冷たい月
新しい区切りのその最後の満月は、何かを祝福するように照り輝いている。
コールドムーン。
ああ、凍った玻璃のような月に相応しい。
食むとしゃくり、西瓜のような味がするのだろうか。或いは予想外に糖蜜。
月が欲しいと泣いて手を伸ばして諦める。届かないから。
あの人が欲しいと泣いて手を伸ばして諦める。許されないから。
だけどねえ、コールドムーン。
私に何か幸いをちょうだい。
冷たくてひやりとしてどくりとして。
息が止まっても、構わないから。
ねえ、コールドムーン。
月は無慈悲な夜の王。
でもね、コールドムーン。
私は月の本当を知ってるわ。
太陽光を夜にも見せる為のフィラメントなんでしょう?媒介を通して、夜の胎児の足下を照らしてくれている。
なのに。なのに。
何で?何であなたは冷たいの?昼間はあんなに温かさで包んでくれるのに。
あなたが冬の夜を包んでくれないから、寒くて人肌が恋しくなっているというのに、あなたは素知らぬ月白の顔。心にはまた薄氷。地獄から救ってくれない蜘蛛の巣。あなたという傘があるのに、私の上は曇りのまま。
でも、私はもう夜泣かないわ。誰も見ない涙なんて、自分の心を滲ませるだけだもの。深爪なのに、代わりに掌に痕が深く滲んでいるけれどね。まぁ、引っ掻き傷を作っているあなたに比べればマシかもしれないけど。
震えた携帯を見て見ぬふりして、顔まで毛布を被った。無責任な太陽がまた顔を見せてくれるまで。