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一話

「グラフィル様。

 お越しになりました」

 淡々と話かけてきたのは、今年で俺と同じく十歳になるメイド服姿の少女だ。

 透き通る白い肌、腰まである白銀の髪、目を見張る程の美貌を持っている。


 しかし、表情は感情が一切伺うことが出来ない無表情であり、作り物のような印象を与える。

 俺は見慣れているからそれも個性だと考えているが。彼女の名前はシリアと言い、俺専属のメイドの一人だ。


 俺は机に肘を置きため息を吐きながら、シリアに返事を返す。

 シリアの話は、俺にとっては憂鬱な事だった。


 理由は俺が秘密にしている『ある事』の所為である。その『ある事』とは、俺が......異世界の知識を持っていることだ。


 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


 俺の三歳の生誕祭の時に突如として、日本という異世界の僅かな知識が流れこんできた。


 その結果、生誕祭の途中で倒れ込み、三日間も寝込んでしまうという大変な事態になってしまう。


 最初の頃、両親にかなり心配され医者に異常がないと言われると一応安心したが、定期的に診断を受けることになった。


 まあ、四歳の生誕祭の時に何も起こらないと診断は無くなったのだが。

 そんなこんなで、俺が異世界の知識を得て理解した事はこの世界が、漫画という紙の上の物語に似ている事だ。


『覇の道を行く者』と言う漫画で、その内容を簡単に例えるなら下克上と言えばいいのかも知れない。


 ある軍事帝国の三女に生まれた主人公は、父は帝王だが、母は男爵家の者であった。帝王がその美貌に惚れ込み手を出したのだ。


 勿論、そんな低俗の者が王族に入る事を良しとしないのが大勢いる。主人公が五歳の時に母が目の前で毒殺され、母が死ぬと帝王は子に興味を失い、ある騎士家に預けるとそのまま忘れてしまう。


 その騎士家でも指導と言えば聞こえが良いが、虐め同然の厳しい内容である。しかし、彼女には才能があり瞬く間に一人前の淑女として成長していく。


 まさに主人公と言ったところである。最終的に剣と魔法は近衛程に強くなり、内政や軍事に置いても一流となるのだ。

 更には人を惹きつける魅力も凄く、最終的には軍事帝国にクーデターを起こし王位の簒奪を行い成功する。


 最初は多くの鬱展開があるのだが、徐々に周囲を見返していく姿は、爽快感があった。


 三歳の子供ながら胸を熱くしたもので。それ以降、俺は剣や魔法の鍛錬に力を入れたが軍事や内政は、あんまりであった。


 数多くある騎士家の内の一つでしか無いので殆ど、平民に近い立場であるのだが、両親は俺が大成すると思い良い教師を付けてくれたし。馬も買ってくれたのだ格安だったらしい。


 とても気性の荒い馬と聞いていたが、少し遊んでやると俺の事を気に入ってくれたらしく大人しい。


 使用人も殆どいないので俺自身が世話しているのだが、あまり飯を食っていない気がする。まあ、維持費が安いので助かっている。名前は色が赤黒いので何となくブラッドと呼んでいる。


 剣と魔法に関して言えばメキメキと上手くなるのだが、軍事や内政に関しては教師に匙を投げられた。


 まさに、戦闘力に極振りした様になってしまたが、後悔はしていない。足りない部分は漫画の様に仲間ができたときに任せよう。


 剣や魔法を鍛え続け、五年の月日が流れていた。漫画の事もほぼ忘れていた頃に初陣が訪れた。八歳で初陣と思うかもしれないが、理由は両親が俺は天才だから大丈夫だと無理矢理、憲兵隊を押し切ったらしい。


 任務の内容は賊の壊滅らしく、緊張した。周りは俺よりも大きく装備も充実した大人が二十人以上いる。

 馬はブラッドが一番大きく、周りの馬や大人がブラッドを見ると怯えている気がする。


 見とくだけでいいとも言われたし、大人しくしておくかとその時は考えていた。


 いざ賊と戦闘になると報告よりも二倍いや三倍近い数がいたのだ。倒しても倒しても溢れてくる敵の姿、一人、二人とこちらの数が減ってくる。周りの大人達が絶望していく姿が、感じ取れた。


 そんな中、俺は泣き喚く事も、絶望し諦める事もなく、口の両端を上げて声なく笑う。これこそが殺し合い、鍛錬で味わう事の出来なかった感覚。


 気づいた時には、片手に只大きく丈夫な鉄塊を無理矢理、棒状にした武器持ち愛馬と共に敵に突っ込んだ。最初は驚いた賊も俺の姿を見て笑っていた。立派な馬だが子供が乗っているので笑ったのだろう。


 気にせず、目の前の賊に目掛けて鉄棒を振るうと三人纏めて粉砕。その瞬間、周りが静かになったが、続けて驚愕している賊を二人纏めて粉砕。


 その後、慌てて賊が大声で俺を殺しにくるが、俺も大声で笑いながら殺していく。途中、背を向けて逃げようとしたり、降伏してくる奴もいたが、興奮していた俺は殺し尽くした。


 気づけば、周りは賊の死体だらけだった。俺は深呼吸して冷静になると離れた位置に味方が居る事に気がつく。


 単独先行し過ぎたと反省し味方の元に戻るかと考えていると。ブラッドが急に嘶き出したのでどうしたのかと顔を向けると、背を向けて逃げ出す馬に乗った人影が見えた。


 このままでは逃してしまうと思いとっさにブラッドに後を追いかけさせる。


 追っているうちに、朽ちた村に着いた。其処には賊にしては立派な装備をつけた六人の男達がいた。


 六人とも先ほどの賊とは比べるも無いだろう、それに馬にも乗っている。おそらく俺はここに死ぬだろう。漠然とそう思った。


 だが、恐怖心は無くあるのは歓喜だけだ。ブラッドも興奮しているのが、手をとる様に分かる。 


 六人の内、代表と思われる最も強そうな男が何か言ってくるがどうでもいい。集中する、視界が狭くなっていき周りが白くなり、見えるのは俺とブラッドそして六人のみ。


 雄叫びが口から出ているの感じながら突っ込む、六人が驚愕しているのがわかる。しかし代表の男が周りに声を掛けると直ぐに、戦闘態勢を整えていた。


 俺の周りを囲む様に動く六人、右端と左端の槍がこちらの馬と俺の胸に向かってくるが、俺は鞍から飛ぶと右端の槍を交わし左端を馬ごと粉砕し着地する。


 他の五人を目で追いかけながら、貰った槍を弓を取り出そうとした男目掛けて投げる。突き刺さるのを視界の端に収めながら、馬ごと突っ込んで来る男、だが俺にぶつかる寸前にブラッドが横からぶつかり態勢が崩れたので、鉄棒を振るい馬ごと潰す。


 三人を見据えながら近寄って来るブラッドに跨る。大きく息を吐き出しながら、代表の男に向うとあちらも大きいハルバードを手にこちらに向かって来る。もう一人の弓持ちが背に隠れて見えなくなったが、気にしている暇はなかった。


 ハルバードが連続して向かって来る、骨が軋み鈍痛が襲う、男の戦いは上手であった。こちらが力を込めれば流し、少しでも気を抜けば怒涛の攻撃だ。


 このままでは、後ろの男と弓の男の加勢が始まれば殺される。だから賭けに出た、ブラッドが相手の馬にぶつかり態勢を崩すと、その瞬間、飛翔音と背後からの雄叫びが迫ってくる。


 背後の槍は空いている片手で掴み、矢は口で捉える、少し背と口に痛みが走るが、気にせず槍を捻り男を馬から落とすと、ブラッドが頭を踏み潰す。


 こちらを愕然と眺めている弓持ちの男に槍を投げる。これで後は一人だけだ、代表の男は変わらず俺に向かって来るが先程より、荒い動きに俺は確実に追い詰めていく。


 幕切れは、呆気なく訪れた。ハルバードが折れ、そのまま鉄棒は頭を叩き潰した。


 戦闘後、俺は倒れた込んだ。ブラッドが心配そうに鼻先で突いてくる。大丈夫だと言う思いで鼻先を叩いてやると直ぐに離れてある古屋に向かっていく。


 不思議に思い、重い身体を酷使してついていくと其処には。


 銀髪と金髪の顔がよく似た二人の美少女が鎖と首輪をつけられた状態でこちらを見ていた。














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