入道雲
目を瞑って
深呼吸して
手を伸ばして
例えば筆をとり
貴方に手紙を書くのもいいかもしれない
拝啓
お元気ですか
私はまた目を瞑る。
「筆」
今日、髪の毛を切りました。
背中までありました髪を、肩にまで切りました。
今の流行、というものらしいですが私には大切な事でした。
失恋
私は失恋したのです。
2年前から好きな殿方に。
その殿方は、蝶々の君という高貴な家柄の美しい女の方が好きなのだそうです。
私は、高貴でも、美しくもないから、と一人で沈んでいると、殿方は
「そのような事ではない。私があの人に、勝手に思っているんだ。一度幼少の頃振られているのだよ」
と力なく笑っていました。
胸の奥がむかむか致しました。屹度それは、
殿方をあんな顔にさせた女の方に
いじいじしている殿方に
其れを見ていることしかできない私自身に
「っ……・・うぅ~~~~っ…………」
あぁ、もどかしい。
今日は綺麗な満月です。
母上、父上、私は初めて殿方の事で泣きました。大泣きしました。
彼と、彼女に幸あれ!屹度、私の分まで!
「恋ごころ」
昔からである。昔の此処の川は綺麗だった。夏には蛍も飛び交っていた。流石にもうこんなビルが立ち昇ると蛍所か綺麗な川さえ、山さえ無くなって仕舞うのであった。
だが変わらず此処は川があった。芒も増え水黽が泳いでいるだけであった。
橋を渡り右に曲がると木造平屋造りの家があった。
今は私の収入で立て直し二階建て一軒家になった。そうだ。街並みも変わっていた。昔はこんなにたくさんマンションのある所では無かった。私の家から徒歩50歩の場所に駄菓子屋があった。今は知らない人の知らない家だった。そこから3分も歩けば学校だった。今はもう知らぬ名の銘だが。
私が、帰らぬ間に、此処まで変わる。たった20年居ないだけでこんなにも変わって仕舞う。昔の私の知っている事がどんどん無くなる。知らない事ばかりが増え、覆い尽くされる。嗚呼、変わらぬのはこの空だけである。今も同じ顔で私を見守っている、この空だけなのである!
「上の空」
色々な気持ちとの格闘。
人が屹度感じたことがあること。