大阪 其の七 阿倍野神社を参る①
ホテル周辺を探索したいという相棒に付き合わされて、朝の町をぶらついた。
「いやぁ、さすが大阪。見どころが多いわ」
「大阪ってえと、あたしには旨い食いもんのイメージだったんだけどなぁ。まさかお前が喜ぶようなもんがこんなにあるとはなぁ」
「そりゃあ京都奈良とも隣接する昔からの経済の中心地ですもの。見どころが無い方がおかしいじゃない」
今日もすでに豊臣秀吉が立ち寄ったという天下茶屋跡地だの、淀君の安産祈願をした子安石などに立ち寄っている。
「あら、向こうに神社があるみたいね。阿倍野神社? それほど大きな神社には見えないけど」
看板が示す先は住宅地で、神社の全容は建物や木々に隠れてしまっている。
「……って、あら、元別格官弊社ですって!」
「元別格かんぺーしゃ? 何だそれ?」
「ええと、明治時代に神社の社格を定めたのよ。今は廃止されてるから“元”で、官幣社ってのは確かその中でも特に格が高い神社のことね」
「へえ。別格ってことはその中でもさらにすごいってことか?」
「ううん。大、中、小、別格の順番だから、官幣社の中では一番格は低いんだけど……」
「だけど?」
「別格官幣社で祀っているのはいわゆる神様じゃなく、国家の功臣なのよ。有名どころで言えば、徳川家康の日光東照宮ね。―――つまり早い話が、英雄を祀った神社なのよっ!」
相棒のテンションはぐんぐん上がっていく。
「わあっ、たまたま歩いていて行き当たるなんて、ついてるわね。いったい誰が祀られているのかしら? 大阪だし、やっぱり豊臣秀吉? あっ、阿倍野ってことは安倍晴明? 確か阿倍野はゆかりの地だったわよね」
相棒は興奮した様子で鳥居をくぐり、参道の階段を登り、もう一つ鳥居をくぐり、そして―――
「わわっ、ちょっとちょっと、すごいっ!」
比喩ではなく本当に小躍りし始めた。




