表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/27

函館 其の十 五稜郭の支城も攻める①

「あった! ここねっ」


「今度こそ正解っぽいな」


 途中、史跡名を冠した農園などに間違って迷い込んだりしながらも、ようやく函館最後の目的地に到着した。

 白黒の人物写真―――五稜郭タワーの展示でも見た顔だ―――が描かれた立て看板があるから間違いないだろう。


「しっかし、ここも人気ひとけねえなぁ。五が四になるだけでこんなにさびれるかぁ」


「た、たまたまでしょ。そういう日もあるわよ」


 本日何度目かになる言い訳を聞かされた。

 五稜郭から歩くこと一時間弱―――もちろんハンバーガー休憩を抜いた時間だ―――、たどり着いたのはその名も“四”稜郭だ。

 真新しい立て看板と、いくらか古びた案内板がある。

 立て看板は史跡にまつわる歴史を紹介したものだ。五稜郭や“土方歳三最後の地碑”にも、立てられたばかりと見える看板があった。相棒によると函館戦争から今年で百五十年なので、恐らくそれに合わせて作られたのだろう。

 案内板の方は、史跡自体の紹介と注意書きなどが書かれている。

 そして案内板の向こうに、小さな土手が見えた。あれが目的の四稜郭だろう。


「じゃあ、私は早速、―――っ、いたたたたっ! ちょっと、またなのっ! 今度は何よっ?」


「お前、いま駆け上がろうとしただろう。―――ほら、ここ読んでみろ」


 相棒の耳を引っ張って、案内板に書かれたとある一節の正面に顔を据えてやる。


「ええっ! あの土塁、登っちゃダメなの!?」


「らしいな」


 一見したところただの土手にしか見えないが、やはり史跡と言うことなのだろう。


「ええーっ、じゃあ、周りから見るだけってこと? いやいや、こう書かれているだけで、実際にはみんな登ってるんじゃないの?」


「かもな。でも確認するすべがない。何しろ今日は、たまたまひと気がないからな」


「ううっ」


 管理人棟のようなものもなければ、他に観光客の姿もない。


「ほらっ、とりあえず行こうぜ」


「むぅ」


 不満そうな顔をしている相棒を促して―――立場が逆だろうと思いながらも―――、先へ進む。

 すぐそばまで近づいてみても、やはりそれは小さな土手にしか見えない。相棒の背丈よりもいくらか高い程度だ。

 とりあえず周囲を一周、と考えて土塁沿いを歩くと、思いのほかすぐに切れ目が現れた。


「何だっ、ここから中に入れるんじゃないっ!」


 勢いを取り戻した相棒が走り出すのを、今度はあたしも止めなかった。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ