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OP
忘れらない人っているだろうか。
僕にはいます。
この世界の時の流れから永遠に解放された最愛の女性が。
その人は今日も写真の中で僕に微笑みかけてくれている。
通っていた高校の藍色のブレザーと青と白の縞々のリボンは彼女にとてもよく似合っていた。
「……じゃあまたね」
目を開けて彼女にそう声をかけたけど、当然彼女から返事はない。
……髪を引かれるような気持ちではあるものの、また来れると自分に言い聞かせて立ち上がる。
紫色の座布団を片付けて台所にいるおばさんに声をかけた。
「また来ますね、おばさん」
「毎日ありがとうね、春人君」
おばさんはやつれた顔に気丈な笑みを浮かべて答える。
……大切な人を喪ったのは僕ばかりだけじゃないんだと実感させられる。
寂寥感とともに奇妙な仲間意識を覚えながら、僕は玄関のドアを閉めた。




