迅速竜イノベロス
突如として俺たちの目の前に魔獣が表れた
「どうしてこのフィールドに魔獣がいるんだ」
事前に聞かされていた説明によると、このフィールドには魔獣が入り込めない魔法をかけているうえに、何人もの護衛が見張りをしていると聞いていた。
「あいつは、迅速竜イノベロス。どうしてそんな奴がここにいるんだ」
「お前、あの魔獣を知っているのか?」
「あぁ、以前王国魔法軍との遠征時に会ったことある」
「奴は群れで行動する珍しい大型魔獣で、国が災害レベルに指定しているほどの化け物だ」
「一度怒らせてしまうと暴走し続けるんだ」
「過去にいくつもの町が奴らによって更地にされた」
そんな時、イノベロスがとてつもない地ならしとともに、俺たちの方へ突進してきた
「横へ避けろ」
ダリオンが咄嗟にそう言い俺たちは間一髪で突進をよけれた
奴の突進はまさに迅速竜で、まるでさっき食らったダリオンの魔剣の攻撃のようだった。
「バケモンだな・・・」
「で、俺たちであいつは倒せるのか?」
「あいつの攻撃はあの突進しかないため避けるのは容易いが僕の轟雷との相性が悪いんだ。」
「僕は一度構えをとらなければいけないのに対し、奴はとてつもないスピードで突進してくる」
「それに、そもそも僕はいま轟雷を使えないんだ」
「そうなのか?」
「あのレベルの魔法を連発していたら魔剣がもたないんだよ」
「あと10分は使えない」
「なら、今は逃げるしかないか」
「そうだね」
「おい、そこにうずくまってるお前も逃げるぞ」
そう言って俺たちはできる限り離れるように逃げた。
俺たちは少し開けた場所に出た。
そこはイノベロスに荒らされた形跡が残っていた。
「瓦礫の山だな」
「おい!あれ、人じゃないか?」
ダリオンがそう言って瓦礫の中に横たわっている人を見つけた。
「君はBクラスのノイラじゃないか」
かなりの大けがを負っていたが、生きていた。
「君…たちは…」
ノイラはかすれた声を発した
「大丈夫、ちょっと待っているんだ」
ダリオンはそう言うとノイラに治癒魔法をかけた。
「僕には応急処置程度しかできないけど、少しは楽になったと思うよ」
「助かった」
「それで、一体何が起きたんだい?」
俺はノイラここで起きたことについて聞いた。
「俺は、試合が始まって少しの間動かずに待っていたんだ。」
「そしたら一人俺の方にやってきたんだ。」
「その人って、」
「Cクラス代表者のやつだよ」
「近くに来たそいつは魔道具を使って魔獣を召還したんだよ。」
「俺は突如目の前に現れたそいつに思いきり吹き飛ばされて気を失ったんだ」
「なるほど、きっとCクラスの人が使ったのはテイムチェーンという魔道具だよ。」
「テイムチェーン?」
「テイムチェーンは事前に魔獣と使用者の体に鎖を巻き付けることで一度だけ魔獣を召還できる魔道具だよ。」
「僕はさっきイノベロスの尻尾に鎖のような物が巻き付いてるのを見たんだ。」
「遠すぎてハッキリと見えたわけじゃなかったんだけど、ノイラの話を聞いて確信したよ。」
「あれはテイムチェーンだったんだ」
「でも、どうしてそんな魔道具を・・・」
「いや、まずはこれからどうやってあいつを倒すか考えよう」
ダリオンはこれからの作戦会議を始めた
「お前ら正気か?あんな化け物とマジで戦うつもりか?」
さっきまでうずくまっていたワーネムが言った。
「そもそもこのフィールドの外には護衛の人がいるんだろ?」
「なら俺たちはフィールドを出てその人たちに助けを求めればいいだけじゃないか?」
確かに彼の言っていることは正論だった。
俺たちはフィールドを出てはいけないという試合のルールに勝手に縛られていた。
一人は怪我を負っている状態だし、無理に俺たちで仕留めようとするのはかえって危険だと思った。
「それもそうだね、今は安全第一だ」
そう言ってダリオンはノイラに肩を貸してフィールドの出口に向かい始めた。
そんなときだった。遠くからすさまじい地響きと共にヤツが俺たちの目の前に現れた。
「なんてタイミングだ」
そう言うとダリオンはワーネムにノイラを預けた
「ここは、僕が引き留めて時間を稼ぐからその間に君たちでフィールドの外へ逃げてくれ」
ここからフィールドの出口まではまだ少し距離がある。
「はぁ、」
俺は少しため息をついた
「ワーネム、さっさと援軍を呼んできてくれよな」
そう言って俺はダリオンと共闘することにした。
「そんなに時間の余裕もないんだ、だから早く行ってくれ」
そう言われたワーネムはノイラと出口へ向かった。
「君も一緒にフィールドを出てもよかったんだよ」
「まぁ懸念にすぎないかもしれないけど俺の予想では援軍は来ないだろうからな」
「どういうことだ?」
「それについては後で話す。今はこいつをワーネム立ちから遠ざけるぞ」
そう言って俺とダリオンはイノベロスを出口と逆方向へ誘導した。