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1話・ヤンデレ姉ツンデレ妹ヘタレ僕

 毎朝、僕は寝ているところを、美人姉妹に邪魔される。これは姉妹もち「あるある」なのか? と思って幼馴染に聞いたら「ありえない!」とドン引きされた。うちはどうやら変らしい……。そう思うと、姉妹を意識しはじめちゃって、普通の朝がドキドキの朝に、変わっちゃったんだよね。

 春うらら、今日は高校2年の始業式だ。

 

 

 りんりんりん!

 

 

 

 7時にかけた目覚ましの音が鳴る。ぼくはカーテンの隙間から入る朝日のぬくもりを感じつつ、アラームをとめた。

 

 まだ眠い……。布団をかぶり二度寝する。

 

 

 すーすーすー。

 

 

 カチャリ、とぼくの部屋のドアノブを回す音がした。

 

 ん? ベッドの中に温かく柔らかいものがすべりこんでくる。 甘いスイーツのような香りがした。

 

 

「たーくんの寝顔かわいい」

 

 

 柔らかく、ボリュームのある体が、腕に押しつけられる。


 

「二葉ふたばねえさん……?」

 

 

 ふふふっ、と甘ったるい吐息が近づいてくる。 目をあけたくても開けられないくらい疲れて、ぼくは動けない。

 

 昨晩は幼馴染の四織しおりに借りたモンスターセイバーエロゲRPGを4時までプレイした。10回目の挑戦(5時間半)でやっとノーマルルートクリア。だから、少しでも寝ていたいんだ。

 

 

「……ん。そんなことしちゃだめ」

 

 

 双葉姉さんの二つの大きな胸が、ぼくの顔にしつけられた。く、くるしい。でも眠すぎて体が動かない。一部分をのぞいては。

 

 

「むぐっ! ……」

 

 

 さらに力が加えられた。死ぬ!

 

 

「あん……」

 

 

 

 ドカドカドカ! 階段を上がる音。

 

 

 

 ガチャガチャ! ドアノブを回す音。

 

 

 

 ゲシゲシ! 扉を蹴る音。

 

 

 

 ドンドン! 扉を殴る音。

 

 

 

 

 バーーン! 扉を蹴破る音。

 

 

 

「ふたばーー! なにしてんのーー!?」

 

 

 七華ななかの叫び声がして、僕はようやく目が覚めた。

 

 純白のキャミソールにパンティ姿の二葉姉さんが、僕にしがみついている。

 

 ベッドの脇には金髪にツインテール、 すでにセーラー服を着た七華が、頬をふくらませていた。

 

 

「モンスターセイバーで疲れて起きれない、たーくんを癒して、起こして、 立たそうとしてたの…。ねー、たーくーん」

 

 

「た、た、た、立たすって、いったい何をよーーー!」

 

 

「なにって、ナニじゃない。タークンライズ、なんちゃって」

 

 

「ぎゃー! 健たけるのえっちーーー!」

 

 

 七華が布団をめくり、僕の息子こかんをにらんだ。

 

 

「うぐあっ!!!」

 

 

 僕の元気な股間を見た七華に、思いきり蹴りが入った。タマタマが体にめりこんで、息ができない。体をエビのように丸めてつぶやく。

 

 

「な、な、かちゃん。これは、だめ、だ……よ」

 

 

 しかし、すでに七華はいない。ドタバタと階段を降りる音がした。空手の有段者の蹴りは、やゔぁいだろ。破裂したらどうすんねん。

 

 

「たーくん、大丈夫? わたしに見せて!」

 

 

 二葉姉さんが、僕のショートパンツを脱がそうとする。

 

 

「わー! 二葉姉さん、それだけはやめて!」

 

 

「せっかく、七華が消えたのに…。ぐすん」

 

 

「わかったよ。はい、ハグ」

 

 

「わーい!」

 

 

 僕が腕を広げると、仔猫のように飛びついてきた。

 

  黒髪ロングが僕の鼻に、胸が胸に、 腰が腰にぴったりくっついてきた。

 

 姉とは言え、あまりにもジューシーな身体に頭がくらくらする。

 

 

「きゅーう、じゅー! はい、おしまーい」

 

 

「ちぇー、もう少しぎゅーして欲しかったなー」

 

 

「また今度の楽しみにしてよ」

 

 

 二葉姉さんは、目を潤ませると、うん! と言って僕の手を取ると、今度は本当に立たせた。

 

 身長174センチの僕より10センチ低いから二葉姉さんは、上目遣いだ。

 

 

「またー?」

 

 

「だって一人は怖いんだもん」

 

 

「分かった」

 

 

 二葉姉さんの部屋は全体的に真っ白で、ぬいぐるみとか、 ふわふわしたものが多い。

 

 僕はソファに座ると、目をつぶった。昔から二葉姉さんは、極度のこわがりで一人でいられないたちなのだ。

 

 

「ここにいるから早く着替えちゃって」

 

 

「わーい!」

 

 

 十分後。

 

 

「ねえ、これでどうかな?」

 

 

「うん。それくらいでいいと思う」

 

 

「派手じゃない?」

 

 

「うん。もう少し春らしい色があるとバッチリ」

 

 

 あ、やばっ。

 

 二葉姉さんの目がうるむ。

 

 

「……」

 

 

 さらに、十分後。

 

 

「ねえ、これでどうかな? かわいい?」

 

 

「うん。すごくかわいい! 二葉姉さんの歩く道の男たち、みんな振り向くと思うよ!」

 

 

 あ、やばっ。俺のばか、余計なこと言うな。

 

 みるみるうちに、二葉姉さんの目がうるむ。

 

 

「……。たーくん、私が他の男子にそんな目で見られても、平気なの? おねえちゃん、胸がキュッとしてきた」

 

 

 二葉姉さんの瞳に、大粒の涙があふれ、ぽたぽたと床に落ちる。こうなったらもうダメだ。

 

 泣いた二葉姉さんは、言い方は悪いが面倒くさい。僕は二葉姉さんをぎゅっと抱きしめて言った。

 

 

「ごめん。そんなつもりで言ったんじゃないよ。二葉姉さんは俺だけのものだ」

 

 

「ほんと……?」

 

 

 二葉姉さんは、潤んだ瞳で見上げてくる。うあっ! この目で見られて平気でいられる男子はいないだろう。

 

 

「ほんとだよ。だから、安心して行ってきてね」

 

 

 二葉姉さんの顔がぱあっと明るくなる。素直で可愛すぎる。

 

 

「今日も玄関まで一緒に来てくれる?」

 

 

「もちろん」

 

 

 そこまで言ってようやく二葉姉さんは、安心した顔をした。

 

 

「あんたたち遅い!」

 

 

「「ひいっ!」」

 

 

 七華がすでに作ってくれた朝食を前に、ドスのきいた睨みをきかせる 。

 

 テーブルの上にはたくさんの皿が並べられ、お花畑のように彩りがある。

 

 サラダ、ヨーグルト、スクランブルエッグ、ウィンナー、 コーンスープに、トースト、シリアル。オレンジジュースとミルクとコーヒーもある。

 

 

「七華、うまいよこれ! 毎朝、よくこんなに作れるな」

 

 

「こ、こんなの簡単よ……。たけるのためなら」

 

 

「え? なに? 後半部分、聞き取れなかった」

 

 

「なんでもない! 食器洗うんだから早く食べて!」

 

 

 二葉姉さんはコーンスープを飲みおわると、行ってきますと行って、 出て行った。もちろん玄関でハグをせがまれた。

 

 

「な、なんだよ」

 

 

 僕が食卓に戻ると、七華にじっと見つめられた。

 

 色白で顔が小さく本物の金髪の七華は、まるで西洋人形のようだ。 青い目でなにかをじっと訴えかけてくる。

 

 テーブルの上には、七華のヨーグルトが残っている。

 

 

「どうした。食べないのか?」

 

 

 七華は顔を真っ赤にして、首を横に振った。

 

 

「食べるのか?」

 

 

 縦に振った。

 

 

「食べろよ」

 

 

 ジト目で、睨まれました。

 

 

「もしかして、食べさせて欲しいの?」

 

 

 ボムッという音が聞こえたかのような勢いで、 七華は顔を真っ赤にしている?

 

 僕はそれが面白くて、笑いをこらえながら努めて無表情を保ちつつ言った。

 

 

「あーん、とかしてほしいの?」

 

 

 七華は一瞬、にらんだ、が、すぐにうつむいた。顔だけでなく、 耳や細い手足まで真っ赤にした。

 

 かすかに首を縦に振った。これ以上いじめたら、すねて面倒になる。そういう七華もいいんだけれど。

 

 

「いいよ」

 

 

 僕は七華の隣に座った。

 

 柑橘系の甘酸っぱいシャンプーの香りと、 七華の甘ったるい汗の香りが混ざって頭がくらくらした。

 

 二葉姉さんとはまたちがう、女子特有の香り。

 

 

「はい、あーん」

 

 

「あーん」

 

 

 朝と違い、まるで小動物のようにおとなしい七華が、口をためらいがち にあけた。

 

 ピンク色の唇と舌がかわいい。小さく出した舌の上にヨーグルトをのせる。

 

 

「あむ」

 

 

 もぐもぐ。

 

 ぱかっ。

 

 

「え? もう一回?」 

 

 

 七華は首を縦にふる。

 

 

「はい、あーん」

 

 

「あーん」

 

 

 たらり、と七華の唇の端から白いヨーグルトが垂れ、紺のセーラー服のベストを汚す。

 

 

「あ、ごめん。汚しちゃって」

 

 

「あーあ。これじゃ、がっこ行けないね」

 

 

 そう言って七華は口をキスをせがむように、口を尖らせる。

 

 

「ごめんて。ふくからさ」

 

 

 僕は、ベストの膨らみを刺激しないように、そっと拭いた。

 

 

「っ!! んっ!!」

 

 

 七華がぴくぴくと体を震わせる。くすぐったいよな、そりゃ。

 

 あえて、ゴシゴシやった方がいいのかな。なんとか汚れは落ちた。

 

 が、しかし。

 

 また、ヨーグルトをせがむ。

 

 

「あむ」 

 

 

 もぐもぐ。

 

 ぱかっ。

 

 

「え? また?」 

 

 

 七華は、首を縦にふる。

 

 

「はい、あーん」

 

 

「あーん」

 

 

 たらり、と七華の唇の端から白いヨーグルトが垂れ、こんどは、紺のセーラー服のスカートを汚す。

 

 

「っかさ、俺たち遅刻しない? 大丈夫?」

 

 

「でも、これじゃ、がっこ行けないよね」

 

 

「……。ごめんて。ふくからさ」

 

 

 僕は、スカートの窪みを刺激しないように、そっと拭いた。

 

 

「っ!! んっ!!」

 

 

 七華がびくんと体を震わせる。

 

 なんなん? これ? 

 

 女兄弟がいる家庭ってみんなこうなんですか? 

 

 毎日、朝昼晩、結構たいへんなんですけれど。色んな意味で……! 

 

 思春期のチェリーなボーイには、荷が重い。よりによって前書きにかいた幼馴染が貸してくれたエロゲ*1をプレイしてから、シスコン意識化が顕在した。(あー、幼馴染のせいで、厨ニ病的な話し方うつったも?)

 

 

 ヨーグルトの餌付けを、10回は繰り返しただろう、か。

 

 

 正直、心身ともにへろへろになった……。

 

 

 毎朝こんなんですけど、みなさん、どうおもいましたか?

 

 

『たけるっち、それ、まじ、ありえない。うち、もう一緒に登下校するのやめるね。二葉さんと七華ちゃんに、呪われたらいやだし』

 

 

 昨日の帰り道、幼馴染の四織しおりが、声を震わせながら吐血する*2のを見て、うちは変わってるんだと気づいた。

 

 

 今朝だって、そのせいで結局、 朝食が半分しか食べられなかったし、当然ながら遅刻した。あーあ、だよね。

 

 でも、僕は二人が大好きだし、もちろん家族としてだよ? 大学生の二葉姉さん、 高校生の僕、中学生の七華のさんにんの朝ヤンデレツンデレヘタレはドタバタしてるけど、楽しいんだよね。

 

たけるはニふたば七華ななかはたまた四織しおりの誰かを選ばないといけないとき、どうするんだろうなあっと思いながら、書いていました。ヤンデレもツンデレも厨ニ病甲乙つけがたいですよねっ!

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