大阪 其の一 大坂城を攻める①
「おーっ、確かにでかいな、大阪城」
城址公園に入ると、その威容が目に飛び込んで来た。
公園自体、相当に広大である。大都市大阪だけに周囲には高層ビルも多いが、ぽっかりと抜けたこの公園のお陰もあって城は埋もれることない存在感を誇っていた。
「そうね、ただの鉄筋コンクリートで城自体に価値は無いなんて言う人もいるけど、あれがあるのとないのとじゃ大違いよね」
「んん? あの城、鉄筋コンクリートなのか?」
「ええ。復興天守の第一号でね。鉄筋コンクリートで作られた最初のお城なのよ。今は当時の技術で木造再建しようとしているところもあるけど、その頃は最新鋭の技術で再現する方針だったのね」
「へえ」
「そうそう、大坂城再建と言えば、ちょっと面白い話があって、―――あっ、ちょうどよく大手門が見えてきたわね、まずは行きましょう!」
「おいっ」
相棒が駆け出していく。
しんどいが、急いでくれるのは有難い。今日は他に回る場所があるのだ。
「ほらっ、これ」
指差されたのは、門に関して記された説明板だ。
天守は復元したものだと言うが、この門は当時のものらしく、その来歴が書かれている。
「……ん? 徳川時代の遺構? あれ、大阪城って豊臣の城じゃなかったか?」
「そうよ、良いところに気付いたわね!」
興奮した様子の相棒を促し、先に進みながら話させた。いつまでも立ち止まってはいられない。
門の中に入ってしまうと、そこからは石垣や壁に視界を遮られて天守は見えなくなった。外部へは威容を誇りつつ、城であるからには内に入った侵入者の行く手は阻まねばならないと言うことだろう。
「大坂城って言うと、やっぱり豊臣のお城の方を思い浮かべるわよね。秀吉が建てて、大坂冬の陣と夏の陣の舞台となったお城」
「そう、それだ。大河ドラマで見たわ」
より正確に言うと、相棒に付き合って見させられた、だが。
「その豊臣のお城はね、大坂夏の陣で焼け落ちてるのよ」
「あー、そういえばドラマでも大砲撃ち込まれたりしてたな」
「ええ、そんなわけで豊臣の大坂城はわずか三十年で失われてしまったわけ。だけど大坂は当時の経済の中心地なわけだから、徳川だって放っておくわけには行かないでしょ。それで新たに城が建てられたってわけ」
「ああ、じゃあここはそっちの城跡なのか」
「ええ。まったく別の場所を切り開いてってわけじゃないから、縄張りはかなり重なる部分があるらしいけどね。残されている石垣や門なんかの遺構は徳川時代のものってわけ」
「ふーん、それがお前の言う面白い話ってやつか?」
「ううん、ここまでは前情報よ。面白いのはここから。―――あっ、ちょうどよく天守がまた見えてきたわね。続きは向こうで」
相棒は再び駆け出した。