16息抜き…?
取り敢えず半個室に近いカフェに入る。レオンハルトがいい匂いと漏らしていたからだ。
「ミカエラ、漏れてた??」
「漏れてましたね。」
「そっか。念の為これ使うね。」
ポケットから魔道具が出てきた。魔石を埋め込んで細かいアクションが刻まれている。
「盗聴防止。」
「魔道具はあまり縁がないので珍しいです。」
「魔石の組合せとアクションを刻むだけだから簡単だと思うよ?」
「そうですね。アクションも派手ではないので…。何を召し上がりますか?」
メニューを見てケーキを選ぶ。
「ミカエラ、俺が出すから食べたいの食べて。」
メニューからひょこっと顔を出して真面目な顔で言ってきた。何を真剣に言っているのだろう。
「男が甘味を食べるのは大丈夫…?」
「食べたいもの食べたらいいでは無いですか。」
「男が甘味食べるのは良くないとかないの?」
「別に…体質が合わなくて食べれないならともかく…」
レオンハルトはやった。と、小さく言って人を呼んでケーキを複数注文した。ミカエラはケーキを1皿頼む。多分レオンハルトの皿だけでテーブルが埋まってしまう。
スイーツもデザインの参考になる…色の使い方もいい。レオンハルトはケーキを丁寧な所作で食べているのだが1口食べるだけでとても美味しそうで幸せ全開という顔をしている。顔が整っているから世間のご令嬢たちには殺傷能力も高いだろう。味わうように咀嚼回数を増やし、恍惚を浮かべケーキにフォークを入れて紅茶を流し込む。
クリームや砂糖、バターと豊富に使っているのに何故胃もたれしないのだろう。
「侯爵家で食べれないのですか?」
「あまりいい顔されないかな。父上や兄上は酒が好きだから。ミカエラは友達とかと連絡取らなくて平気?」
「…えっと私が孤児院育ちって言うのはご存知ですよね?」
「一応…兄上から。」
「孤児院育ちってだけでもあまり良い顔されなくて…友達も多くないんです。というかゼロ…孤児と関わるとろくな仕事に就けないとか貧乏が移るとか。色々偏見もありまして。後ろ盾としても弱くて仕事に困るというか…仕事一筋です。」
「…カッコイイね。自分でなんでも出来るんだろう?」
「何でもじゃないですよ。出来ることだけ。ケーキまだ来ますよね?」
ケーキが来た。レオンハルトはそれで大人気の職人だからカッコイイよ。小さく言っていた。
ケーキを美味しそうに頬張ってなければとてもカッコイイのに。残念な美形だ。
取り敢えず侯爵家の別邸に戻り侯爵夫妻とユーリ様夫妻に渡しておかないと…多分私が家に帰ったら旦那様2名が甲斐性なしとか色々言われるだろう。それは流石に大変だろうから平民流のブレスレットにしておこう。ロズウェルの印は獅子に薔薇の花の蕾。花にするのは宜しくないらしい。獅子は白金で削って薔薇の蕾は結婚した季節の色が良いだろう。侯爵は春の紅白ピンクと薔薇、ユーリ様は冬だから青と白にしておこう。
加工日数3日で仕上げた。
そしてレオンハルトに御手数ですが別邸に侯爵とユーリ様をこっそり呼んでくださいとお願いをした。
「ミカエラ嬢から内密ってなんだろうね。しかも父上もというのは。」
「え、あ…そのお世話になっているお礼にこちらを…お納めください。奥方とペアになってまして…」
箱を開けると一対のブレスレットが入っていた。男性のは少し金属を強めに出して宝石も原石ではあるけれど気持ち大きめにして奥方向けのは細い手首に合うように調整した。
「念の為ギルドを通して鑑定書も付けていますので…プレゼントに宜しければ…」
「ミカエラ嬢、気を使わせたようで済まない…」
「ミカエラ嬢助かったよ。でもこれ結婚した季節の色だろう?誰が…」
「それはレオンハルト様です。」
2人はこの礼は必ず。と、部屋に持ち帰って特別にお願いをしたんだとおそろいとプレゼントをしたようで奥様方から丁寧なお手紙を得ることが出来た。
貴族の奥様が困ったことがあれば助けるというお手紙は今後の商売で力になると思う…
恐怖の登城はいつなのだろう。事前に連絡欲しいなぁ。
「今日はミカエラの仕事に参考なればっていう温室に案内するから仕事用のノートとか筆記用具を用意してね。」
「何処に行くのですか?これ貴族のご令嬢が着るような服ですよね。」
「うん。そういう場所だから。兄上が許可取ってるから大丈夫。練習練習。」
何の練習!?レオンハルトに着いてからのお楽しみと言われて着いたのは王城。
「ヒェッ…」
「見学しておけば当日気も晴れるだろうからって。」
レオンハルトにエスコートをされて向かったのは温室と庭…珍しい草花が綺麗に整えられている。特に温室…見たことの無い花もあった。
「しばらく人も来ないみたいだから自由に見ていいよ。」
「ありがとうございます!!!」
ミカエラは目を輝かせて気になる草花をノートにスケッチしておりレオンハルトは後ろを付いて歩く。
ここ最近で1番喜んだ笑顔のようだった。