二話
何故こんな所に美少女が居るんだ。不思議に思い二人に聞くと。
元は王国のある貴族だったが、両親が親友であった者に騙され死んだ後、二人は奴隷商人に売られて買い取った貴族の元に送られる途中だったらしい。
つまり、この六人は賊では無く輸送兼護衛だったらしい。強いわけだと納得していると、二人が助けを求めてきた。
これはもしかして、仲間獲得のチャンスなのではと考える。漫画の中にもこんな展開があったし。
俺は二人の鎖と首輪を力を入れて壊していく。最初色々言っていたが、徐々に小さくなる声に不思議に思っていると、お互いの顔を見て頷くと此方に向かって一緒に連れて行ってくださいと言ってきた。
やはり、仲間獲得のチャンスだったのだなと喜んでいると、ブラッドが鼻先で頭を突いてくる。
六人の死体を漁り金と金になりそうな物をもらっていく、二人が驚いていた。
弱小貴族なのだか仕方ない事を二人に説明し、最後に謝罪と運が悪かったなと声を出してその場を離れる。ブラッドに二人を乗せ俺は徒歩で部隊に向かう。
賊の死体が広がっている場所に戻ると、其処には火の手が上がっていた。死体の数が数なだけに、流石にそのままで行けないと思ったのだう。
此方を見た味方の一人が慌てて簡易テントのほうに向かうと、一人で此方に向かって来る男。馬に乗っていた内の一人だった。
まだ残っていた賊を追跡していたのと、賊の寝ぐらで二人が捕まっていた事を説明する。嘘だらけだが、二人も一緒に同じ説明をしているし、証拠は無い完璧だ。
男いや隊長は、ため息を出すとそれで良いから手伝えと言ってきた。焚き火に賊の死体を次々と放り込んで行く。
ある程度、終わると帝国に帰還した。初陣にしては、なかなかに良い結果だったのでは無いかと思っていると、両親が俺を見るなり驚いた後、笑っていた。両親も俺が活躍した事に喜んでいる様だ。
二人の事も説明すると、好きな様にして良いと言ってくれた。話を分かってくれて助かった。
二人が緊張した様子で、何をすれば良いのか聞いてきたので。まず、強くなれ。
それから、二人を鍛える日々が始まった。最初は無理としか言わなかったが、段々と慣れてきたのか言わなくなってきた。
二人と言うのも言いにくいので、名前を聞くと、今更ですかと言われてしまう。銀髪がシリアで金髪がリシアらしいのだが、似ていてよく間違えそうになる。
身体を解すシリアとリシアを眺めながら素手で腕を組んで待っていると、木の棒を持って二人が動き出す。
リシアが突きを放ってくるが後ろに下がる事で避けるとシリアがリシアの影から低い態勢で足をなぎ払ってくる、バク転の要領で躱しながら蹴りでリシアを牽制する。
着地と同時に左右からの攻撃、リシアは胴体をシリアは足を同時になぎ払いに来るが、リシアの棒は上に逸らす様に掌で押し、シリアの棒は足で踏み付ける。
手応え軽く驚くと、棒から手を外してタックルしてくる二人、だが俺は二人をそのまま受け止める。
二人は俺が倒れないので、驚いているが合格と言うと。手を取り合って喜ぶ二人を眺めながら、これなら少し厳しくしても良いかな。
合格を貰った二人は我が家のメイド長に使用人としての仕事を教えられている。嫌なら、鍛錬でも良いと言ったんだが、二人に仕事を覚えたいと言われた。
仕方ない、仕事を覚えて貰ってからにするか。次はどう言う内容にしようか考える。
賊を壊滅させた時の報酬を受け取った。報告ミスがあったせいか、多少金額が多い。大半を家に渡して残りの金を持って鍛冶屋に向う。
鉄を打つ音が響く鍛冶屋に入り大声で親方を呼ぶと、怒鳴りながら歩いてくる老人が此方を見ると、ため息を吐いた。
相棒となった鉄棒を預けて通りの店を見て周りながら歩いて行く。そう言えば鍛錬ばっかりで見た事が無かったと思った。
装飾店で二人に似合ってそうな髪飾りを購入しておく、好感度アップを狙ってみたのだが。二人は涙を流しながら喜んでくれた。喜び過ぎじゃないか。
自身の鍛錬不足をハルバード持ちの男と戦った時に痛感した俺は、更に鍛錬を増し。それに加えて二人の鍛錬にも力入れて気がついたら九歳になっていた。
ある日、召集がかかった。どうやら南の蛮族が反旗を翻し暴れているそうだ。今回も両親の押し売りがあったそうだが、今回は規模が桁違いなだけに中々、入れてもらえなかった。
俺が騎士の一人と戦い、力を見せると了承してもらえた。ついでに二人も連れて行く、鍛錬と実戦は違うからな早いこと慣れておけ。
最終的に千人程が集まり反乱鎮圧に向かう。行軍中には色々あった、二人にちょっかいを掛けようとした準男爵家の豚を周りに侍る奴らと一緒に殴り飛ばし。俺と同い年の五人が虐められていたので、虐めてくる奴らを殴り飛ばした。
五人が何故、今回の戦いに参加したのか聞くと。簡単に言えば五〜六男でありこれ以上養うことができないと放逐されたらしい。
同情した俺は、行軍中に五人を鍛えてやる。最初はシリアとリシアに邪な視線を向けていたが、今では立派な兵士だ。しかし、目が死んでいるの何故だ。
着いた戦場では、激しい戦いが行われていた。シリアが盗み聞いた話では、蛮族の数は最初の千から二千五百程までに膨れ上がったらしい。
此方の戦力は援軍の千に常備軍の千であり数の上では不利だ。更に拠点となる山は占拠されているらしい。
内部の裏切りが、決め手らしい。ここの領主は人望が無いんだろうと思っていると、シリアとリシアの考えによると余りにも事が上手く進んでいるので、策士が居るのではないかと言ってくる。
召集が掛かった、百人で上流の川を堰き止め。拠点となる山の飲み水を断つのが目的だ。
準備に取りかがるが山の中なのでブラッドは留守番になった。それに、やけに集められた百人の装備が貧相な者ばかりな気がする。あの五人も居た。
待ち伏せを受けた。こっちの作戦は筒抜けだったらしい。シリアとリシアが直ぐに撤退を進言するが、今回は俺が初めての隊長なのだ。そう簡単に撤退すれば何を言われるか分からないので考える。
矢が飛んで来る方向に圧縮した岩を投げ付ける。悲鳴が轟く中、せっせと俺の周りに手頃な岩を集めるシリアとリシア。岩を拾うと手で一度圧縮してから方が頑丈になる方法を俺は見つけた。おい、何故離れる仲間だろ。
槍を手に斜面を降って来る蛮族共、数は此方と同じぐらいだ。俺は新生した鉄棒を目前まで迫ってくる敵目掛けて振り下ろすと、勢い余って地面を粉砕してしまった。
五〜六人程が吹っ飛んだので良いかと思っていると。何故か周りが静まる、リシアとシリアが無言で四〜五人を倒していると向かってきた。しかし、先程の勢いが無くなっている。
殲滅したが此方も十人程亡くなってしまった。怪我を負った者も三十人程いる。俺、シリア、リシアは無事だった。五人も無事に乗り切ったらしく、感謝してくる。
油断していたのだ、気がついた時には三人が食い殺されていた。狼の魔獣がこちらに唸り声を上げて突っ込んで来る。反応が遅れた俺は胴体が挟まれる様に食いつかれる。軋みを上げる身体を無視して、大声で魔獣の首を腕で締め上げる。
魔獣の首を折った俺は座り込み、脇腹を摩る。歯形が付いていた。シリアとリシアが魔獣使いを殺して戻って来る。大丈夫だから、そんなに気にするな。
さて、後は川を堰き止めて任務完了だな。俺は周りに声を掛けると驚かれた。