4話 近寄
教室内には25名の生徒がいる。この日はグループ学習の後夕食をとり、1人1人が思い思いに過ごした。ずっと座学の時もあるが、生徒をほったらかしにすることも多い。生徒の中には自習時間に体育館で大規模な実験をしたり、廊下でただただ雑巾がけをしたりと本人たちにしかその意図は分からないような活動も多い。太一はパソコン仲間とパソコン教室へ向かったし、奏也は一人でどこかへ行ってしまった。志吹は図書館で書物を読んでいたのだが、内容がまるで入って来なかった。太一の言っていたことが気になり気が気でなかったからだ。様々な思いを巡らしているうちに終了のチャイムが鳴った。基本的に終了時間は9時45分である。
志吹の家は学校から歩いて10分くらいの場所にある。南雲町自体、都会過ぎず田舎過ぎずの町であり、生活に不便はなく、小金持ちの町という感じがある。4月に入ってからは、変える方向が同じなので太一と一緒に帰っている。かく言う太一も小金持である。
いつも校門前で待ち合わせているのだが、その日は志吹の到着が少し遅れた。図書館は校門から一番遠いところにあるため、早めに本を戻して出発しないと遅れてしまうのだ。
志吹が到着すると同時に二人は歩き始めた。夜ということもあり、寒さは一層増した。手や足、頬が悴み、感覚が鈍くなっていた。
「遅かったね。何かに食べられちゃったかと思ったよ。」
白い息を吐きながら、冗談交じりで話す太一に対し、真剣な面持ちで志吹は聞いた。
「・・・やっぱなんか感じるのか?俺から。」
太一は先ほどとは打って変わってはっきりと答えた。
「正直に話すと感じるね。でも邪悪な感じはしない。」
「ってことは邪悪な感じの奴もいるってことか?」
太一はコクッと頷いた。
「そうか・・。俺はその邪悪なものが目に見えるんだ。特に害はないんだけど。」
そう志吹が太一に告げた。すると、
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏・・・」
と太一は何度もつぶやいた。
「おぃぃ!殺すなぁ!」
と志吹はツッコんだ。
「冗談だよ。まあ、気を付けるんだね。じゃあ、僕はこっちだからせいぜい頑張りなよ。」
と相変わらずの口調で志吹に言った。
「へいへい。そちらこそ。」
と志吹は素気ない返事をした。志吹は相変わらずの寒空に目をやり大きく白いため息を吐いた。
太一と別れ、志吹は一人で家路についていた。太一にあのようなことを言われ、少しそわそわしていた。時折吹く北風が帰宅を妨げるように志吹の方へ向かって吹いていた。ふと目を前へ向けると前からなにか黒い影が近づいてくるのが見えた。志吹は身構える。まだ姿は見えない。心臓のバクバクが増していく。
(来るっ!)