仙台 其の一 仙台城を攻める①
「うーん、この辺のはずなんだけどなぁ」
相棒が通りを行ったり来たりを繰り返す。
仙台駅より歩くこと約三十分、青葉山の麓に辿り着いていた。
仙台国際センターという巨大な催事場があり、そこで周辺地図を確認して気付いたことが二つ。
一つは相棒が興奮気味に目を付けたもので、催事場の向かいに“片倉小十郎屋敷跡”があることだった。相棒が今探し回っているのがそれだ。
そしてもう一つは国際センターの裏手に線路が走っており、そのままずばりの“国際センター駅”なるものがあることだ。
「……あの三十分は何だったんだよ」
「あっ、ちょっとちょっと、あったわよ!」
どっと疲れを感じるあたしとは違い、相棒は元気だった
道沿いの植え込みの陰に小さな石碑を見つけ、手招きする。
「うん、やっぱり城から近い場所にあるのね。さすが小十郎。あっ、なんだ、むこうに看板があるんじゃない」
相棒は駆け出して行って看板の前に陣取る。
「へえ、ふんふん、そっか、そういえば片倉小十郎って城持ちになったのよね。ふんふん、……あら? ええー?」
のんびり歩いて寄っていくも、相棒のテンションが目に見えて落ちていく。ぴんと張って赤らんでいたエルフ耳がしなしなとしおれる。
「どうかしたのか?」
「このお屋敷、建てられたのは1677年だって」
「うん? それがどうかしたのか?」
「伊達政宗の右腕として有名なあの片倉小十郎は、大坂夏の陣のすぐあとに亡くなってるのよ。つまり片倉小十郎が死んだ後に建てられたってわけ」
「んん? じゃあそもそもなんなんだ、この屋敷跡って」
「小十郎って確か片倉家が代々受け継ぐ通称になったのよ。息子の方の小十郎が、確か後藤又兵衛を討ち取ってるわ。“鬼の小十郎”って、彼も結構有名ね」
「じゃあその息子の屋敷跡ってことか」
「息子にしたってちょっと無理あるかも。それに1677年じゃ、伊達政宗だって当時の人としては長生きで有名だけど、さすがに生きてるはずないし」
「なんだ、じゃあ有名どころはあんまり関係してないんだな」
「……そういうことになっちゃうわね」
相棒が肩を落とした。




