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EP

 彼女の告別式が終わった翌日、おばさんから形見のことで相談したいと連絡があった。

 彼女の家に行ってみると、すっかりやつれたおばさんが力のない笑顔で迎え入れてくれた。


「あの子の部屋にある本なんだけど、もしよかったら鈴成君がもらってくれない?」


「いいのですか?」


 僕の言葉におばさんはこくりとうなずいた。


「小説のことで話が合う人はあなたが初めてだって、あの子がうれしそうに教えてくれたから……だからそういう人にもらわれるのが一番だろうと思って」


 摩耶ちゃん……。

 

「数が数だから親御さんと相談して決めもらえる?」


「分かりました」


 彼女の形見は欲しいような、まだ受け取るだけの心が決まっていないような……そんな気分だった。

 

「よかったら線香をあげて、あの子の部屋を見てくれる?」

 

 おばさんに言われて仏壇に行くと、はにかみながら微笑む彼女がこちらを見ていて、近くに僕が贈ったオルゴールが置かれていた。


「棺の中に入れようか迷ったのだけど、ここで鳴らすのもいいかなと思って。あなたが鳴らしてくれない?」


 僕が彼女のために買ってきたものだからだろうか。

 断る理由がなかったので、オルゴールのふたを開けた。

 この曲を前に聞いたのはつい最近のことのはずなのに、ずいぶんと昔のことのような気がした。

 オルゴールは鳴るが、聞かせる人はもうこの世にはいないのだ。

 あの世まで届けばいいなと願うしかなかった。

 

 ……数年後、僕は学者になった。

 摩耶ちゃんが生きた意味を何とか作りたかったのだ。


「人はどうして生まれてくるのでしょう。何の為に生きていくのでしょう? どうして死ぬのでしょうか? どうして死にたくないと思うのでしょうか?」


 その答えはまだ見つからない。

 けれど、いつか見つけて天国の摩耶ちゃんに報告しようと思う。



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