大阪 其の五 道頓堀で食い倒れる②
「おっ、うまい。コンビニのとは全然違うなっ」
蟹の足を食べたことで、同士の食べ歩き欲求に火が付いたようだ。
うろうろと通りを行ったり来たりしながら、定番のたこ焼きに始まり、ホルモン焼き、肉寿司、エッグタルト―――これは私も少し味見させてもらった―――、餃子のテイクアウト―――全国どこにでもある店だからわざわざ旅先で食べなくてもと思うが、本店らしい―――、そしていま口にしているのは豚まんだ。
「うん、餡がうまいのは当然として、皮も違うな。よし、今度はからしを付けて、……うんっ、これもうまいっ。次はぽん酢を―――」
コンビニで目にするものよりいくぶん大振りだろうか。同士は目を輝かせながら、二個をぺろりと平らげた。
「ふう、食った食った。そこまででかいってわけでもねえのに、食いでがあったな。―――さってと、そろそろ本格的に飯とするかっ」
「……はぁっ?」
「間の抜けた顔をして、どうした?」
「いやいやいや、さっきから食べまくってたのは何だったのよ?」
「あん? これはおやつみたいなもんだろう。飯は飯でちゃんと店に入って食わないと、せっかくここまで来たのにもったいないじゃねえか」
「もったいない? もったいないって何がよ?」
「はあぁぁ~~」
同士がわざとらしく溜め息を吐く。
「あのなぁ、一日三食として、二日間の旅行でたったの六回しか飯の機会はないんだぜ。みすみす棒に振ってどうするよ。ったく、これだからエルフってやつはよー」
「はいはい、分かったわよ。で、どこに行くにの?」
心底呆れたという顔の同士に、抗弁は無駄と覚って先を促す。
「せっかくだし、ど定番を攻めよう。さっき見かけたんだけど、ええっと、―――おっ、あれだあれ」
同士は人ごみを掻き分ける様にしてずんずん進んでいく。
「お好み焼き屋?」
「おうっ。まだ食ってなかったからな。大阪定番のお好み焼きを、それも定番の店で食うっ」
ひらがな五文字の店名は、おそらく鉄板でお好み焼きを焼く際の音に由来するのだろう。
「さっきの餃子と同じで、大阪って付くのと付かないのがあるらしいけど、ここは付く方にしとこう。付かない方は全国に出店してるらしいから、わざわざ道頓堀で食わなくても機会はあるだろう」
「餃子の時と言ってること違わない?」
「よーし、いくぞー」
突っ込みを無視して、同士は二階建ての店舗にうきうきと入っていく。