14話 大谷凪子
翌日、少し顔の腫れた3人が一緒に登校してきた。教室にはもう志穂が来ていたが、いつも通りのすました様子だった。
「よっ。いい朝だな。」
志穂は昨晩、自分がやったことを覚えていないかのようだった。
「お、おまえ・・。」
志吹はあきれ顔で言った。
「で、どの奴だ?例の奴は?」
志穂は自分から切り出した。
「あいつだよ。あの窓側の席で本読んでる女の子。」
奏也は顔の腫れた部分をさすりながら指さした。志穂は興味津々の様子だった。
「ふ~ん。あの子か。」
「おーい。凪子!ちょっとこっち来てくんない?」
奏也が呼びつけた。
「ば、ばか!展開が早すぎるだろ!!」
志穂は顔を赤らめた。凪子は振り向くと不思議そうな表情をしてこちらに近づいてきた。
「どうしたの、奏也君?」
大谷凪子は奏也の小学校時代からの同級生である。小柄でツインテールの清楚な女の子だ。志吹は1年の頃から、太一は2年から同じクラスなのでよく知っている。
「こいつ、昨日転校してきた奴。友達になってやってくれないか?」
志穂は相変わらず顔を赤らめていた。凪子はじっと見つめていたが、すぐにニコッと微笑みかけ
「よろしくね。」
と志穂に言った。しかし、志穂は緊張しているのか
何も言わずに下を向いてしまった。
「おい、なんか返事してやれよ。」
志吹が小声でつぶやいた。すると、
「よ、よろ・・・しく。」
と恥ずかしそうに小声で言った。そう言うと凪子はまたニコッと微笑みかけた。




