初対面
さて、話を現在に戻そう。
黒坂飲料が他社に圧力をかけている確認はとれた。
あとは実際に証拠を掴みにいくだけだ。
「風磨、行くぞ。」
「あいよ〜!」
なにをするかって?決まっている、潜入だ。
しかし、変装したりこそこそ潜入するわけではない。
真っ正面からだ。
「風磨、アポは?」
「このあと15時から取ってあるよ。」
現在の時刻は13時を少しまわったところだ。
「さすがだな、手っ取り早く準備を終わらそう。」
そして迎えた15時。
私と風磨は目的地に到着した。
豪華な正面入り口をくぐり抜け受付へ向かった。
「すみません、天雲コーポレーション社長の天雲快晴と申します。」
私は黒坂飲料本社の受付ロビーで受付嬢に名前を言った。
「お待ちしておりました、天雲様ですね。どうぞこちらへ、ご案内いたします。」
私は案内についていきエレベーターで最上階まで上がっていった。
コンコンッ
「天雲様がお見えになりました。」
「入れていいぞ。」
社長室の中から渋い声が聞こえる。
ガチャッ
「失礼いたします、私天雲コーポレーション社長の天雲快晴と申します。以後お見知りおきを。」
「いえいえ、わざわざ来ていただいてありがとうございます。社長の黒坂と申します。」
そう言葉を交えながら名刺を交換した。
その後高そうなソファに座らされオシャレなハーブティーまで出てきた。
「お会いできてなによりです。若手最注目株の社長が自ら会いに来ていただけるとは。」
「黒坂社長に比べたら私なんてまだまだ若輩者ですよ。」
よくある接待の会話が少し続いた。
その後のこと。
「それで、話というのは?」
黒坂が切り出した。
「ええ、そうでした。この度我が天雲コーポレーションは飲料水業界にフィールドを広めようと考えてまして、その第一歩目にぜひ黒坂飲料様と手を組ましていただこうかと思いお見えになりました。」
一瞬黒坂は固まったがすぐに笑顔がこぼれる。
一見ここまで普通の社長同士のやりとりに見えるであろうが、すでに私はいくつもの手を打っていた。
受付からここにくるまで距離、建物の材質、柱の数などからざっと建物全体の構造、空間を瞬時に頭の中で3D化していた。
これはプロ級の建築の知識があればなんとかなる。
そして黒坂に会った時に平常時の心拍数、筋肉の動きは見て測定させてもらった。
これで焦りや動揺が生まれたときにはすぐにわかる。
そんなことよりここに風磨がいないのはお気づきだろうか?