魔法学園入学
王立魔法学園、マルテール王国が誕生しておよそ2000年、今まで多くの戦争が起きてもこの国が一度も敗戦することがなかったのはこの学園のおかげだといえるだろう。
マルテール王国は古くより魔法技術の研究に力を注いでおり、王国魔法軍を育成するため約1000年前にこの王立魔法学園を創設した。
その後、多くの憲法改正があり今では16歳になるとこの学園に3年間通うことが義務付けられるようになった。
俺はリューヤ・アリウス、今年魔法学園に入学する16歳。
ただ、俺は魔法を使うことができない。
この世界の人間は生まれながらにして魔力を持っている、それが常識で過去にこの常識から外れたものは存在したことがなかった。
しかし、俺は魔法が使えない。
それゆえに、5歳のころ異端児として両親に捨てられた。
そのため俺は孤児院で育った。そこで俺は体術や、魔法知識、数学や外国語といったあらゆることを教え込まれた。
そこでの生活は確かに過酷だったが、異端児として生まれた俺を一人で生きれるように育ててくれた院長には感謝している。
そして、16歳になった時俺は院長にこう言われた
「お前には魔法学園に通い、卒業してほしい」
正直魔法の使えない俺には不可能だと思った。
しかし、初めて院長に頼みごとをされた俺はすぐに承諾した
こうして俺はこの学園に入学した。
――― 入学式 ―――
入学式でこの学園のことについて分かったことがある。
年に一度学年末に行われる試験に合格することで進級が認められるということ。
試験の内容は、魔法に関する知識を問う筆記試験と戦闘技術を測る実技試験の2つあるということ。
そんなこんなで入学式が終了し今日は下校となった。
孤児院は学園からかなり遠いため、俺は学園近くのおんぼろアパートに一人暮らしすることになった。
蜘蛛の巣が張っていたり、床は軋むし、雨漏りもする。
ただ孤児院で育った俺からすればこれまでと大して変わらなく、むしろ落ち着く。
俺は部屋に入ってすぐベットに横たわり卒業をするためにどうするべきか考えた。
座学については孤児院でたくさん叩き込まれたおかげでほとんど理解している。
ただ問題は実技試験である。
体術や武術だけであれば問題ないが、魔法学園は魔法軍育成学校であるため魔法を使わない戦闘で卒業できるとは考えられない。
いろいろ考えた俺は魔法を使える同級生の手を借りるのが一番良いと結論を出した。
ただ、魔法を使えない人間をこの世界の人間が手を貸すとは考えられない。
魔法を使えないだけで実の息子を捨てるそんな世界だからだ。
それから少し考えて俺は大まかな方針を決めた。
「魔法を使えないことを隠し、信用を得て手助けしてもらう」
どのみち魔法が使えないことが知られたら終わりだから手段は問わず自分のできること精いっぱいやってやろう。俺はそう決心した。
――――― 翌朝 ―――――
俺は日課のランニングをしていると一人の女の子を見かけた。
こんな早朝に誰だろうと気になり足を止めて彼女の方を見てみる。
朝日に照らされて銀色に輝く美しく長い髪に青空のように澄んだ瞳。
俺は見とれていた。
気づいた時には彼女はいなくなっていた。
俺は彼女のことが気になりつつもランニングを再開した。
アパートに戻りシャワーを浴び、朝食を済ませ制服に着替え家を出た。
学園に着くと新入生は演習場に行くようにといわれた。
1限目のチャイムが鳴った
「これより、クラス分け試験を始める」
「誘導に従い、試験会場に行き指定された魔法を使ってもらう」
「クラス分けは上からA>B>C>D>Eの順番だ」
「では、試験を始める」
そういってクラス分け試験が始まった
列の前から順に試験を受けていき、ついに俺の番が来た。
正直俺は慌てていた。
まさか開始早々に試験があるなんて思ってもいなかった。
入学2日目で退学、そう思っていた。
しかし、試験内容を見て俺は一安心した。
「ここが1-Eの教室か」
そうつぶやいて俺は教室に入った。
試験の内容は提示された魔法を使うこと、魔法が使えないことがばれてしまうと思っていた。
しかし提示された魔法は4種類で上から1級 2級 3級 4級のものだった。
要は、4級の魔法も使えない時点でEクラスというわけだった。
俺はすべての魔法を使えませんと申告し、こうしてEクラスに割り当てられたということだ。
とりあえず俺は安心していた。
徐々に教室の席も埋まっていき、前のドアから一人の教師が入ってきた。
「本日よりこのクラスの担任のロイスです、皆さんよろしく。」
どうやらこの人が担任らしい。
髪は短髪で、身長は170ほどで年齢は20代後半って感じだ。
「さっそくだが4人一組のグループを作ってもらう」
そう言われた俺たちは必然的に近くの席の人たちで4人組を作った
「今作った4人組で来週2泊3日のキャンプ合宿をしてもらう」
「場所はガラの森だ。」
そういうとクラスに沈黙が走る。
なぜならガラの森は魔獣が出る森だからだ。
「そんなところに私たちだけで…危なくないですか?」
一人の女子生徒がロイスに尋ねた
「確かに魔獣が出る森だが、あの森の魔獣はかなり弱い。それに森の監視と生徒の安全のための護衛も用意されている」
「それに、あの森で生き残れないような者はこの先この学園でやっていけない」
「では、来週までに各班ごとしっかり準備しておくように」
そう言い残しロイス先生は教室を出た
皆不安を残しつつも各班内で自己紹介を始めた
「オッス、俺はグリト・マイスだ、グリトって呼んでくれ。実家が鍛冶屋で俺もちょっとした武器や装備なら作れるぜ。よろしくな」
「私はリン・サイン、植物や動物が好きです。よろしくお願いします」
「うちはエリネ・ノース、運動が得意で体力には自信があるよ、勉強はすこし苦手かな。よろしくね」
「俺はリューヤ・アリウス、よろしく」
「おいおい、リューヤそれだけかよ~なんか好きなもんとかないのか?」
「そうだな…まぁ魔法が苦手かな」
「はは、魔法が得意ならこのクラスにはいないだろうよ」
そういってグリトは笑った
それから俺たちはガラの森合宿に向けて役割分担や作戦会議などを行った。
そしてついに合宿当日を迎えた。