5話 接触
「よっ!志吹!もしかして驚いちゃった?」
目の前に現れたのは奏也だった。相変わらずひょうひょうとしている。
「なんだ、お前かよ。驚かせんなよ。」
志吹の緊張が一気に解きはなたれた。
「なんの用だよ。」
奏也はにやにやしながら答えた。
「さっきの話聞いてたぞ。」
「えっ?どうやって?」
志吹は目を丸めながら聞いた。
「ふふん!上着のポケットをご覧なさい。」
志吹はポケットを探ってみた。すると何か硬いものにぶち当たった。
「これは・・・まさか盗聴器!?」
「ご名答!なんかあると思ってあの時に仕掛けさせてもらったよ!」
奏也は得意げにそうこたえた。奏也の物好き具合にあきれ返った志吹は事実を包み隠さず話した。変に嘘を言うとまた後で槍玉にあげられるのが嫌だったからだ。奏也は熱心に手帳にメモを取っていた。志吹が話し終わると手帳をぱたんと閉じ、
「なるほどなるほど。いい話が聞けたよ。オカルト研究家の血が騒ぐねぇ!ま、きぃつけろよ。じゃあな!」
そう言い残すと足早に暗闇へと消えていった。ふと時計を見るともう10時30分を回っていた。
「やばっ!話しすぎた!」
志吹は足早に家へ向かおうとした。するとまた黒い影が近づいてきたのだ。
「おい、奏也まだなんか用があるのか?」
とあきれたように声をかけた。しかし、街灯に照らされ、露わになったその姿は奏也ではなく、あのラーメン屋の客だった。志吹はビクッとした。
「あっ・・・昼の・・」
志吹は思わず声をかけた。その男はゆっくり口を開いた。
「あなた分かってるんでしょ?」
志吹は心臓が一気にバクッと生き物のように弾んだ。男の声は志吹の体全体に響き渡るようだった。
「な、なんのことです・・・か?」
「しらばっくれるったってそうはいきませんよ。」
そのとき男からあの黒いものが滲みだすのが見えた。声も幾分低くなった。まるで男は動かず、生気がなく、その黒いものに魂を吸い取られたようだった。志吹は恐怖に駆られ後ずさりした。
「分かってんだ・・分かってんだ・・」
もはや男の声ではなかった。志吹の足にはまったく力が入らず、尻もちをついた。志吹の顔は恐怖に満ち満ち満ちていた。そして突然黒いものが叫びながら志吹へ襲い掛かってきた。
「分かってんだぁぁぁ!!!」
志吹はどうすることも出来ず、腕を前にかざし自分の身を守ろうとした。
(も、もうだめだ!!)