調停部
2週間2回更新目指して頑張ります!
少しの暇つぶし読んで面白いと言ってもらえる、そんな作品をめざして!
少女が自分の体の大きさの五倍以上ある黒い怪物に一人で対立する形で立っていた、距離は約50メートルといったところだろうか。
少女は歩いていく。ただゆっくりとしかし確実な足取りで怪物の方に向かい1歩、また1歩と足を進めていくそれを自分は止めることが出来ない、少女と怪物との距離は半分以上詰まり残りは20メートルまだ走れば間に合うはずなのに動くことはできない。
黒い怪物の前に立った少女は一度だけこちらを振り返るとその瞳には涙を浮かべていた、小さな瞳は潤んでおり何かを訴えるようだった、だが自分にはどうすることもできない。
そして少女は静かに怪物に飲み込まれていった。すると怪物は大きな<梟>の姿に体を変えてその大きな瞳でこちらを睨んでいた、その瞳は自分にこう告げているようだった。
何故助けてくれなかったの
と。
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ここは箱庭都市、名前の通り人工的に作成された都市であり世界中から<異能力>を持った人間が多く生活している。この異能力とは簡単に言えば超能力のようなものである、異能力も炎を発現させる能力もあればテレポートや身体能力上昇などあればピンからキリまでありLv1〜10までで細かくレベル分けされている、大きく分類するなら1〜5はマッチの火ぐらい〜ライターの火ぐらいまで5〜9はガースバーナーの火ぐらい〜キャンプファイアーのような業火、10は自然災害を起こすレベルだ。(例えが悪いのは大目に見て欲しい)
僕、上桜高校2年東雲 幸も箱庭都市で生活している一人だそして僕の異能力はというと<合成・分解>だ、この異能力自体あまり保持している人間は少なく主に工業系の仕事で大活躍する異能力だ。(実際のところまだそんな使い方はしたことがないのだけれど)
それは一旦置いておくとして僕は部活に所属している、というかさせられていると言ったほうが正しいのだろうか元々僕は部活に入る気なんてなかったわけだし。
「幸、最近ぼーっとしてること多い、大丈夫?」
天井を見ながらぼーっとしていた僕の目線に小さな顔には大きすぎる眼鏡をし、黒髪ショートカットの少女が割り込んできた。そうこの憎たらしい小さな小動物、織田 日菜子こそ俺がこの部に所属している理由だ。
入学式のその日学校に徒歩で向かっていた俺は同じ制服だと言うのに全く逆方向に歩いていく少女を見かけた、俺は入学式、新しい生活が始まることに浮かれていたのかもしれない今思えば大きな間違いだったと心底思う。
「学校、こっちですよ?」
「え?」
「君、桜高だろ?僕も桜高だから迷子なら学校まで道案内するけど...」
「な、ナンパですか?」
「なんでだよ!」
本当に怯えているのだろう手がプルプルしていたのを今でも覚えているし、思い出したくもないし、なんで僕が不審者扱いされていたのだろう。その後、誤解を解き学校まで送ったのだった。
その一件以来この小動物に懐かれることになり、部活動に入っていなかった僕を勧誘し続け、結局最後には顧問の先生まで勧誘し始め入部することになった。
部活動の名前は調停部、後々知ったがこの部は他の部と比べてかなり特殊な役割を担っており部費も学校から出してもらえる、部員は僕、日菜子、そして週に1回ある報告会の時しか顔を出さない幽霊部員の西条 弥生先輩の3人構成だ。この先輩とはたまに話す程度だが「先輩は部活来ないんですか?」と言う質問を投げかけたところ「え?お前ら真面目に毎日行ってんの?」という驚きの答えが返ってきてからは何故この人はこの部に入ったのだろうと思い始めてきて、そこで思考を止めている。それ以上考え始めたら負けな気もするし無駄な気もする。
部活は毎日放課後特に内容もなく北館3階のN32という通常教室の半分くらいの広さの使われていない教室を使い行われている。
「あぁ...大丈夫だぞ」
「良かった、安心」
ニコッ、と笑ってさっきまで座っていた僕の隣に座りなおし、読みかけだった本を栞を挟んだ位置から読み始めた。僕が課題や昼寝をしている隣で日菜子が読書をしている、これが調停部の日常だ。少なくとも顧問の 坂下 孝太郎先生が依頼を持ってくるまではこのほのぼのとした日常が続いている。
そんなことを考えているともうガタがきかかっているドアが勢いよく開くガッガタガタガタという音と同時に日菜子がびくっと肩を上げて分かりやすく驚いていた。
そこには坂下先生の姿があり書類を持っている。
依頼が来たようだ。
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