82 報告と対処
レオンハルトは屋敷に戻り、次期侯爵としての仕事をしている兄の部屋に入る。ミカエラとしたお礼のデートで感じた違和感に関しては報告や相談をしておく必要があるだろう。
「おや?レオン。お泊まりデートじゃないの???」
「え????流石に恋人でもない女性と一晩なんてできませんよ。買い物をして服とか色々買っておわりです。じゃないと彼女も明日以降も仕事があるわけですし。そうじゃなくて、兄上、ミカエラの護衛は俺が違和感を持つような殺気を持っていたりしますか?」
ユーリは手を止めて弟を見上げるとレオンハルトは空いているソファーに腰掛けて気がついた点について報告をあげる。
「帰り道なんですけれど、下町の人混みの中で露骨にこちらに向けて殺気を向けられたのです。ミカエラを置いて追撃もできませんし、それ以上何もなかったのでとりあえず報告だけです。」
「そうか…下町でとなると心当たりが多すぎるな。とりあえず警備を強化するか…わかったよこちらで考えておく。」
「お願いいたします。」
「…レオン、ミカエラと結婚しろと言ったらどうする?婿入りではなく嫁として。」
「…そうしないと彼女を守れないなら。そうでない限り彼女がそれを望まないと思いますので私は親しい友人でいたいです。」
言葉を選びながら発せられた言葉にユーリはそうか。と、それ以上は聞かないで休むように別邸に帰らせた。
「どうされました。」
「…こっちで仕事をしてヘラルド様にある程度分担しようと思うからお前は頻度を上げてミカエラの護衛をしてくれ。目星があまりついていないからお前が出かけて匂いを覚えてくれた方が何かと楽だ。」
「…わかりました。」
「弟が欲しいと馬鹿正直に言ったらどうしてた?」
「…選ぶのは彼女だし、性格上侯爵家に入りたいとは言わないです。そうなったら非常に不愉快ですが、飲み込む必要はあるかと。その際は事情を話して逢瀬くらい許して欲しいと頼みますよ。」
諦めが悪いというよりもそこまでいくととても潔い気持ち悪さだ。そこまで執着するなら彼女には申し訳ないが自分の護衛を婿として是非とも引き取ってもらいたい。そうすれば我が家からはもちろん、イザークの実家からもヘラルド殿と我が家と懇意にしている女性の配偶者となり、子爵になるのであれば喜んで祝儀をたくさん包んでくれるはずだ。ヘラルド殿も引き取り手がいなかったらミカエラを囲んで自分の愛人としてそのままそばに置きそうだけれどもそれは誰も引き取り手がいなくて良縁が見込めない場合。今のところミカエラにしか欲情できない残念な幼馴染の護衛がいるからそういうことにはならないと思いたいが、あり得るのが彼女が実はとても年上が好みだったらということくらいが懸念なのだろう。
「イザーク、ミカエラは年上は平気そう?」
「ヘラルド様が平気ですから問題ないでしょう?」
「…そうじゃなくてヘラルド殿は若作りだろう?見た目年齢でしか見ていなかったら誤解が生じると思うんだよね。ほら、意地を張って若作り継続しているし。年相応の姿になればいいと思わないか?」
「是非とも御本人に言ってください。私には畏れ多すぎてそのようなこと申し上げられません。」
自分たちが王宮勤になって見た目の変化がほとんどない。異母弟である国王陛下は年相応に老けているのにヘラルド殿は加齢は出ているんだろうけれど、それを表に全く出していない。メイドがすごいのか、ヘラルドの意地がすごいのか…それは誰も知らない。
「とりあえず私はこっちで仕事をしたり護衛も適度に変えるから、イザークは自分の番の護衛をするように。」
「…よろしいのですか?」
「その方が私にとって都合がいい。それだけだ。ただし、無闇矢鱈とデートに誘うなよ。危険が増える。」
それは主人としてどうなのだろう。
「それはあまりよろしくないかと。」
「大事な親友の婚期を逃す方が大問題だ。相手が若いからいいけれど、ヘラルド殿みたいに意地はって独身貴族する理由もないんだ。」
ミカエラの知らないところで色々と話が勝手に進んでいく。彼女が知った頃にはある程度外堀が埋められているだろう。それにユーリはミカエラが持っていない権力を使うことに一切の躊躇いも遠慮もない。イザークは色々考えながらこれからどうすべきなのか考えるしかないか。と、頭を悩ませていた。
それはそれでミカエラと一緒にいられるのは喜ぶべきなのか、彼女が嫌がったら本気で凹みそうだ。
仕事としての護衛をすればいい。休みじゃないのだから。それは今までもできていたのだから以前のように振る舞えばいい。




