何でも屋
今日もまたたくさんの依頼が殺到している。
「さて、仕事の時間だ。」
その男は椅子から立ち上がりその部屋を出た----
一部の人間の間ではとあるうわさが流れていた。
連絡手段は不明、姿を見た者はいない、存在そのものが都市伝説となっている。
が、世界のどこかにどんな仕事でも必ず達成するという何でも屋がいると----
『天雲コーポレーション』
創業僅か一年にして一部上場をはたした今最も注目されている企業である。
その代表取締役社長こそが私、天雲快晴だ。
24歳という若さにしてここまで上り詰めエリート街道を突き進む私は困ったことに連日連夜各種メディアに追われている。
いわゆる贅沢な悩みというやつだ。
しかし社長という一面を持ちながら私にはもう一つ裏の顔がある。
実際会社を立ち上げたのもこちらの方の仕事効率を上げるためということはみんなに内緒である。
ガチャッ
「快晴!今日の依頼は2件だ。」
ドアが開きパートナーである虹谷風磨が入ってきた。
「おもしろそうな依頼はあったかい?」
「俺的にはこれかなー、『黒坂飲料株式会社社長の黒坂重道がライバル企業を不正な方法で次々脅して規模を拡大している。ぜひ止めてもらいたい。』だとさ。」
「ほう、確かに黒坂飲料は最近急成長を遂げている。まさかそんな裏があったとは。よし、なら今日はその依頼にしよう。」
そう、これこそが私のもうひとつの顔である『何でも屋』だ。
今までに達成できなかった依頼はない、必ず達成する。
その成果が徐々に知れ渡り今では世界各国の首脳までが依頼するまでである。
え?今日の依頼は2件だけ?少ない?バカ言っちゃいけない今となっては依頼が多すぎるため全世界にありとあらゆる独自のパイプラインを張り巡らせ数えきれないほどの検問をくぐり抜け厳選に厳選を重ねた依頼だけが風磨に届くようになっている。どうやって届くかは企業秘密だ。
そこから更に風磨が厳選して私のもとに持ってくる。
2件届いただけで多い方である。
もちろん依頼を取り扱っている人たちでさえ私の正体は知らない。
正体を知っているのは風磨を含め片手で数えられるほどしかいない。
それはさておきさっそく依頼に取り掛かろう。
ブウウウウウウウンーー
部屋にある数十台のコンピュータが一斉に起動する。
「さて、仕事の時間だ。」
私は椅子に座りキーボードに手を置いた。