったね」

「私だめだね、幼馴染の二人に迷惑をかけてきたから、今こそその恩を返そうと思っていたのに、今度は関係ないリューヤにまで迷惑かけっちゃって」


「別に俺は迷惑だなんて思ってないよ、さっきも言ったけど俺もいろいろと助けてもらったし」


「そうかもしれないけど、私自身が納得できないの、このままでは一生変われないかもって」

そう言って彼女は少し俯いた


「俺が別にフレネは変る必要ないと思うけど」

「大切な友達を思って必死になれて、自分ができることを精一杯やって、これってすごいことだと思うよ。」


「フレネは迷惑だっていうけどそれって考えすぎの勘違いだと思うよ。友達を思いすぎて些細なことでも、もしかしたら迷惑だったかもって勘違いしてるだけだよ。本当に迷惑だと思っていたなら幼馴染の二人が今でも仲良くしてくれてるとは思えないね。」


「二人ともフレネの魅力をよく知っているから彼女たちはフレネと友達でいたいって思ってるんじゃないかな。」

「まともに話したのが数日前が初めての俺でさえフレネはいい人だと思えるくらいだからね」

「なんていうか、もっと自信もっていいと思うよ」


そう言うと俯いていた彼女は顔をあげた。


「ありがとう、すこし心の整理ができた。」

「私、自分に自信持てるよう頑張るよ。」

「でも、たぶんうまくいかないこともあると思う。だからその時は相談乗ってくれる?」


「俺でよければ」


「約束ね!じゃぁまた来週ね!」


「おう、じゃあな」


そう言ってフレネは駆け足で帰って行く


「バイバーイ」


振り向くと夕日に照らされ赤く染まったフレネがこちらに手を振っていた。


俺も軽く手を振り返し家へ帰った。




「おはよー」


そう言って元気に教室の前からフレネが入ってくる


「なんか最近フレネって変わったと思わないか?」


グリトが聞いてきた


「まぁ少し笑顔と元気が増えたかもね」


「確かに、以前は何か遠慮してる感じあったんだよな」


「へぇー、グリトってそういうの気づけたんだな」


「俺は鍛冶屋だぞ!武器をつくるには使用者の骨格や筋肉、性格などあらゆることを踏まえてその人にあった最高の物を作るんだ。」

「だから人間観察は鍛冶屋の十八番なんだぜ」


「そうなんだ」


「なんだ大して興味なしかよ」

「冷てーやつだぜ」


「いやいや、お前にもそんな一面があったなんて意外だと思ったよ」


「まったくなんか馬鹿にされてる気がするぜ」



まぁ、グリト放っておいて、あの日以降フレネは徐々に変わり始めてきたようだった。

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