13話 対話
「変なやつら。」
志穂は物陰からそうつぶやいた。
「で、どんな話なんだ?」
自由な時間になった後に4人は屋上に集まった。志吹は聞きたいことが多くあったが、正直まだ志穂を信用していなかった。あんなことをされたのだから当然だ。
「いいわよ。まず、聞きたいことあれば話してあげる。」
志吹はそれならばと思い尋ねた。
「お前は何者だ?」
志穂はすました顔でさらっと答えた。
「うちは両親に昔から人と関わらないように育てられた。外に出ようと思っても止められた。お前は人とは違うんだ、そう言われて育てられてきた。確かにうちは人とは違った。1人で家の中で遊んでても物が勝手に飛んでいったり自分でもよく分からない能力が現れた。成長するにつれて能力を自分で使いこなせるようになっていった。まあ、そうなれば孤立を深めるのは当然だろうな。両親の目を避けるため夜中に外に出たりした。なれの果てにお前らのようなやつと出会うとはな。」
志吹はムスッとした表情で答えた。
「お前らみたいなやつって・・・。」
だが、意外だった。根っからの悪かと思っていた志穂にはそれなりの過去があるらしい。
「俺も質問なんだけど志吹とお前は同じ能力者なの?」
奏也はいつものようにメモをとりながら聞いた。
「お前もあるんだろ、これ。」
そう言うと、腕にできた星形のあざを見せてきた。
「そ、それは!」
志吹のものと同じようなあざが志穂にもあったのだ。
「まあ、そうゆうことよ。ただあんたはうちほど力を使いこなせていない。まあ、それほど自由に育てられたってことだろうけどな。」
「まあ、そっちのあんたがなんでうちらみたいな奴を感知できるのかは知らないけど。」
そう言って太一を一瞥した。
「まだ聞きたいことがある。Emotionってなんなんだ?いまいち掴み切れないんだ。」
志吹はまた尋ねた。
「あいつらは人の感情に巣くうやつらだが、恐らく裏で奴らを操るものがいる。」
「操る・・・?人の感情を操るのか?」
「違う。感情の高まった人間にEmotionを植えつけるんだ。そうすればEmotionは育ち、寄生された人間自身も感情を増していくんだ。」
「お前も戦ったことあるのか?」
「ああ、倒した後にその人間に聞いたんだ。そうしたら変な奴と会ってからおかしくなったと言っていた。」
志吹はハッとした。
「いや、それはおかしいぞ!俺も倒した後に聞きに行った。でもそんなこと一言も・・・。」
「相手側の技術が上がったということかな。」
太一が静かにつぶやいた。
「うちも同感だな。まあ、十中八九これからも奴らはうちらの前に現れるだろうな。」
4人の間に沈黙が続いた。しばらくしてそれはチャイムによって遮られた。
「ま、そうゆうことで明日からよろしくな。」
志穂は軽いノリでそう言った。
「よくそんなテンションでいられるな。」
志吹はその楽観がうらやましかった。
「ところで志穂は友達の作り方とか知ってんの?」
奏也がメモ用のペンを口に当てながら聞いた。
「なっ!?なめんなよ!うちだってそれくらい・・・。」
「じゃあ明日紹介してやるよ。」
「じゃあ、ってなんだよ!大丈夫って言ってんだろ!!」
志吹が慌てて仲裁に入った。
「まあまあまあ!紹介してもらえるんだからいいだろっ!!」
「以後友達は出来なかった。」
太一がこそっとつぶやいた。
「あぁん!?お前今なんて言った!!」
「いや。特に。」
「このやろー!!全員呪ってやるー!!!」
夜の校舎の屋上に叫び声と喚き声がしばらく響き渡っていた。




